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三男と災難な村娘 2



畑仕事をしている男を見つめている。あの男が家に来てから3日が経つ。

私はあれ以降、彼が魔法を使うところをまだ見ていない。

どうせ三男のボンボンなど根を上げると思いきや、地味な農作業ばかりしている。

朝早く起きて、夜は遅くまで仕事をこなし、朝食も昼食もほとんど手をつけず、夕飯は家族と一緒に食べる。

真面目に働いているようだ。疲れない魔法などを使っていないのか?


「もう入り婿ね」


両親にからかわれる。一人娘に働き者の息子、ちょうどいいではないかと。


リンドは土を耕していたクワを置いてこちらを見た。

泥だらけの顔で笑っている。本当に顔立ちがきれいで、仮だとしても私にはもったいない話。


「疲れたり、面倒だったりしない?」

「疲れたことも面倒だと思ったりはないよ」


不思議な人、皆が彼みたいに農作業を面倒に感じず疲れなくなれば世界は平和だろうな。


「水を汲んできて」

「はーい」


村の水はヴァオルバの木の中でためており、それがフィルターとなり透明になってくれる。

水道もあるけれど木の中の水が天然で綺麗で、健康的だからであろうか。

リンドは手桶に水を入れて持ってくる。


「ありがとう」


井戸のポンプで汲み上げるよりずっと楽である。

彼は鍬を持ち、雑草を抜きはじめた。


「ねぇあなた、なんで家に来たの?」


「えっと……だからー」

「ねえ、あなた魔王の息子よね」

「え、なんで」


なぜ驚いているのだろう? バレてないとでも思ったのかしら。

だって彼がすっぽかした日にうちへくるなどタイミングが良すぎる。

彼が貴族でないのは魔王の息子ならばこの国では王子と同じ立場だからだ。



そして何よりも彼の魔力量が多すぎるのだ。


「村人は魔法使わないけど、吸う空気は同じ、誰にでも生まれついて基礎魔力はあるんだから」

「盲点だった……」


そんな人が農家をしているなんておかしいではないか。

私がじっと見つめると彼は観念したかのように言った。


「俺はリングドース。お察しの通り三男」

「なんで結婚から逃げたのにうちにきてるわけ?」

「ごめん」

「いいわけはいいわ。大方平民と結婚が嫌だとか、そういうのでしょ」



それなら納得だ、王族と農民の恋愛なんてありえない。

農民は農民、魔族は魔族と結婚するものだ。


「問題はそれでいながら、なぜここにいるのかなの」

彼は少し困った顔をして答えた。


「ほんとうに申し訳ないと思ってる。すっぽかしは父への抵抗心だったんだ。兄二人が好きな子と結ばれて自分だけ妻を父親に決められるのが嫌で……」

「それはずるいと思うのもしかたないわね。放り出された側からしたらそんなの知らないってなるけど」


「それで、父は平民と結婚させると言えば俺が家を継ぐ気になるだろうと、まさかそれが君とは思わなかったよ」

「頭に来たわ! 相手が魔王だかなんだか知らないけどねぇ!」


「え、サレイナちゃん……?」

「怒鳴りこんでやるから!」


そこらのホウキに乗って魔王のいる城まで飛んでいく。


「すっご……やばい! 楽しい、初めての私でもいける! 魔法学校とかいらないんじゃない!?」



「魔王でてきなさい! そこにいるんでしょ!」


「……大変です魔王様! 村娘が飛んできました」


私は城の窓ガラスをぶち抜いてやった。


「アンタのとこの結婚すっぽかされたけど! 息子さんもらいます!」

「そういうわけだから跡継ぎは孫ってことで……?」


「ははは……あと数年若ければ嫁にしたいくらいだ」 


頭がとんでいてびくびくしていた魔王にタンカきってしまった。


「帰ろうか……」


 なんだかんだいって恋って打算的で単純なのね。


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