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清楚系ヤンデレと天使な小悪魔と  作者: みゃゆ
一年 二学期 前半
61/87

第六十一話 嘘

IFの物語を連載してみましたのでこちらもぜひご覧ください!

本編では書かれなかった展開ですので、お楽しみいただけるかと思います!

 俺は二人が待つ場所へ向かう。お兄さん達とは結構話しこんでしまったので待たせてしまった。そういえばまたお兄さんの名前聞くの忘れたな。後で桜に聞いておこう。


「ごめん、待たせたね」


 距離を置くと決めた手前少し顔を合わせにくい。特に花には学園でも顔を合わさないように避けるようにしていたからな。


「いえ、遼さんかっこよかったですよ」


「そうね。私は初めて見たけど惚れ直したわ」


 ん?桜は俺を諦めるんだよな?今さら惚れ直したら諦めたことにならないのじゃないか?


「桜、さっきの話だけど……」


「あ、あぁそうだったわね。私は遼を諦めるって話だったわね」


 桜が諦めたところで俺が桜が好きなのは変わらない気がするな。もしかして押してだめならさらに押してそれでもだめなら引いてみるってやつか?


「あれ、嘘だから」


「はぁ!?」


 ワケガワカラナイヨ。花を見てみると苦笑いを浮かべている。どうなっていやがる。


「あんた、パーティーの日に私が落ち込んでいるのを見て私達と距離を置こうとしてたみたいね」


「姉さんから聞いたのか?」


「花からよ。最近遼が避けてるって聞いたから、考えられるのはそのことぐらいだもん。どうやら合っていたみたいね」


 どこぞの探偵のように少ない情報から推理していく桜。完全に合っている。確かにあそこまであからさまに避けていたらおかしいと思われても仕方ない。


「遼は優しいから私達を傷つけたくなかったんでしょ?」


「……ご名答です」


「でも遼さん、私は遼さんに避けられることが今までで一番傷つきました」


「あんたはやり方が極端なのよ」


「うっ……すまない」


 もう全部ばれているのか。ここまで知られていたら謝ることしかできないじゃないか。


「私達はやりたいように行動して恨みっこなしで闘っているのに遼がそんなんじゃだめじゃない」


「俺は二人が傷つくのを見たくなかったんだ。ただそれだけなんだ」


 好きな子が悲しむ顔なんて見たくない。そんなこと考えるのは俺だけじゃないはず。恋する人はみんな俺と同じだと思う。


「……あれは私が悪かったわ。お酒が入っていたから少し感情が抑えきれなくなっていたのよ」


「それなら私も悪いわ。遼さんにいきなりキスしたのだから」


「花はあの時記憶があったのか?」


「恥ずかしながら全部覚えています。桜がキスをするって聞いてから私の中の何かが急に切れた気がしたんです。次に気がついたときは遼さんにキスしていて……」


 思い出して恥ずかしくなったのか花は顔を赤くして俯いてしまう。確かにあんなことをして記憶があったのなら恥ずかしくもなる。だからお酒は自分の行動に責任がつく二十歳になってからなんだよ。


「別にキスすることは悪くないわよ。私だってやっているのだから」


「いや、俺のことも考えてよ!」


「あら、キスされるの嫌だったの?」


「そうなんですか遼さん?」


「いえ、光栄です! 特にディープキスは気持ちよかったです!」


 あ、またやっちまった。桜は小悪魔みたいに笑うし花はジト目を向けてくる。花は自分で話を振っておいてその反応はないよ。ひどいよ。もっと俺に優しくしてくれ。


「話を戻すわよ。さっきわざわざあんな嘘をついたのは遼が少しは私達を見てくれると思ったからなんだけどあんたの集中力の前では無駄だったみたいわね」


「わざわざ凝ったことやら無くても話ぐらいなら聞いたぞ。仮に俺が動揺して踊れなくなったり怪我したりしたらどうしたんだ」


「その通りです。桜にも言ったのですが聞いてくれなかったのです」


「うぅっ……。遼なら大丈夫と思ったのよ」


 確かに大丈夫だったが、これが今日みたいな集中してる日じゃなかったら立ち直れなくなるほど落ち込んでいたに違いない。好きな子が離れるのは辛い。花の気持ちがわかった気がする。


「だから遼さんが桜の言葉に何も感じていない雰囲気を出していた時はかなりショックを受けましたが、話を聞いてくれるって言ってくれて救われました」


「そうよ! ほんとに避けていると思ったじゃない!」


「いや、ほんとに避けていたんだけど……」


 二人には悪い事をしたな。お兄さんもこのことを知っているってことは迷惑をかけた。今度会ったらお礼とお詫びを言わないと。


「でももう避ける必要ないですよね」


「それなー。二人と距離を置くと決めた手前今さらやめるのもなんかかっこ悪いしな」


「だったらあからさまに避けるのだけはやめなさいよね」


「それならいいぞ。期間は俺の気分だがいいか?」


「いいですよ」


「あんたのやりたいようにやったらいいわ。私達はただでさえ待たされているのだから」


 いいんですか。拒否されると思っていたのだが、この子達もなかなか心が広い。学園祭もあるしそれまでには気持ちの整理をつけないとな。


「暗くなってきたし帰るか。」


「そうね。私は兄さんと帰るから」


「じゃあ花は俺と一緒に帰るか」


 三人で歩き出しバス停に向かう。桜のお兄さんはバス停で待っているそうだ。妹の話を待ってくれるなんていいお兄さんだ。


 なんだか二人と話していていろいろ考えていた自分が馬鹿らしくなってきた。週明けからはもっと自然に振舞おう。


「あ、そうだ」


 桜が何かを思い出したのか急に立ちどまり俺の手を掴む。嫌な予感しかしない。


「さっき話してた子かわいかった?」


「ボーイッシュの子か? かわいいというか女の子としてはかっこいい部類に入るんじゃないか?」


 思ったことをありのままに話すと桜がにやりと笑い、隣では花がクスクスと笑っている。一体どうしたんだろう。


「あいつ男だよ」


「またまた嘘でしょ。体も小柄だし声もハスキーだが高かったぞ」


「いや、男よ。私と同じクラスですもん。学校ではちゃんと男性用制服着ているわよ。今日着てた服がだぼだぼだったから胸があるなしの判断がつかなかったんでしょ?」


 確かにそうだが男だとしたら俺はとても失礼なことを思ってしまったぞ。ボーイッシュではなくガチボーイじゃないですか。


「まあそういうことだから、彼には私から話しておくわ」


 世の中にはいろんな人がいるんだなと思い再び三人でバス停へ向かうのであった。

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