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冒険者は孤塔へ消える 3 了


それからというもの、毎日のように旅の男が塔を訪れた。

私はそれを適当にあしらいながら、無意識にあの男のことを待っている。

もう旅人というより村民ではないかとおもうほどに村で慕われている様子。


「最近来てくれなかったわね」

「前は迷惑そうにしてたのに、気にしてたのか?」


「うっさい! 来すぎて飽きたんでしょ」

「飽きるも何も……」


「恋人がいるって噂で聞いたわ」

「村長がお前、娘婿にならないか? とか聞いてきて断ったさ」


なぜ、どうして私はこんなにほっとしているのかしら。


「もったいなかったんじゃない? 旅人だから家族は持たない。とか言うつもり?」


「そんなかっこいいもんじゃない。定住するとこがあればそこに住むさ」

「ならなんで? せっかく食事も人もいいとこなのに」

「安寧の地は遠くにあるからいいんだ。近すぎると見なくていいものまで見えるからさ」

「私にわかるように説明して」

「あー……っとなんていうか」


彼は照れくさそうに、花でできた指輪を差し出す。

いまだ名も知らない男の、真剣な顔を見て、私の中で何かが芽生えた。

ああ、これが恋なのかと理解した。でも、この気持ちをどう伝えればいいのか、答えがもち合わせにない。


「お前と種族も生きた年も違う人間だけどさ、結婚してくれないか?」

「名前も知らないのに、とんだ電撃結婚ね」



「あの旅人さん、いなくなったね」




人々は言った。



冒険者は孤塔に消えた。


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