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真面目ですが何か?  作者: 西園寺百合子


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12/15

12 2人の写真ですが何か?

ただしは仕事中ではあるが、ついついスマホを見てしまった。

普段ならこんなことはしない。

だが先日、清子きよことのツーショット写真をゲットしてしまい、気がつくとスマホを見るようになっていた。


♠いかん、いかん。清子さんを言い訳に仕事をさぼるなんて。

 そんな不真面目なことではいけない。


思い立って、電源を落として、また電源を入れる。


♠いや、急ぎの電話がかかってくるかもしれないから電源は切れない。

 しかし、電源がついていると…写真が気になる。

 俺の女神が気になる…清子さん、綺麗だな…


家にいるときは2人とも伊達メガネをはずしている。

そのため、スマホの画面には美男美女が映し出されていた。

「うっわ!すごい美人にすごいイケメンじゃないですか?有名人っすか?」

突然、後ろから声をかけられて、正がビクっと肩を揺らした。

声をかけてきた若者は、中途で入所してきた佐藤だ。

よく言えば誰にでもフレンドリー。

悪く言うと、私語が多くて仕事が進まないタイプである。


その佐藤が、清子さんを狙っている。

「いえ、これは。自分の妻でして」

正は『妻』の部分を強調した。

「へぇ~!山田さんの奥さんって美人なんすね。じゃあ、一緒に映ってるのは…まさか、不倫相手っすか?」

佐藤はそう言って、へらっと笑った。

ガタンと音を立てて椅子から立ち上がる。


♠はあ?清子さんが不倫?こいつ、不倫っていいやがったのか?

 ああ?!喧嘩うってるのか?

 俺に、喧嘩うってるのか?

 ただ若いだけでヘラヘラしてる、しょーもない男のくせに。

 俺の女神を侮辱しやがって。

 こう見えて、黒帯だぞっ!俺は、柔道黒帯だぞっ!


そう、正は柔道の有段者だった。

「あー、佐藤くん。それね、山田くんと山田くんの奥さん」

立ち上がった正を見て、上司の竹中が近づいてきた。

「え?…これ、山田さんっすか?」

佐藤は写真と正を見比べる。


「ああ、この写真!これ、なんかのプロモーション写真だと思ってたんっすけど、山田さんが結婚したときの写真だったんですね」

佐藤がそう言って、正の机に置かれた結婚式のときの写真を取り上げた。

「そうなんだよ。いやあ、びっくりするよね。こんなイケメンなんだもん。結婚式でもざわついたんだよ」

「ええっ!その話、詳しく聞かせてくださいよ~、竹中さんっ」

そう言いながら、竹中と佐藤が去っていった。


正はストンと座って、机の上の写真をもとの位置に戻す。

怒りを抑えられないとは、まだまだだなと思った。

ついついスマホの画面を見てしまう自分も、やっぱりまだまだだ。


お昼休憩にはいると、遠慮なくスマホを見ることができる。

スマホをみながら愛妻弁当をいただく。


♠これはまるで…清子さんとお弁当を食べてるみたいじゃないかっ!

 餃子入ってるし。

 勇気を出して写真撮ってよかった~。

 ああ、もっと色んな写真撮りたいな。

 料理してる清子さん。

 掃除してる清子さん。

 寝てる清子…さん…

 ぶほっ!!寝てるとことかダメじゃんっ!

 それ、犯罪じゃん!

 自己規制かかりますっ!自己規制かけますよ~


頭の中で大暴走する正だった。

同じ頃、清子もまた大暴走真っただ中であった。


♥やだぁっ!正さんとお弁当食べてるみたいっ!

 ちょうど餃子を1つ入れてきたし。

 明日も餃子入れようかな…毎日だと正さんは飽きちゃうかな。

 じゃあ、私のお弁当だけっ。

 あ~、もっと正さんの写真がほしい。

 愛でたいっ、もっと正さんの姿を愛でたいっ!!


じっとスマホを見ながらお弁当を食べていると、既婚者 鈴木が近づいてきた。

「なんか、面白いニュースでもあった?」

既婚者 鈴木は清子がネットニュースを見ていると思ったようだ。

「面白い、というのがどういう意味合い化にもよりますが、気になる記事は見つかっていません」

そう伝えると「はい、はい」と鈴木は聞く人を間違えたというように去っていった。


清子はあらためてスマホを見る。

ずっと正だけを見ていたけど、ふと自分の姿が目に入った。


♥っ゛!!!!た、たれが口元についてるっ!!

 味見をしたときについたの?

 ひょ~っ゛!!!!


自分だけではなく、正もこの写真を持っている。

なんとかして削除をしてもらわなくては…

そう思う気持ちと、唯一の普段の姿のツーショット写真を消したくない気持ちで揺れ動くのであった。

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