12 2人の写真ですが何か?
正は仕事中ではあるが、ついついスマホを見てしまった。
普段ならこんなことはしない。
だが先日、清子とのツーショット写真をゲットしてしまい、気がつくとスマホを見るようになっていた。
♠いかん、いかん。清子さんを言い訳に仕事をさぼるなんて。
そんな不真面目なことではいけない。
思い立って、電源を落として、また電源を入れる。
♠いや、急ぎの電話がかかってくるかもしれないから電源は切れない。
しかし、電源がついていると…写真が気になる。
俺の女神が気になる…清子さん、綺麗だな…
家にいるときは2人とも伊達メガネをはずしている。
そのため、スマホの画面には美男美女が映し出されていた。
「うっわ!すごい美人にすごいイケメンじゃないですか?有名人っすか?」
突然、後ろから声をかけられて、正がビクっと肩を揺らした。
声をかけてきた若者は、中途で入所してきた佐藤だ。
よく言えば誰にでもフレンドリー。
悪く言うと、私語が多くて仕事が進まないタイプである。
その佐藤が、清子さんを狙っている。
「いえ、これは。自分の妻でして」
正は『妻』の部分を強調した。
「へぇ~!山田さんの奥さんって美人なんすね。じゃあ、一緒に映ってるのは…まさか、不倫相手っすか?」
佐藤はそう言って、へらっと笑った。
ガタンと音を立てて椅子から立ち上がる。
♠はあ?清子さんが不倫?こいつ、不倫っていいやがったのか?
ああ?!喧嘩うってるのか?
俺に、喧嘩うってるのか?
ただ若いだけでヘラヘラしてる、しょーもない男のくせに。
俺の女神を侮辱しやがって。
こう見えて、黒帯だぞっ!俺は、柔道黒帯だぞっ!
そう、正は柔道の有段者だった。
「あー、佐藤くん。それね、山田くんと山田くんの奥さん」
立ち上がった正を見て、上司の竹中が近づいてきた。
「え?…これ、山田さんっすか?」
佐藤は写真と正を見比べる。
「ああ、この写真!これ、なんかのプロモーション写真だと思ってたんっすけど、山田さんが結婚したときの写真だったんですね」
佐藤がそう言って、正の机に置かれた結婚式のときの写真を取り上げた。
「そうなんだよ。いやあ、びっくりするよね。こんなイケメンなんだもん。結婚式でもざわついたんだよ」
「ええっ!その話、詳しく聞かせてくださいよ~、竹中さんっ」
そう言いながら、竹中と佐藤が去っていった。
正はストンと座って、机の上の写真をもとの位置に戻す。
怒りを抑えられないとは、まだまだだなと思った。
ついついスマホの画面を見てしまう自分も、やっぱりまだまだだ。
お昼休憩にはいると、遠慮なくスマホを見ることができる。
スマホをみながら愛妻弁当をいただく。
♠これはまるで…清子さんとお弁当を食べてるみたいじゃないかっ!
餃子入ってるし。
勇気を出して写真撮ってよかった~。
ああ、もっと色んな写真撮りたいな。
料理してる清子さん。
掃除してる清子さん。
寝てる清子…さん…
ぶほっ!!寝てるとことかダメじゃんっ!
それ、犯罪じゃん!
自己規制かかりますっ!自己規制かけますよ~
頭の中で大暴走する正だった。
同じ頃、清子もまた大暴走真っただ中であった。
♥やだぁっ!正さんとお弁当食べてるみたいっ!
ちょうど餃子を1つ入れてきたし。
明日も餃子入れようかな…毎日だと正さんは飽きちゃうかな。
じゃあ、私のお弁当だけっ。
あ~、もっと正さんの写真がほしい。
愛でたいっ、もっと正さんの姿を愛でたいっ!!
じっとスマホを見ながらお弁当を食べていると、既婚者 鈴木が近づいてきた。
「なんか、面白いニュースでもあった?」
既婚者 鈴木は清子がネットニュースを見ていると思ったようだ。
「面白い、というのがどういう意味合い化にもよりますが、気になる記事は見つかっていません」
そう伝えると「はい、はい」と鈴木は聞く人を間違えたというように去っていった。
清子はあらためてスマホを見る。
ずっと正だけを見ていたけど、ふと自分の姿が目に入った。
♥っ゛!!!!た、たれが口元についてるっ!!
味見をしたときについたの?
ひょ~っ゛!!!!
自分だけではなく、正もこの写真を持っている。
なんとかして削除をしてもらわなくては…
そう思う気持ちと、唯一の普段の姿のツーショット写真を消したくない気持ちで揺れ動くのであった。




