第七十二話 学園祭一日目:貧相なおっぱい
劇が終わりバンド部の演奏が始まる。花にメッセージを送ったのだが既読が付かないのでおそらくクラスではまだ客をさばけずにいるのだろう。みんなすまない。
バンド部は何グループかに分かれて演奏するらしく、詩織ちゃんは一番最初のグループだった。楽器演奏者が準備をしているが、ヴォーカルが出てきていない。まだ準備中か遅刻だろうか。
詩織ちゃんが魔法使いのコスプレをしていたとなるとヴォーカルはバニーガールのはずだ。そうじゃなければ俺は許さん。全校生徒が許しても俺は許さん。学園祭という年一のイベントなんだ、揺れるおっぱいを見せろ。
そう思いながら待っているとヴォーカルらしき人物がステージに出て来た。バニーガールだ。しかし残念なことに揺れるほどの乳を持ち合わせていない。何のためにバニーガールのコスプレをしているんだ。
「桜、今度でいいからバニーガールのコスプレをしてくれないか?」
「あんた、どうせおっぱいが揺れるところを見たかったんでしょ?」
ばれていがる。さすが桜と言うべきか、俺の考えが読めているみたいだ。これでは花にお願いするしかないな。
「貴様、そんなに乳が好きなのか?我のであればいくらでも触ってよいのじゃぞ?」
「お嬢様、そんな貧相なおっぱいでは私の心を掴めませんよ。胸は大きくなくてはいけないのです! 最低でも桜ぐらいは成長してください」
「ほう、貴様、どうやら学園から追い出されたいようだな」
やべ、理事長に対しても本音が出てしまった。理事長から黒いオーラが出ているよ! みんなさよなら。学園どころかこの世から去りそうだ。姉さんよりも怖い。
「理事長、遼はすぐ本音が出ちゃう変態なので慣れないといけませんよ」
桜からの助け舟に一筋の救いの光が見える。こんな俺でも救いの手を差し伸べる桜が天使のように見える。だがそれは天使の皮を被った小悪魔だ。にやりと笑みを浮かべる。
「遼は貧乳よりも私ぐらいのちょうどいいおっぱいが好きなんですよ。それどころか貧乳には目もくれない変態なんです。理事長には遼の心を掴むことは無理でしょうね」
理事量の目元に青筋が浮かぶ。本気で怒らせたようだ。見た目は小学生でも歳はまもなく三十路のお姉さんだ。年下に馬鹿にされて黙ってはいられないだろう。
「お主、どうやら先の件を取り消してほしいようじゃの? 我はそれでもよいのじゃぞ? 元より来年は――」
「馬鹿にしてすいませんでした。理事長は超かわいいです」
理事長の言葉途中で桜が顔を青くして頭を下げた。先の件の内容が気になるが、おそらく先ほど二人の時に話したことだろう。超かわいいの一言で理事長は満足したのか怒っていたと思われたその表情は今はものすごくニコニコしている。
「うむ、我が超かわいいのは知っておる。お主も我の魅力に気づいたようじゃの」
「私もかわいいけど理事長はもっとかわいいです。遼が理事長に奪われないか心配です」
この子自分でかわいいって言っちゃったよ。実際かわいいんだけどね。花と違って桜はそういうことを平気で言えるから相当自分に自信があるのだろう。昔はぽっちゃりだったけどね。
桜と理事長がプライド? を賭けた闘いの最中、ステージの詩織ちゃん達が準備を終えたようで演奏に入ろうとしていた。
そして体育館に響くドラム音。続いてギターの早引き。詩織ちゃんは以前と同じようにあの難易度が高いギターを弾いている。まだギター暦半年とは思えないうまさだ。
「ほう、あやつなかなかやりおる」
「彼女はあれでもギター暦半年ですよ」
それを聞いた理事長がさらに驚く。クラスのギター暦が長いバンド部のやつに聞いたのだが、あの曲を初心者が弾けるとは思わなかったそうだ。今でもありえない光景を目にしていると思っているそうだ。
バニーガールのヴォーカルが歌う。体を使い一生懸命歌っているのだが、揺れるおっぱいがないから見てても楽しくない。歌はうまいのだが、やはり目に見える楽しさもほしいものだ。
気がついたのだが、詩織ちゃんのバンドメンバーは全員が貧乳だ。類は友を呼ぶと言うが、これは呼びすぎだろ。俺には需要がない。一成なら鼻血を出して喜びそうなメンバーだ。演奏と歌はうまい、でも貧乳なのだ。
別に貧乳が悪い訳ではないが、視覚効果が八割ぐらい落ちる。折角みんなかわいいコスプレをしているんだ。もったいない気持ちでおっぱいだ。間違えた、いっぱいだ。今日は学園祭なのだ。おっぱい揺らせや。
そんなことを考えながら演奏を見ていると二曲目が始まる。もうみなさんお気づきかと思われるが、アニメの再現だ。あのアニメで学園祭で二曲目に演奏していた曲が流れる。
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詩織ちゃんのグループの演奏が終わった。二曲目も弾けるようになっていた詩織ちゃんの頑張りはすごいと思う。貧乳だけどね。
「うむ、なかなかよかったぞ。学園祭って感じじゃの」
「ヴォーカルの人完全にセリフまでアニメの再現していたわね」
「そうだね。でもいろいろと残念だったよ」
俺の言葉に対して二人がジト目を向ける。そんな目で俺を見ないでほしい。全国の男子高校生に聞いても同じ事を答えるはずだ。一成を除いてね。
「バンドをこんなに近くで見るのは初めてじゃが、迫力があってよいの」
「お嬢様がお気に召したようで何よりです。私は次のグループの演奏が終わり次第準備に行きます。終わった後はどちらで待ち合わせいたしますか?」
「そうじゃの……。では貴様が踊った後にすぐ超かわいい我を見れるようにステージ裏に行くとしよう」
ステージ裏は基本的に出演者しか入れないが、理事長の権限を使えば難なく入れるだろう。この人が使える権力はためらいも無く行使する人なのは、一緒にいてなんとなくわかる。
「私もご一緒していいですか?」
「元よりそのつもりじゃ。こやつを二人で癒してやろうぞ」
桜に花も呼んでいるからもし来たら一緒に来てくれと頼んでおく。折角見に来たのに一人だとかわいそうだからね。
「その花とやらはどのような女子なのじゃ?」
「花は私のいとこです。おっとりしててかわいくて、……私達では絶対に勝てないモノを持っています」
理事長が首を傾げるので、見たら分かりますよと伝えておく。あれは女の子の最大の武器だからね。素晴らしいことに天然ものだ。偽乳なんて悪質なものではない。桜もあれを気にはしていたのか。ちょうどいいぐらいの桜のおっぱいも嫌いではない。貧乳は論外だ。
「会うてみたくなったのじゃ。貴様、クラスの者に連絡して花とやらをここに呼び出すのじゃ」
どこぞのお姫様ですか。全て罷り通るほど人生甘くないんですよ。今は忙しい時間だし花も抜けれないに違いないと思いながら平に電話をする。
『瀬戸内さん? 理事長が呼んでるみたいだけど……。あ、ちょうど今空いたから行けるって』
「そっちは大丈夫なのか?」
『ピークは過ぎたから大丈夫って委員長が言っているぞ』
「すまんな。俺のダンスが終わったら戻るから。委員長にも謝っておいてくれ」
平との通話を切る。
罷り通ってしまった。理事長の権力は偉大だ。この学園だとある程度のことは問題ないと無い胸を張って言ってる。そんなことをしてもおっぱいは大きくなりませんよ。
ステージの準備が終わったようでドラム音が鳴り響く。人気のバンドの曲だった。隣の理事長と桜は小柄な体でピョンピョンと飛び跳ねている。かわいらしい。
桜のちょうどいい大きさのおっぱいが揺れている。眼福眼福。理事長はもちろん何も揺れていなかった。




