第二十二話 ガールズトーク
「遼とヤったのか?」
朝からとんでもない質問だ。
みんなで海で遊んだ翌日、桜が遼の家に泊まった翌日、その朝、初は桜を家に送る為車を走らせている。
「うっ初さん! 私と遼はそんな関係ではありません!」
「夜中遼の部屋を覗いたらお前ら抱き合ってたじゃないか」
抱き合ってはいない。桜が顔を赤くしながら寝ぼけて遼を抱いてしまっていたと弁解する。
桜は昨晩、一度目覚め自分の部屋ではないことに気づいた。トイレを借り部屋に戻るとそのまま遼が寝ている布団に忍び込んだのだ。寝ぼけてたということにして。
「別にヤってもよかったんだぞ。あれだ、えーっと、なんだっけ? 既成事実?」
「それは卑怯だと思います」
でも私がやったことも卑怯かもしれないと付け加える。
「私はそうやって私の好きな男をものにした」
「え? 初さんって彼氏いないんじゃないの? 初さんのそういう話は聞かないし男っ気がないし遼も彼氏いないって言ってたし……」
「遼には言っていないが藍は知ってる。私は一成の兄と付き合っているぞ。男っ気がないとは失礼だな」
口を大きく開け愕然とする桜。初は見た目こそ美人だが中身は優しいが非常に暴力的だ。海でのナンパも殴って撃退している。
「彼氏さん、よく耐えれますね」
「あいつはドMだから私が殴ると喜ぶぞ」
世の中にはいろんな人がいるんだな。遼がそんな人だったらどうしよう。少し不安になってくる桜。
「それで。昨日はどこまで進展した?」
「なにも……」
弱々しく呟く桜。初はタバコに火を着ける。
「ま、お前のペースでやればいいさ。あいつもヘタレだ。すぐに何か起こるとは思えない」
「はい……」
「お前のほうが一歩リードしていると思うぞ。キスしてるんだ、あいつもお前の気持ちに気づいているかもしれん」
キス。そうキスをしたのだ。昔とは違う、幼い自分達が周りの雰囲気に飲まれてやったものではなく、今度は間違いなく自分の意思で。
「初さん、自分からするキスって思っていたより恥ずかしいかったです」
「そりゃそうだ。やるなら男からやってほしいよな」
「はい。でも……、やって後悔はしてないです」
「……そうか」
初は微笑む桜の頭を撫でる。こういうときの初はとても優しい。車は桜の家に到着した。
「よし、昨日も言ったが今日からはお前をしごいてやる。遊ぶ時間はないぞ。それでもいいか?」
「はい。私がやると決めたんです。お願いします」
「方法は二つある。再受験か転入かだ。再受験のほうが楽だが遼とは学年が違う。転入はかなり難しいが成功したら遼と同じ学年だ。どうする?」
「そんなの転入に決まっています!」
「わかった。今回は甘くしない。覚悟しておけ」
車を降りた二人は家へと入る。今過ごせる遼との時間を犠牲にし、未来に賭ける。これが吉と出るか凶と出るかはまだわからない。
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桜達が家に到着した時刻から一時間後、花・藍・詩織の三人は花の部屋に集まっていた。
「初さんと桜ちゃんが来れないのは残念だねー」
「桜はやることがあるらしいので仕方ないですよ」
三人はお茶を飲みながらクッキーを食べている。藍の頬がクッキーで詰め込まれリスのようになっていた。
「初さんはなんで来れないのかな?藍ちゃん聞いてる?」
「ひゃひもひひてはい。きゃふぇしほとここきゃも」
「藍さん。飲み込んでから話しましょうね」
花が優しく藍に言う。藍は口をもぐもぐさせクッキーを飲み込みお茶を一口。
「何も聞いてない。彼氏のところかも」
「えぇ!? 初さんって彼氏いたのですか!?」
「やっぱ驚くよね。初さん優しいんだけど男っ気が全然ないから。ちなみに一成君のお兄さんと付き合っているよ」
「一成さんのお兄さんって確か医学部でしたっけ? そうなると玉の輿ですね」
「私だって一成君がお医者さんになってくれれば玉の輿だよ?」
「確かに」
羨ましいと藍が付け加える。クッキーをむさぼりながら。
「藍ちゃんは遼君が好きだもんねー」
「うん。花さんも遼兄ぃが好きでしょ?」
「あっ藍さん! 何をいきなりっ!?」
「とぼけなくても花ちゃんが遼君のこと好きなことくらい見てればわかるよ。恋する乙女の目をしてるもん♪」
顔を赤くし俯く花。藍と詩織はニヤニヤしている。
「でも藍さん!私が遼さんを奪っていいのですか!?」
「桜さんにも言われたけど二人なら別にいい」
「やっぱり桜も遼さんのこと……」
桜の遼に対する好意は花もなんとなく気づいていたが、花は海で桜が遼にキスをするところを見てしまいそれは確信に変わった。先手を打たれたと思った。
「二人は姉妹のように育ったんだよね? 好きなものも似ていたのかな?」
ニヤニヤしながら詩織が問いかける。兄弟姉妹は似たことをやるとよく聞くもんだ。
「確かに昔から好きな食べ物や好きなキャラクターは一緒でした。今は違いますが昔着ていた服も似ていました」
今は花がダイナマイトボディを見せ付けるかのようなTシャツとショートパンツを好むのに対して、桜は昔から変わらずかわいらしいワンピースを着ているのだ。タイプが全然違う。
「花ちゃんの悩殺ボディを駆使したら遼君もイチコロじゃないかな?」
「藍もそう思う。遼兄ぃエッチだから」
「それは……、恥ずかしいです」
「持ってるもん使わなきゃ!私なんて……ほら……うわーぺったんこ……」
自分で言って気を落とす詩織。自虐はネタでやらないと悲しくなる。
「ねえ花さん、触ってみてもいい?」
「えっ?」
藍の手はワナワナと動いている。目標は花のダイナミックバスト。花が少し後ずさる。
「えいっ」
「あっ、ちょっ、藍さん! そこは……んぅっ! 手を動かしちゃっ……あぁん!」
「これは、すごい。マシュマロみたいに柔らかくてさらに感度がいいときた。うへへへぇ」
「ダメっ……イヤっ……」
「そんなこと言ってぇ体は正直だぜぇ。うへうへへへ」
おっさんみたいだ。
「あぁぁぁぁぁぁん!」
しばらく揉みしだくいて満足したのか手を離した藍。
「ふぅー満足。ごちそうさまでした」
ツヤツヤの藍。うな垂れる二人。花にいたっては涙目だ。
「ねえ詩織さん、詩織さんには一成がいる。だから気にしなくていいと思う」
「うぅ~藍ちゃん、なんて優しいんだ!」
詩織は藍に飛びつくスリスリしだす。藍はくすぐったそうに微笑む。切り替えが早い女だ。
「よし決めた! 私は花ちゃんを応援するよ! 桜ちゃんもかわいいけど花ちゃんは同じ学園に通う友達だもん! 協力するよ、花ちゃん!」
「あり……がとう……ご……ざい……ます」
まだ復活していない花。少しやりすぎたと反省する藍。
「藍はどっちも応援する。けど、どっちの味方にもなれない」
「ん?どうして?」
「桜さんには初姉ぇがついている。藍がどちらかに肩入れするとゲームバランスが悪くなる」
「ゲームって……」
初さんがいる時点でゲームバランスおかしいと詩織が言う。
「お二人ともありがとうございます。私頑張ります!」
復活した花が意気込む。二人は微笑みを返す。
「うん!頑張ろう!」
「頑張って」
その後の女子会は三人で昼食を作った後、夕方まで続いた。
女子会に飛び込んだことがないのでガールズトークになっているか不安です。




