第一幕「第一の災」 第一話「旅立前朝」
コンコンコン
「もう朝だぞー、起っきろー」
ノックの音が部屋に木霊する。しかし起きる気配が全くない。
「あっれー?いつもならすぐに起きてくるんだけど
なぁ。しょうがない、」
丸いドアノブを掴み、扉を開け、部屋に入る。木造りの剣と盾。何度も一緒に読んだハッピーエンドの本が、床に散らかっていた。そして一番目を引くのが部屋の前端にあるベットの上の丸くなって膨らんでる布団。ため息をつき、近づき、布団を掴み、一気に上へ引っ張る。
「おきなさぁーっ!!あれ?」
布団の中は空。
「それじゃあどこn」
プニっ。後ろを向こうとした時、誰かの指が頬を突く。
「ここだよぉ〜」
横を見ると黒い髪と黒い瞳の男の子が目に写る。そう彼こそが探していた人、ラクロだった。彼はまだ私の頬に触れている。なんなら指でこねくり回して「柔らか〜い」とか言ってる。静かに拳を握りしめて、素早く後ろを向き!柔らかそうなラクロの頬に豪快な平手打ちを決める!
パァシィィィィィィン!
豪快で気持ちいい音と共にラクロは回転しながら宙に浮く。
◇
(相変わらずだなぁ、アイラは)
赤く腫れた頬をさすりながら先程起こしに来た赤髪で緑色の瞳の少女を見る。
「おうおうおう、朝っぱらから喧嘩かぁ?」
「あ、おっちゃんおはよう!」
「よっ!おはようさん」
無精髭を生やしたこのイカついおっさんは
ウルフォ・ストローク。俺とアイラの面倒を見てくれてる優しいおっちゃんだ。
「あ、ウルフォおじさん!おはようございます!ご飯を作るのに集中して気づかなかった!」
「ははっ!良いってことよ!いつも美味い飯を食わせてもらってんだから!」
美味い飯、と言われたのが嬉しいのか笑みを浮かべる。確かにアイラのご飯は美味い。たとえ世界が変わったとしても、この事実は変わらないであろう。そんなことを考えているうちにご飯を作り終えたらしくテーブルに3人分のご飯が並べられ、アイラも座る。
「それじゃあ食べましょっか!」
皆揃いご飯を食べる。それがこの家族の習慣だ。
「「「いただきます」」」
カチャカチャと音を立てておっちゃんと俺はご飯を食べる。アイラは行儀良くご飯を箸で掴み静かに口へと運ぶ。
「そういやぁ、今日の朝は大きい音がしたが、なんかあったのか?」
ご飯を口に入れたままおっちゃんが喋る。
「おじさん聞いてよ。今日は大事な日だっていうのにふざけてきたんだよ。」
ラクロのご飯を食べる箸が止まる。
(今日?大事な日?なんだっけ?)
「おぉ、そういや、今日はあの日か駄目だぞ、ラクロ、ちゃんとしなきゃ。」
どうやらおっちゃんも知っているらしい。駄目だ、全然思い出せない。
「それにしても、時が経つのは早いもんだな。お前らの面倒を見るようになって、もう6年だもんな。」
「うん、この6年はいっぱい勉強をしたわ。ラクロは
良いよね、特待生だから。」
特待生、その響きにピンとくる。
「ロイア兵団入隊式!」
思い出し、口に出した勢いに椅子から立つ。二人とも困惑顔だ。
「ど、どうしたの?急に」
「あ、いやぁ、何でもないよ!」
忘れてたと言うのが恥ずかしくてそそくさと椅子に座り、食べかけだったご飯を急いで食べる。
「ごちそうさまでした!!
それじゃあ部屋に戻って準備してくる!」
「お、おう、」
お皿を台所に持っていき、階段を急いで上がっていく。
「いつもどりラクロは騒がしいわね。」
「まったくだ、だがそこが良いところだな。」
「それもそうね」
◇
ロイア兵の服装は下着を着てその上に黒く、金色のボタンと何かの鳥の刺繍が入っている兵服を着る。
(首周りがキツイな)
着替え終わり、下へ降りていく。先に着替えていたのにアイラはすでに着替え終わっていたようだ。
「アイラ、お前って着替え早いよな」
「そう?」
「おっ、二人とももう着替え終わったのか。うん、似合っているぞ。」
親指だけをピンとして、拳を突き出してくる。これは「良い」のハンドサインらしい。おっちゃんのハンドサインを真似する。
「へへっ、ありがとよ!」
「おじさんも見に来てくださいね」
「あぁ、必ず行くよ。それより二人とも、まだ行かなくて良いのか?」
「「えっ!?」」
二人同時に驚いた。時計を見るともうすぐで9時に
なろうとしている。入隊式が9時15分に始まるから、
「もうこんな時間!?」
「早く行かなくっちゃ!」
ドアノブに手をかける
「「行ってきます!」」
「おぅ!いってらっしゃい!転ぶなよ!」
扉が閉まる。
「本当に子供の成長は早いもんだな。アイラはあの出来事からここまでよく立ち直ってくれた。これもラクロのお陰かな。」
静かな部屋、いつもならまだこの時間は騒がしいのに。一人きり、椅子に座る。
「寂しくなっちまうなぁ。」




