第十九話 おっぱいは世界を平和にすると割と本気で思う
輝く太陽、白い砂浜、さざめく波、弾むおっぱい、揺れるおっぱい、したたるおっぱい。ここは海だ。学園で平と花を迎えた後、地元でも有名なビーチに到着したのだ。
学園で花が来た後は驚きの連続だった。花と桜がいとこで花は植物公園のあの子。花には植物公園のことは聞いていない。心の準備が必要なのだ。車の中で姉さんが
『昔のことだ。あの約束はお前も覚えていないみたいだし、あの子も昔のお前をお前とは知らないだろうから気にするな。』
と言ってはいたが気にしないなんてできるだろうか?
俺は昔の花と何を約束したんだ? 花は覚えているのだろうか?だが昔の俺からは今の俺が想像できないはず。言わなければわからないよな。
折角みんなで海に来ているのだ、楽しまなければと俺は無理矢理気持ちを切り替える。
俺達男三人はビーチで場所を確保している間、女性陣は着替えに行った。ビーチパラソルを開き、ブルーシートを敷く。それだけで事は済んだ。
海に来たらやることと言えば?『海だー!』と叫ぶ? そんなことやりたいやつだけやってろ。答えはおっぱいだ。
俺と平はビキニ姿のお姉さん達の胸を観察しながら鼻の下を伸ばしていた。貧乳派の一成はため息をついている。一成よ、これだけの堂々と見れるのはこの季節の海しかないのだよ。
「C、B、DいやE、あれはA、ん!? あれはG!」
おっぱい鑑定士篠崎は通るおっぱいをひたすら精査した。こんなにおっぱいに囲まれるなんて海サイコー!もうそんな布切れなんて捨ててしまえばいい!
「篠崎! あっちのビーチバレー見てみろよ! すげー揺れてるぞ!」
なに!? それは見過ごせない。うむ、いい揺れ具合だ。お姉さん飛び込んだぞ! ポロリこい! ポロリこい!
「お待たせー!」
もう少し楽しみたかったがどうやら女性陣が戻ってきたようだ。さて、うちの女性陣も精査しますか!
「どうかな? 似合っているかな?」
最初は桜か。胸にヒラヒラがついててスカートタイプのかわいい桜に似合っているオレンジ色の水着。さらに天使スマイルセットだ。何この子、抱きしめてもいいですか?おっーと落ち着け。胸は……Cってとこか。
「桜、かわいいよ。とても似合っている」
微笑みながら素直にかわいいと答える。桜は頬を赤らめモジモジとしだす。
「かわいいだなんて遼、ありがと♪」
「遼兄ぃ、次は藍を見て」
次は藍か。海に着いてから機嫌がよくなっている。よかった。藍の水着はピンクのワンピースか。少し子供っぽい気もするが藍に似合っててかわいい。藍の胸も成長したもんだ。CよりのBってとこかな。桜よりは少し小さいが姉さんよりは少し大きいかな。
「藍も似合っているぞ」
「遼兄ぃ、桜さんにはかわいいって言ってくれた!」
「はいはい。藍もかわいいよ」
そう言って頭を撫でてやる。うん、嬉しそうだ。さて、次は……。
「……………………」
姉さん、なんで競泳水着なんですか? せっかくの海なんだしもう少し露出してもいいじゃん。だがスタイルのいい姉さんに合っている。胸は相変わらず成長していないな、うんB。
「姉さん、ツッコミがほしいの?」
「何を言っている。日焼け対策は大事だぞ」
うん、ツッコミがほしいんですね。でも言わない。
「あのー遼さん、変じゃないですか?」
花か。うん、そのおっぱいに全米が涙した。Fだね。圧倒的としか言えないよね。純! 白! のビキニなんてまるで花そのものを表現しているようだ。大事だからもう一度言うね。純! 白! のF! 復活ではないからね。可能であるならそのおっぱいに触りたい! 可能であるならそのおっぱいに挟まれたい! なんで俺は男なんだ! 女の子同士なら触りあいができるのに! いっそあのビキニになって柔らかな感触に包まれたい! そんなおっぱいだ。歳を取ると垂れそうだと? 今目の前のこのおっぱいを見てそんなことが言えるのかね!? そんなこと言ってみろ! 神が許しても俺が許さん!
「「ごちそうさまです。ありがとうございます」」
俺と平は同じタイミングでお辞儀し同じ事を言った。だってそれしか言えないもんね! 頭にハテナを浮かべている花。俺は姉さんにボディーブローをされた。なぜ俺だけ……。
「「遼(兄ぃ)、エッチ」」
桜と藍からはジト目を向けられる。だからなんで俺だけ? 男の性だもん仕方ないよ。おっぱいは世界共通で幸せにするんだ。おっぱいは世界を平和にすると割と本気で思っているよ。あれ?なんか忘れているような……。
「これは格差社会だ。こんなことあってはならない。私よりも大きい胸は切り落とせばいいんだ」
あ、詩織ちゃん。みんなの後ろで体育座りをしてうな垂れて同じ事を何度も繰り返し呟いている。切り落とせばいいなんて怖いよ。
「詩織」
さすが一成。彼氏らしくいいとこ見せるんだな。これは女性陣からポイント高いぞ。
「俺は詩織の小さい胸が好きだよ」
「一成く~ん!」
詩織ちゃんが一成に抱きつく。これでなんとかなったかな。でも一成のセリフなんかかっこ悪いよね。そこは「詩織の胸が小さくても俺は詩織が好きだよ」だろ? あいつのセリフじゃ詩織ちゃんが貧乳だから好きみたいじゃないか。まあ詩織ちゃんが納得してくれてるみたいだし別にいいや。
ちなみに詩織ちゃんの水着は藍と同じくワンピースだったが色と柄が違った。あと胸もなかった。
「じゃあみんな揃ったし泳ぎましょー!」
桜の一声でみんな海に走った。
―――――――――――――――――――――
俺達は姉さんを除いて思うがまま海で遊んでいる。姉さんに泳がないのか聞いたらビール飲みてぇしか言わなかったので放置することにする。
花・桜・藍は浮き輪でぷかぷかとしている。気持ちよさそうだな。遠くに流されないかだけ注意してみていようか。一成と詩織ちゃんは水をかけ合っている。カップルらしいことをしてるな。俺と平はゴーグルを着け海の中を潜っている。小さい魚がたくさんいてきれいだ。さすがに遊泳区域だから大きい魚はいなかった。
息継ぎのため海から顔を出すと、遠くにいる姉さんがナンパされている。ちゃんと断ってるけどしつこそうだな。あ、ボディーブローがきれいに入ったよ。引き下がってくれたみたいだ。でも暴力で解決するのはよくないね。
花達は? そんなに流されていない。しかしあのおっぱいはすごいな。地平線に方向を見るようにしたら島に見えるぞ。ちょっといたずらしてこようかな? ちょっと体に触るセクハラぐらい海だから大丈夫だよね。そう思った俺は海に潜り花達に近づくことにした。平は放置だ。あいつに藍は近づけない。
水中をゆっくり進み三人の近くまできた。一旦息継ぎのため顔だけ水面に出すが気づいていない。三人とも会話に夢中だ。しっかり空気を吸い込みもう一度潜る。最初は藍からだ。水中から見ると浮き輪からお尻だけ出ているのがわかる。お尻を撫でるように触る。
「きゃ!?」
「藍さんどうかされました?」
「お尻に何か……」
探す頃には俺はもう離れている遠くから見ても気づいていないのがわかる。少し時間を置いて次は花だ。花と桜の浮き輪は大きめなのでわき腹辺りまで水の中だ。藍は妹だから少しやりすぎてもよかったが花はそうじゃない。わき腹をホントに一瞬だけ触れて退散。
「ひゃ!?」
「花?」
「いえ、気のせいみたいです」
「ふぅ~ん」
よしばれていない。今頃ちょっとしたパニックになっているのでは? ふふふ、最後の桜は浮き輪から落とすとするか。
俺はまた海に潜り三人に近づく。もうちょい、もうちょい。そこで位置を確認する。水中から桜を見ると目が合った。
こっちを見ていた!? いや、あの小悪魔的笑みはばれている!だがここまで来たら俺のテリトリー。構わん行くぞ!
「二人とも驚かないでね」
「「えっ!?」」
ドボンッ!
俺が桜の浮き輪捕まえようと手を伸ばした瞬間、桜は自ら浮き輪の間から落ちてきた。
先手を打たれた!? しかもタイミングまでばっちり。こいつ俺の腕に落ちてきた!
水の中でお姫様抱っこの状態になる桜。小悪魔の表情だ。桜は俺の首に手を回す。顔が近づいてくる。桜が目を閉じた。そして……。
チュッ
えっ? これって?
俺は桜にキスをされている。海の中でだ。触れるだけのキス。それでも俺の頭はパニックになる。
なんで? 桜が? キスしている? 落ちてきて、狙ってた? さっきまではばれていなかった。どうなっている? 桜とキスしている!?
わけがわからなくなったので水中から脱出する。
「「キャっ!?」」
水中から出ると花と藍が目の前にいた。桜はまだ俺に抱きついたまま、お姫様抱っこは継続中。唇はもう離れている。さて、この状況どう説明するか。
「もしかして、さっき藍のお尻触ったの遼兄ぃ?」
「私のわき腹に触れたのも遼さんですか?」
「そうみたいだねー。花の段階で気づいたから今度はこっちが驚かせようと思ったんだ♪」
俺に抱かれたまま桜が答える。俺が答えたらセクハラがしたかっただけのただの変態になってしまうから助かる。セクハラしたかったんだけどね!
「遼兄ぃ、エッチ」
「ん? ああ桜、もう下ろしていいか?」
顔に出てたか? 桜の胸が当たっているんだ。俺の胸の辺りが柔らかい感触でいっぱいだ。
「えぇー。もう少しこのままじゃダメ?」
こちらに顔を向けた桜。この天使な小悪魔ちゃんはわざと当ててるな。元気になっちゃうからやめて!
「遼さん……桜……」
「遼兄ぃ……桜さん……」
ほらほら、二人の顔がとんでもないことになっているよ。藍までそんな顔したらダメだよ。ヤンデレは一人で十分。早くしないと俺達海の藻屑になっちゃうよ。
「二人とも冗談だよー。遼、下ろしていいよ」
桜を下ろすと二人の表情は元に戻っていた。とりあえずこの場は収まったか。
「おーい、篠崎ー。そろそろ飯にするってよー!」
砂浜のほうから平が呼んでいる。あいついつの間に戻ったんだ。
「ほら、みんな行くよ。お腹空いてきたでしょ」
日も高くなってきたので昼食にはちょうどいい時間だろう。俺は三人を砂浜へと誘導するように背中を押す。花と藍がご飯何かな、楽しみだねと話をしながら前を行く。二人とも食べるの好きだからね。
「ねえ遼?」
そんな二人をよそ目に桜が天使のような微笑で振り返る。海に似合う輝かしい笑顔だ。と思った次の瞬間小悪魔な表情で指を唇に添えた。その姿はいつもの小柄な桜からは考えられないくらい魅力的だった。
「二回目、だね♪」
俺はその言葉と表情・仕草にドキっとし立ち止まる。桜は歩みを止めず花と藍の話に交ざる。
二回目、か。やっぱりあいつ、昔のこと覚えていたのか。ってことはさっきのも絶対わざとだよな。桜は俺のことどう思っているんだ?そして俺は……
三人の背中を見ながら俺は再び砂浜に向けて歩き出した。
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昼食は砂浜から少し離れたところでバーベキューだ。一成が準備してくれている。なんかすごい焦ってないか?
「遼戻ったか。早く焼け」
まあそうなりますよね。女の子の肌に油が飛んで痕が残ったりするのは俺も避けたい。俺と平で焼き、一成が運ぶ役割となった。
ちなみに一成がすごく焦っていたのは姉さんから「一成、準備しろ」の一言があったからだそうだ。それだけで焦るってのもどうかと思う。
さて、バーベキューか。肉を確認すると市販の肉だ。味付けや柔らかくするために果物が入ってたりしない。ビールがあるといいんだが、ここは姉さんに頼むしかなさそうだ。
「姉さん、悪いんだけど何本かビールを買ってきてくれないか?」
「飲んでいいのか?」
「今日は我慢して。肉を柔らかくするために使うんだよ」
チッと舌打ちをした姉さんは仕方ないと買出しに行ってくれる。
「初さん、お手洗いに行きたいので私もついていきます」
そう言って桜も行ってしまった。まあ焼けるまで時間がかかるしいいか。先に野菜からとやきそばから火を通しておくか。
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「で、どうした?」
桜がこうする時は何か話があるからだ。三年も家庭教師をやっていた初にはそれがわかる。
「やっぱりわかっちゃいました?」
「お前はわかりやすいんだよ」
「そうですか。あはは……」
乾いた笑いを出す桜。歩きながら初は桜の頭を撫でてあげる。
「遼のことか?」
「はい……」
「キスでもしたか?」
キス。その言葉を聞いた桜は顔が赤くなる。
「図星か。いいじゃないか。一歩前進だ」
「でもあの感じだとたぶん花も遼のこと好きですよ。花が遼を見る目は間違いなく好意を抱いている目です。私と……同じなんです」
「そんなの見ればわかる。気づいてないのは遼ぐらいだろ」
花を見たら誰でもわかる。一成も平もみんなが気づいている。気づいていないのは遼だけ。あの鈍感愚弟め。と初が呟く。
「花は遼と学園が同じなので私よりも長い時間遼といます」
「別に関係ないさ。なんならお前も転入したらいい。だが今のお前の学力じゃ無理だ」
「それはっ……」
「それで焦ってキスしちまったわけか」
「はい……」
焦った、確かにそうかもしれない。一緒に入れる時間が今までもこれからも花には勝てない。それなら一気に距離を縮めるしかないのだ。
頭をかきむしる初。
「お前が遼と同じ学園に通えないのは私の責任でもある」
「そんなことっ……」
「いや、私の教え方に問題があったのだ。すまない」
「初さんのせいではありません。私がもっと頑張らなかったから……」
売店に着き、初はビールを数本と桜にラムネを買ってあげみんなの場所へと戻る。
「ありがとう、ございます」
「私はお前を応援しているのだ。個人的にお前を気に入っているのだぞ。たとえ先にあの子、花と遼が会っていてある約束をしていてもだ。ただ……あの約束はあの子を有利にするかもしれない」
約束。それは昔桜と遼がチャペルで交わしたキスより強いものなのか? それは聞いてはいけない気がする。花と遼の問題だ。桜が立ちいれる隙間はないのだ。
再び頭をかきむしる初。
「お前が本気で望むのなら転入の手伝いをしてもいい。たださっきも言ったが今のお前の学力では無理だ。あの学園はこの辺りではトップクラスだからな。それでも」
「やります」
初の言葉を遮るように桜が答える。桜の目は本気だ。こうゆう目もするんだなと初は桜の頭を撫でる。
「わかった。明日からだ。明日からきっちりしごいてやる。遼とはたまに遊ばせてやるよ」
「よろしくお願いします、初さん」
「今回は中学の頃のように甘くはしない。覚悟しておけ」
そう笑ってみんなと合流するのであった。
―――――――――――――――――――――
姉さんがビールを買ってきて戻ってきたので、俺は袋に市販の肉とビールを入れて平に揉んでおくように指示を出す。なぜビールなのか?それはビールに含まれているビール酵母にはアミノ酸が肉にコクと旨味を引き出しく柔らかくする。アルコール分は熱で飛んでいくので未成年の俺達でも安心だ。コーラでもいいのだが、しょうゆと一緒に漬けないと甘さが残ってしまう為今回はビールで行った。ホントは十分ほど漬け込みたいがみんなお腹を空かせているので三分ぐらいで鉄板に肉を入れ一緒にビールをかける。焦げない様に鉄板にビールを浸しその間に第二陣を平に揉んでおいてもらう。
「焼けてきたね。食べていいよ」
肉が焼けてきたので一成がみんなに取り分けていく。タレは市販のバーベキューソースだ。さて、時間は短かったが柔らかくなっているか。
「「ん~お肉柔らか~い」」
桜と詩織ちゃんがおいしそうに食べる。よかった。大丈夫みたいだ。
「遼兄ぃ。ビシッ」
「遼。ビシッ」
藍と姉さんからもグッジョブサイン出たし問題ないだろう。花はなんだか幸せそうな顔だ。さて、俺達もいただこう。
肉はまだもう少し柔らかくなるな。これは第二陣に期待しよう。野菜とやきそばもソースがしっかり味ついていてうまい。材料は少なかったがまあ外だし上出来だろう。
俺達は残りの肉も全て食べた。第二陣の肉はしっかりと柔らかくなっていてみんな幸せそうだった。




