第二十話 慣性の法則
食事後は運動もかねてビーチバレーをすることになった。ボールはバレーボールではなく空気を入れて膨らませるボールだ。組み合わせの結果、俺・姉さんペア、花・詩織ちゃんペア、桜・藍ペア、一成・平ペアとなった。これどう考えても俺と姉さんのペアが勝っちゃうな。
初戦は桜・藍ペアと一成・平ペアだ。桜と藍には悪いがこれは一成達の勝ちだな。桜と藍はそこまで運動が得意じゃないし。でも平って運動できるのか？
うちの学園の体育の授業は三クラス合同で自分で選んだコースによって内容が異なる。俺と平はクラスは一緒だが体育は別のコースなのだ。
ゲームが始まった。桜と藍はミスをしないようにボールを返している。一成は優しいので桜と藍がとりやすいようにボールを返してる。平は……
「（ベシッ！）いでっ！」
「（スカッ！）あれ？」
……ポンコツだった。
「藍ちゃんイェーイ！」
「イェーイ！」
俺の予想に反して桜・藍ペアが勝利となった。次は俺達の番。花・詩織ちゃんペアとだ。二人もそんなに運動が得意じゃないしここは楽しめるように手加減するか。
「おい遼、手加減しようとか考えてないよな？」
姉さん、顔がマジじゃないですか。あなたの運動能力に勝てる女の子ってそうそういないと思うよ。姉さんが本気出すなら俺は手加減しないとな。
ゲームが始まる。言葉とは裏腹に姉さんは優しくボールを返す。なんだ、冗談だったか。
「遼、トスを上げろ」
いきなり！だがそこは俺の運動神経を活かしてキレイなトスを上げる。姉さんが跳ぶ。悪そうな笑顔だ。あ、この人マジだった。
ドーン！
花達のコートにボールが埋まる。跳ねるではなく砂埋もれている。どんな力でやってんだよ！
「ちっ！ 割れなかったか」
ボール割る気だったんですか！？ ドーンって鳴ったよ、ドーンって！
「むむ、花ちゃん私達も負けてられないよ！」
「はい！ 頑張りましょう！」
二人には悪いが姉さんに付き合ってもらうしかないか。
その後もラリーが続き姉さんがニヤニヤしながら次のタイミングを見計らっている。
「花ちゃん、トス上げるよ！」
「はい！ いきます！」
花がジャンプする。その瞬間俺は目が釘付けになった。おっぱいの奇跡だ。
慣性の法則はご存知だろうか？簡単に説明すると電車が止まったときに中の人が進行方向に動いてしまうあれだ。俺の目の前では今それが起きていた。
花がジャンプした瞬間、花の豊満な胸がその場にとどまっているのだ。その後胸は体の進行方向に動き花が最高点到達し落ちる時、今度は胸が空中に留まり花の顔付近まで来る。問題は着地後だ。胸が上下に揺れているではないか！ 一往復、二往復、三いでぇ！
「おい遼。ポイント取られてしまったじゃねえか」
後ろから姉さんに思いっきり蹴られた。なぜか反対のコートにいる詩織ちゃんが全力で走ってくる。ものすごい顔で。
「そんなに乳が見たいのかー！ 見たいなら好きなだけ見ろー！」
「いえ、結構です」
俺は詩織ちゃんにボコられた。一緒になって姉さんもボコってきた。ない乳同士で結託しないでくれ。詩織ちゃんに比べて姉さんはまだあるほうじゃないか。もうゲームどころじゃない。
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俺をボコって満足した姉さんと詩織ちゃん。バレーボールはこれで終了。次はビーチフラッグをしようと詩織ちゃんが提案する。それに対し俺は賛成した。
ビーチフラッグ、走って旗を取り合うあれだ。旗を取る時飛び込むから花と桜はポロリがあるかも知れないと考えた俺は審判役を志願した。建前として俺が走ると勝負にならないと付け加えたところ詩織ちゃんからＯＫが出た。ふっ詩織ちゃん甘いな。
旗を置き走者がうつぶせになり準備が完了する。もちろん俺は旗の傍にいる。最初の走者は桜、藍、詩織ちゃんだ。
「じゃあいくぞー。よーい……ドン！」
俺の合図に三人は走り出す。桜はそこそこあるだけあっていい感じに揺れている。藍もそうだ。二人ともかわいいぞ。詩織ちゃんは割愛する。
三人はいい勝負だ。そろそろ旗が目の前。桜飛び込め！そう思ったが飛び込んだのは詩織ちゃんだけだった。旗を手にしている。
「私が勝ったぞー！」
詩織ちゃんが叫んだ。そんなにうれしいのか？
藍がこっちに歩いてくる。こういう時は讃えてあげるべきかな。
「藍、頑張ったね」
そう言って頭を撫でてあげる。嬉しそうだ。次は桜のところだ。少し離れたところで息を切らせている。
「桜大丈夫か？」
「うーん、久しぶりに全力で走ったよー」
「しかし惜しかったな。最後は飛び込めばもしかしたら勝てたかもしれないよ」
俺は結果のことと飛び込めばポロリがあったかもしれないのでそのことについて聞いてみた。
「だって、飛び込んだら水着の間に砂が入るじゃん？ あの感触が嫌いなのよ」
なるほど。それを詩織ちゃんに聞かせたらきっと怒る。だって隙間が無いんだもんね。
「それと……」
まだ他にあるのか？ 詩織ちゃんが悲しむぞ。そう思ったが桜の顔は小悪魔のそれだ。桜が近づき囁く。
「遼、私がポロリするの期待してたでしょ。エッチなんだから♪」
まさかバレていただと！？ さっきもそうだったがこいつは俺の心を読んでいるのか！？
「遼の考えてることぐらいわかるわよ」
そう言って離れて行く桜。今後桜の前では変なこと考えたらまずいな。それかポーカーフェイスをもっと鍛えるべきか。
そうこう考えているうちに次の組の準備が終わる。慌てて旗を準備しいつでもいけると声をかける。次に走るのは花、姉さん、一成、平だ。ハンデとして三メートル先、姉さんは五メートルくらい先でうつぶせになっている。
「いくぞー、よーい……ドン！」
四人が走り出す。一成と姉さんは少し遅れてからスタート。ここでの注目はなんと言っても花だ。走るたびに胸がバインバインに揺れている。バインバインな、バインバインだからな！ 左右の乳が上下左右に違う動きをするなんてなかなか見れるものじゃない。いやー眼福眼福。
ん？後方の姉さんがすごい勢いで追いついているぞ。そろそろスピード落とさないと止まれないんじゃないか？ なんか近づいてきてるけどスピードが落ちない？ てか俺に向かって走ってきてる！？
姉さんが三人を追い抜き旗を無視して跳んだ……？ 脚を伸ばしてこの格好は……ぐぅえ！
姉さんのとび蹴りをまともに受け吹き飛ぶ俺。姉さんは俺を蹴った反動で空中を一回転し着地。俺は吹き飛ぶ最中、花の揺れる乳を眺め両手で親指を立てる。そして落下。砂浜を滑る俺。ボードなんて使ってないよ。この身が滑っているから痛い。やがて停止。
「姉さん痛いよ！ なにしてくれてるんだ！」
吹き飛んだ俺は四つんばいで離れた姉さんに叫ぶ。
「スピードが出すぎてとまれなかったところにお前がいたから蹴ったまでだ」
なんて理不尽な！ 鬼！ 悪魔！ もっと俺を弟として大事にして！
「遼さん大丈夫ですか！？」
走ってかけよる花。乳がバインバインに揺れてる。大丈夫じゃないからもっと揺らしてー。
「遼さん痛いところありますか？」
全身が痛いからその胸で包んでください！ お願いします！
目線は胸の谷間に釘付けだ。花の顔なんて見ていない。海なんだし仕方ないよね！
「遼さん？あの、ホントに大丈夫ですか？ 私の胸に何か付いていますか？」
立派なものがついていますとも。でも目線に感づかれたからそろそろ切り上げないとね。
「大丈夫だよ。ありがとう花」
姉さんの暴力には慣れている。そのおかげで体は頑丈だ。とりあえず立ち上がろう。
「遼ー！ 大丈夫ー？」
離れたところから桜も心配しているみたいだ。あまり心配かけると悪い気になっちゃうね。
「大丈夫だー！ 今そっちに行くー！」
体についた砂を払い俺は花に手を伸ばす。
「さあ花、戻ろうか」
「……はい！」
顔を赤らめ俺の手を取る花。俺はそんな花の手を引いてみんなの場所へ戻るのであった。
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太陽が傾き、時間はもう夕方。楽しい時間はあっという間だ。体中が痛いけど今日は楽しい一日だった。
俺達は海に備え付けのシャワーで体を流し着替え車の前に集合する。みんなで忘れ物がないか確認し車に乗り込む。花が姉さんの話を聞きたいそうなので帰りは花が助手席に乗る。後ろの席に一成・詩織ちゃん・平、桜・俺・藍で座る。
「じゃあ出発するぞー」
海に喫煙所がなかったので、車に乗り込んですぐタバコに火を着けた姉さん。もしかして今日姉さんがやたら当たりが強かったのはタバコが吸えなくて酒も飲めなかったからか？それでも今日は我慢してくれたんだ、今度何かお礼してあげないとね。
車が走り出す。出発後すぐ桜と藍は疲れてたようで頭を俺の方に預けすぐ眠りについた。前に座る一成達もうとうとしている。俺も少し眠くなってきた。うとうとしてきて頭を揺らす。意識が途切れる前、助手席の花と目が合った。どうか……した……のか……な？
車のエンジンが止まった感じがした。少し目を開ける。姉さんと一成達が車を降りていく。ここは一成の家か？ 戻ってきたのか。両肩はまだ重い。俺ももう少しだけ眠ろう。
「お前ら起きろ。帰るぞ」
姉さんはすぐに戻ってきた。俺は目を開け二人を起こす。
「桜、藍、帰るから起きて」
「もう少し……だけ……」
「遼兄ぃ……おんぶして……」
二人とも起きようとしない。姉さんと顔を合わせお互いに苦笑いをする。仕方がない、おぶっていくか。
俺が桜を、姉さんが藍をおぶって我が家へ帰る。桜は降ろさなかったのか。まあ家が反対側だしみんなを送った後になるとは思っていたのだが。
「姉さん、桜はこれから送るの？」
「そいつは無理だ」
そう言って姉さんは右手に持っているものを見せる。ビールだ。一成の家でおじさんからもらってきたのだろう。
「桜には悪いが今日はうちに泊まってもらう。私も疲れたんだ」
あくびをしながら話す姉さん。もう飲んでしまったし仕方ないか。両親は今日もいない。でも桜の家に泊まった時と違い姉さんと藍がいる。間違いは起こらないさ。
「私は今日藍と寝る。だから桜は……」
わかってる。藍の部屋で寝かせるさ。藍には悪いが帰ったら部屋にお邪魔させてもらおう。
「お前が一緒に寝てやってくれ」
夏休み海編が終わりました！
遼の変態っぷりをうまく表現できているか不安です。
こんな高校生いるかよって？私がそうでしたよ？遼のモチーフは私なんですよ（笑）。残念ながら顔はイケメンとは少し違いますしモテモテではなかったですけどね！彼女はいましたが一緒に海に行くなんてことはなかったです。青春時代の後悔ですね。
さてさて、ようやく２０部分まできました。もっと細かくできたんじゃないかって？話の区切りがつけにくかったのでそこはご勘弁を。なんなら途中途中結構省いている部分があるので今度追加していってみようかななんて考えています。
今後の展開なのですが、夏休みはまだ始まったばかり！様々なイベントがあったりなかったり（笑）あったらいいなー。
では次の更新をお楽しみに！
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