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#Final:女の子になっちゃった

 あれから三年ぐらい。

 今は実家から離れたアパートで、修司と二人で暮らしている。

 子供はまだ居ない。あの翌日にビビりながら妊娠検査薬を試して陰性を出して安堵して、実は翌日の検査は意味が無いと知ってまた青ざめたのが懐かしい。結局正しく使っても陰性だったので、助かったのだが。

 両親にはまだ何も言っていない。だが、同じ大学に通いだした辺りから何かいろいろ察したフシがあるので、もう気づいているのかもしれない。

 転生した当初は子供作る気マンマンだったのだが、ここのところ、二人でこのまま暮らしていければ子供居なくても良いかもしれないと思い始めた。また心変わりする可能性もあるが、今はこれでいい。

 修司にも今のところ留年の気配はなく、ストレートで大学卒業まで行けそうだ。

 彩芽はそろそろ就職活動を始めるわけだが、修司は 「俺が養うから姉ちゃんは働かなくてもいい」 と言っている。馬鹿め、一人養うのがどれだけ大変だと思っているんだ。

 それでも、その心意気は嬉しかった。これはもう責任取ると言われたようなものだ。

 途中で捨てられないように、こちらも頑張らなければ。

 いやマジで怖い。

 最近、サークルに新入生が何人か入ってきたわけだが (無論、彩芽と修司は同じサークルであるキャンパスとか学部とかも同じ) 、もう見るからに男受けの良さそうな子がワラワラ居て怖い。最近の子って可愛い子多いんだよね……。

 しかも修司は意外とモテるらしく、新入生の内の何人かが既に修司狙いを匂わせているのだ。

 そして今日は、彩芽が家事の都合 (バーゲン) で参加できなかった飲み会がある。修司が逆お持ち帰りされていないものか、気が気じゃなくて卵割るの失敗した。

 動揺が酷いので電話でもして安心しようかとも思って受話器だけとったが、修司の番号が最後まで押せなかった。時だけが過ぎていくというのは、実際起こり得ることなのだ。

 と、修司からメールが来た。今日は帰らないから夜食は要らないとかだったらどうしよう。

 不安に押しつぶされそうになりながらメールを見る。と、 『今から帰る』 とだけ書いてあった。安堵で腰が抜けそうになる。

 それから程なくして、修司が帰宅した。

「ただいま」

「おかえりー。もう待ってたんだか」

「おじゃましまーす」

 おっと?

 聞き覚えのある声。これ多分修司にモーションかけてた泥棒猫の声だ。

「終電逃しちゃって~、どうしようかと思ってたんですけど~、先輩が居て助かりました~」

 修司を睨むと、彼は気まずそうに視線を逸らす。開き直ってたら殴っていたところだが、まあ気まずそうにしているので許してやる。

 代わりに、彩芽は自らの財布から五千円札を取り出す。

「近くにカプセルホテルあるから、そこに泊まったら?」

 クソ女にそう提案したが、彼女は譲らない。

「私~狭いと寝られないタチで~」

「ウチも狭いから同じだよ」

「そうじゃなくて~閉鎖感というか~」

 うるせえなあ帰れよ。

 ちらりと修司を見やる。またしても視線を逸らされた。頼りないぞ! この甲斐性なし!

 ああ、もういいや。ヒステリックに騒ぎ立てるのも性に合わないし。修司の隣だけ譲らなければそれでいい。

 しかしこの調子だと、この先が思いやられる。修司が心変わりすることは無さそうだが、強引に押し切られる可能性は……考えておいたほうがいいだろう。

 さて、こいつはどこに寝かせたものか。ウチには布団が二枚しかないから、座布団で我慢してもらうか――。

「布団は二枚しかないから、座布団……いや、いいや。私の使っていいよ。私は修司の布団で寝るから」

 言いながら、妙案を思いついた。だが後輩は、これを修司を布団から追い出すものと誤解したらしい。

「じゃあ、先輩は私の隣入っていいですよ」

 後輩は修司を見て、ニッコリと微笑む。その上、一歩距離を詰めた。

 それは優しさからの発言とも取れるが、この場合はどう考えても修司をとって食べる気である。

 しかしそんなものは最初から想定済みだ。

「勘違いしないで。修司を布団から追い出したりはしないから」

 彩芽は負けじと修司ににじり寄り、彼の腕をとって抱き寄せた。

「修司は、私と寝るから」

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