第五十話 お酒とタバコは二十歳になってから
法律は守りましょう。
俺の乾杯コールのあとはみな好きに料理を取り食べていた。女の子達が花と桜が作ったチキングリルと豚の角煮を食べて幸せそうな顔をしている。二人の作った料理は見た目もそうだが味も一級品だ。誰が食べてもうまいに違いない。
「この角煮は口にとろけるように柔らかいのですが、どのように作ったの?」
「これは秘密♪私が遼の胃袋を掴むために勉強したのよ」
ほう、それは気になるな。桜の料理は何度か食べているが、そんな風に言われると食べないなんてことができるであろうか。
角煮を一つ箸で取り、口の中に運ぶ。こ、これは!?!?
角煮が口の中へ入った瞬間、歯で噛まずとも唾液一つになるような柔らかさ、肉汁が口の中に広がり深い味わいが染み渡る。肉はここまで柔らかくなるのか……。これはまるで、おっぱい!!! おっぱいは口の中で溶けたりしないがこの柔らかさはもうおっぱいと言っても過言じゃない! 俺は今、おっぱいを食べている!
「遼、どうかしたか」
「一成、お前もこの角煮を食べてみろ。これは……すごい!」
一成は頭にはてなを浮かべたような顔をして角煮に手を伸ばす。さあ驚け、そしてその食感に感動するのだ!
「なんだこれ!? すげーうまいぞ!!」
「……おい一成。それだけか?」
「ん? あぁすげーうまいぞこれ。中田さんが作った角煮だろ?料理うまいんだな」
あ、そっか。一成はおっぱいの柔らかさがわからないのか。だって詩織ちゃんの柔らかそうな部分ってお尻ぐらいだもんな。
「お前には失望したよ」
「何を言っているんだ?」
たぶん平も分かってくれない。ここにいる男で俺しかおっぱいの柔らかさがわからないのだ。畜生!おっぱい食べてみてぇよ!
「桜さんが作った角煮おいしぃー。花さんのおっぱいみたいに柔らかい」
その言葉を俺と平は見逃さなかった。さすがは俺の妹、俺の考えをトレースしていやがる。だが妹よ、ここには男が三人もいるのだ。考えて口にしないと大変なことになっちゃうよ。
平は即座に角煮を箸で取り口に運ぶと涙を流した。食べ物で涙を流す人を初めて見た。
「これが……瀬戸内さんのおっぱいの柔らかさなのか……」
「平さん! 変なこと言わないでください!」
顔を赤くして花が叫びみんなで笑いあう中、詩織ちゃんの笑顔だけ目が死んでいた。ナイチチには笑えないらしい。
「花の作ったチキングリルもおいしいわよ! お店の料理みたいだわ」
花の作ったチキングリルはハーブをたくさん使い、肉の臭みを消し、爽やかな後味を残してくれる味だった。家庭では味わえないお店の味だな。
姉さんはこのチキングリルが気に入ったらしく、缶ビール片手にバクバクと食べている。そんなに食べたらみんなの分がなくなっちゃうだろ。花をちらりと横目に見るとにっこりと笑顔をくれた。
「今二つ目を焼いているのでたくさん食べても大丈夫ですよ」
それを聞いた姉さんはひたすら手を動かした。ビール、肉、ビール、肉、ビールビール、ビール……
「おい遼、ビール持って来い」
「あんたの足元のクーラーボックスの中だよ!」
どんだけ飲み食いしてもこの姉、太る気配がない。そしてさっきからずっと酒しか飲んでいないが酔っている感じがまるでない。
料理はまだある。みんなも楽しく会話しながらおいしく食べている。やっぱりみんなと過ごす時間はすごく楽しい。少し離れたところから俺はみんなを見つめて、いい気分で食事を食べた。
―――――――――――――――――――――
少し料理を残し、二つの皿に移した後、今度はみんなでゲームをすることになった。大人数でやるゲームといったらマ○オパーティーだ。四人プレイなので最初に余った四人は片付けをすることになった。神聖なるじゃんけんの結果、最初にプレイするのは桜、姉さん、平、詩織ちゃん。俺と花、藍、一成は最初は片付け組みに回った。
なおこのじゃんけん、姉さんは参加していない。私が皿洗いなどできると思っているのか? と堂々と言ってきたので抜いてあげた。自信満々に言うことではない。
ゲーム組が楽しんでいる中、片付け組の俺達はせっせと動き、使った皿を洗い、姉さんが飲んだ缶ビールを捨て、姉さんが飲んだ缶ビールを捨て、姉さんが飲んだ……
「どんだけ飲んでいるんだよ!」
姉さんに視線を投げかけると、コントローラーを持ち、タバコを咥え、その横には缶ビールが五本。あれも全部入っていないのか?どんなペースで飲んでるんだ。
「遼さん、向こうは片付きました。他に片付けるものはありますか?」
リビングを見回すと特に片付けるものはなさそうだったので片付け組も休むことにし、花と藍をソファに座らせ、俺はその下の床に、一成はゲームをしている詩織ちゃんの隣に座った。
「はぁー楽しかった。なんか喉が渇いたわ」
「飲み物が入ったクーラーボックスならソファの横に置いているぞ」
ほいほーいと桜がクーラーボックスから飲み物を取り出したようだ。俺はコントローラーを握り、ゲームの画面に集中する。遊びだろうと本気だ。負けは許されないぞ。
「このジュースおいしいわ」
「どれどれ? ほんとだおいしいね」
「俺もそのジュース飲んでみるわ」
なにやら後ろはジュースの話で盛り上がっているようだが俺には関係ない。勝負は一瞬で決まるのだ。瞬きすらおしいのだよ!
しかしこのゲーム、やりこんでいる俺と藍が有利に見えたが花が意外とうまい。一成はゲームはからっきしだめなのは分かっているのだが、花が俺と藍の勝負に食い込んできている。少しでも目を離すと追いつかれてしまう。
ギリギリの闘いは俺が何とか一位を取ることができた。二位だった藍はくやしそうにしているが花はうふふと笑い楽しそうだ。一成は操作している時から自分が何をやっているかわかっていなかったはずだ。
トーナメント形式で行うことになっているので、次の相手は平と詩織ちゃんか。俺ですら勝てない姉さんが負けたのはこの二人がかなりの実力者かただ単に遊んでいたかのどちらかだ。
姉さんに目を向けるとにやりと笑いやがった。何か悪いことを考えているに違いない。とりあえずゲームを開始したのだが、この二人弱すぎる。やはり姉さんが何か企んでいるに違いない。
「花もこのジュース飲んでみてよー」
「あら! おいしいですわね!」
またもや後ろではジュースで盛り上がっているがそんなうまいジュースなんてあったのか?だが集中力を切らすと藍に負けてしまう。集中、集中、集中……
ゲームは俺の勝ちで終わった。喉が渇いたので俺もそのうまいジュースを飲もうと思いクーラーボックスを開けると残っているのは缶チューハイだけだった。もうジュースは無いのかと花と桜の持つ缶を目にするとクーラーボックスに入っているはずのそれだった。
「お前ら何飲んでいるか分かっているのか!?」
「遼も飲む? このジュースおいしいわよ」
「遼さん、なんだか体がほわほわしてきましたよー」
二人が飲んでいるのは缶チューハイ、つまりお酒だ。俺達はまだ未成年だぞ!お酒とタバコは二十歳になってからだよ!
後ろを見るとさっきまでゲームをしていた平と詩織ちゃんがぐっすり寝ている。こいつら一本も飲み切れてないからかなり酒に弱いのだろう。
「藍は飲むなよ」
「なにをー?」
藍は詩織ちゃんの飲みかけの缶を口につけていた。ぐびぐびと喉を鳴らし勢いよく飲んでいる。あ、もうだめだ。
「遼兄ぃ、これおいしい」
藍はたぶん酒に強い。俺が姉さんに付き合わされて飲まされた時は俺も全然酔わなかった。きっとうちの家族はみんな強いから大丈夫なはず。
「遼、お前も飲むか?」
「飲まねぇよ!てか教員になる人が未成年に酒を勧めたらだめだろ」
「それもそうだな」
「だったら止めろ!」
「別に今日くらいいいだろ。こいつらには私が勧めたわけじゃないしな」
このクソ姉。とりあえず二人を止めないと。
「花、桜、それはお酒だ。俺達が飲んでいいものではない」
「別に今日ぐらいいいじゃない。ねえ花?」
「これ楽しいですねぇー」
花はもうだめだ。おいおい、どうするんだよこれ、てか一成はどこに行ったんだ。まさかあいつ逃げたんじゃないだろうな。俺一人で止めるなんてめんどくさいこと押し付けやがったな。まだパーティーは始まったばかりなのにどうなるんだよ。




