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第五章:叶えたいひとつ

第五章:叶えたいひとつ


1.

放課後に二人で海に行った日から数日。

あの日から俺達は学校がある日はほとんど昼食を二人で食べ、放課後に海に寄る。

そんな日々が続いた。


そして、ある日の放課後


いつものように俺達はしばらく静かに海を見ていた。

俺はたまに横目で波音の様子をうかがった。

「私、海が好きです」

海を見つめながら波音が言う。

一瞬、俺に言われたのかわからなかった。

俺が返答に困っていると、俺達の後ろから何人かの声が聞こえた。

二人して振り返ると、そこには特徴的なウェットスーツを着た集団が通っている所だった。

「何でしょう?あの人達」

少し先に停めてあるヨットに向かって歩いているのを確認して俺が答える。

「ボート部、と言うよりはヨット部か。この辺りの学校にはほとんどあるらしいが」

海が近い以上、不思議では無い。

少し様子を見ていると、何組かに分かれてその集団は離れて行った。

「すごいですっ。あんな風に船に乗って海を渡れたら、きっととても気持ちいいですっ!」

みるみる遠くなって行くヨットを見て波音が言う。

少し顔が赤い。相当興奮しているのだろう。

「…ウチの学校にもあるんじゃないか?ヨット部」

思い出して言う。

確か、何らかのうわさで聞いたような。細かいことは忘れたが。

「そうなんですかっ!?」

波音が、首が痛くないかと思う位の勢いでこっちを向く。

俺がうなずくと、波音は考え込むようにうつむく。

明日、行ってみるか?

言いかけた言葉を呑み込む。

こいつが自分で踏み出すことも大切だと思ったからだ。

ジッと波音を見る。

「………」

なかなか決心がつかないのも仕方ない、か。

「そろそろ帰ろう。何か考えてるみたいだけど、明日の昼聞くよ。家でゆっくり考えろ」

俺の意図に感づいたのか、きまりの悪い顔をする少女の頭に手を乗せる。

少し考えた後、微笑みながら笑う。

「わかりました。また、明日です」

そのまま途中まで歩いて別れる。

いつもなら野田の所へ行くのだが、なんとなく気が進まない。

「…帰って寝るか」

俺は帰路につく。

明日聞ける波音の答えが前向きなものである事を祈りながら。


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