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清楚系ヤンデレと天使な小悪魔と  作者: みゃゆ
一年 二学期 前半
73/87

第七十三話 学園祭一日目:パーティーの始まりだ

 バンド部の二組目の演奏が終わったのでダンスの準備をする為にステージ裏へ向かおうとする。ステージ裏に部室があるってこんなときに便利で助かる。


「そうじゃ、この格好で踊るのじゃろ?」


「そんなことございませんよ。ちゃんと動きやすい格好で踊ります」


「あんたの運動神経ならその格好でも大丈夫でしょ?」


 無茶言うなよ。ただでさえ執事服ってぴっちりしてて動きにくいんだ。踊ってる時にけつのとこ破れたら恥ずかしいじゃないか。


 何を思ったのか桜がスマホで誰かに電話し始めた。うんうんと頷いてありがとうと言って電話を切る。


「執事服の予備はあるみたいだから大丈夫よ」


 この子特殊能力者? また俺の心を読んだな。おそらく電話の相手は委員長だろう。花はこちらに向かっているし、他にうちのクラスの知り合いとなれば平だが、あいつに桜の連絡先を知られないように全力阻止したのでこれは間違いないだろう。


「それなら執事服で踊るがよい。我の次に学園の人気者になれるかも知れぬぞ?」


「できればあまり目立ちたくはないのですが……」


 学園生活は平和が一番。変に目立つと今後に支障が出るかもしれない。それだけはごめんだ。


「もう十分目立っているわよ」


「もう十分目立っておるぞ」


 なん……だと……。さようなら、俺の平和な学園生活。


 とぼとぼとステージ裏へと向かう。もうこうなったら思いっきり目立ってしまおうと思いながら脚を進める。モノクルはアクロバットで飛んでいきそうだから外そう。


「篠崎来たか。早く着替えて準備しろよ」


 ステージ裏にはすでにみんなが集まっていた。どうやら一番最後に来たみたいだ。着替えて柔軟体操をして踊る準備をしている。


「先輩、俺、これで踊ることになりました……」


 この言葉にダンス部の全員がこちらを向く。驚いた顔ではなく、なぜか納得した顔だ。最近よく一体感を感じている気がする。


「ちなみに理由を聞いていいか?」


「理事長――」


「分かった。お前はそれで出るんだ」


 まだ理事長しか言ってないけど分かったのか。先輩の察しのよさには驚く。いや、そこまで言えばわかってしまうか。元部長もいるから先ほどの話でもしたのだろう。


 一年のメンバーは最初に踊るので早く体を温めなければならない。メンバーのもとへと向かい柔軟を開始する。


「篠崎、センターしっかり頼むぞ」


「執事服のセンターとかマジかっこいいわ」


「篠崎のクラスってメイド喫茶?後で行くわー」


 一年のメンバーがじろじろ見てくる。恥ずかしいからやめてもらいたい。なんならロッキンのダンサーみたいにもう少しダボっとしたスーツがよかった。


 一通り柔軟を終えたので軽く体を動かす。少し抵抗はあるのものしっかりと動ける。軽くバク転もしてみるが問題なかったので、アクロバットもなんなくできそうだ。心配なのは踊っている時にけつのところが破れてしまうことだが、意外と大丈夫そうだ。


「そんな服でもちゃんと動けるんだな。さすが遼。打ち合わせ通り最初は熱いやつを頼むぜ!」


 打ち合わせと言うのは、一年が一発目で副部長と言うこともあり、最初にステージで叫ぶ役に選ばれてしまったのだ。ちなみに何を叫ぶかはまだ決めていない。愛の告白? そんなのやったら学園から居場所がなくなってしまう。もう少し時間があるので、体を温めつつ何を叫ぶか考えておこう


 ―――――――――――――――――――――


 バンド部の演奏が全て終了し、ステージの片付けに入る。その間、幕が下りているのでステージ上では最初に踊る一年で円陣を組む。副部長らしく気合を入れるか。


「このメンバーで踊るのは初めてだけど、今日は楽しんで踊るぞ!」


 とてつもなく普通のことをいった気がするんだが、みんな優しいのかちゃんと気合が入ったのかお互いにハイタッチをして配置につく。ちなみに俺はセンターで前に三人、後ろに二人の配置となっている。


 配置についた後、係りの人に準備完了の合図を出す。幕がゆっくりと上がっていき、フロアがだんだん見えてくる。討論会の時ほど人が集まっていないのでそこまで緊張することはなかった。俺に向けてすごい歓声と言うか黄色い声援が飛んでいるのは気のせいだろう。


 叫んだ後に曲が始まる手はずになっているので、幕が半分ぐらい上がりきったところで大きく空気を吸い込む。もちろんマイクはなしだ。学園に入ってからの一番でかい声で叫ぶ。


「It’s SHOWWWWW time!!!」



 その言葉が開幕の狼煙だ。曲が始まる。一年で選んだ曲はみんながわかるようにと日本人のグループの曲にした。アーティスト名や曲名はJasracが絡むとめんどくさいから割愛させてもらう。


 最初は五人でポッピンの動きで合わせる。動きは各々異なってはいるが、音に合わせてしっかりとムーブ&ストップの動きで会場を沸かす。


 この動きを習得するのに一番時間がかかった。ヒットを打つことでカクカクした動きを大げさに見せることができるのだが、このヒットが難しくなかなかうまくいかなかった。

 すごく簡単に説明するとほんとに一瞬動かす方向と逆側に動かすと言えばいいだろうか。厳密には違うのだが、この動きを体全体で行うことで、みんなが知ってるロボットダンスの動きになる。


 会場からは鳴り止まぬ声援。次はロッキンの動きを後ろの二人をメインとするため、俺を含めた三人が踊りながら後ろへ下がる。先ほどまでのカクカクした動きから打って変わって激しい動きへと変わる。


 ロッキンの動きもムーブ&ストップが基本だが、ポッピンと比べると動きがかなり早い。動く、止まる、動く、止まるの繰り返しを体全体で行う。常に動いているように見えるのがちゃんと止まっているのだ。


 二人が向かい合いマスターピースハンドシェイクと言う同じ動きでリズムに合わせて両手足を動かし、クラップ、手を叩きあう。最後に二人でお辞儀をしたところで後ろからアクロバットで入り込んだ。


 その瞬間、体育館が揺れるほどの歓声に包まれた。うん、気持ちいい。前の席では桜と理事長、そしてどうやら間に合ったらしいメイド服姿の花が目を輝かせて見ている。次は俺のソロ。目の前で二人にはかっこいいところを見せてやろう!


 やはり執事服だといつもより動きにくいが。すんなりとバッファローを成功させたので他のアクロバットやブレイキンの技も問題ないだろう。


 俺のソロだけなんでもありだ。アクロバットから入った俺は先の二人に続いてロッキンの動きで踊る。ポイント、指を指しながらウィンクをすると黄色い声援に包まれる。やらなきゃよかった。


 曲調が変わるタイミングでストップさせた体を今度はポッピンの動きをするのだが、これはほんの少し。また曲調が変わると今度はブレイキン、専門分野だ。


 アクロバットからステップに入り、ウィンドミル、トーマスフレア、その勢いを使ってエアートラックスと繋げる。フロアから歓声と盛大な拍手が鳴り響く。


 スポットライトのせいか、飛び散る汗がキラキラと光って見える。その度に黄色い声援が鳴り響く。執事服で踊っているからいつもの五割増しぐらいでイケメンに見えるのだろう。そういうことにしておこう。


 踊っている時のこの歓声が中毒になりそうだ。気持ちがいい。何度もこの気持ちを味わいたいし何度もこの盛り上がりを楽しみたい。ダンスってやっぱり楽しい!


 ソロパートを終えて再び五人でロッキンで合わせる。ブレイキンが少ないのはみんなに教える時間がなかったのでソロのみで使うことになったのだ。


 最後は五人で決めポーズを取り、見てくれたみんなに感謝の気持ちを込めてお辞儀をすると空気が響くほどの歓声と盛大な拍手をいただいた。


 ステージ手前にいた三人と目が合ったので微笑みながら手を振ると、花と桜がキャーキャー言ってる。理事長は子供らしく手を振り返している。


 普通の女の子らしい反応できるじゃないか。普通の女の子らしくしてくれ。危ない部分は極力出さないようにしてくれたら俺の精神が助かるからね。


 ステージの上でメンバーとハイタッチを交わしてステージ裏に戻る。今度は先輩方のダンスだ。こちらは俺達のよりも熟練度が違うためさらに盛り上がることは間違いないだろう。

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