表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
使えないと追い出された生活魔法使い、無限の魔力で生活無双  作者: 九頭七尾


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/104

第98話 今度こそ幻覚かよ

 ついに敵軍が見えてきた。

 事前調査にはなかったはずの砦を前に、撤退してくれることも期待したけれど、少し戸惑った様子を見せただけで、構わず向かってきた。


 主塔の上で敵軍を眺めながら、シルアが訊いてくる。


「それで何を使って殲滅するの? 〈火起こし〉? それとも〈水生成〉で溺死させる?」

「……相手が魔物ならともかく、人間相手にそんな殺戮方法は取れないよ」


 最初からそのつもりなら、わざわざ砦なんて築いたりはしない。


 そうこうしている間に、ついに敵軍の先頭が砦の眼前へ。

 戦いが始まった。


「「「オオオオオオオオオオオオオオオッ!!」」」


 いきなり峡谷に砦が出現し、不利な攻城戦になったにもかかわらず、敵軍の士気は高い。

 城壁に梯子をかけると、それを登って城壁を越えようとしてくる。


「負けるな!」

「人族どもを蹴散らせえええええっ!」

「うおおおおおおおおおおおっ!!」


 もちろん獣人たちの士気も負けてはいない。

 梯子を登ってきた敵兵を蹴り落としたり、矢を射って地上の敵兵を攻撃したり、砦を必死に防衛している。


「魔法部隊、前へ!」


 そんな中、敵軍の後方にいた魔法部隊が動き出した。


「発射!」


 攻撃魔法が一斉に放たれ、それらが次々と城壁を直撃する。

 どうやら乗り越えるのは容易ではないと判断し、城壁ごと破壊するつもりのようだ。


 石で作られた堅固な壁とはいえ、何度も喰らい続けるとそのうち突破されてしまうだろう。


「それじゃあ、僕たち別動隊も動くよ。みんな遅れずに後をついてくるように」

「「「はい!」」」


 僕の呼びかけに、元犯罪グループの青年たちが威勢よく返事をする。


 実は僕たち別動隊は、敵軍に見えない場所から密かに断崖絶壁を登り、頂上までやってきていた。


「……〈歩行補助〉と〈重さ軽減〉が必要かと思ったけど、なくても余裕だったね」

「こういうのは得意だもの」


 さすが猫の獣人たちで、足場なんてほとんどないのに軽々と駆け上がったのだ。

 これは敵軍にはできない芸当だろう。


 ちなみに僕はというと、〈重さ軽減〉を使ったうえでシルアに背負われて登った。

 正直かなり恥ずかしいけれど、時間もないので仕方がない。


 そうして僕たちは断崖絶壁の上から敵軍の背後へ。

 完全に後方に回ったところで、僕は告げる。


「こ、ここから降りていくよ」


 自分で言っておきながら、めちゃくちゃ怖い。

 なにせこの断崖絶壁をこれから駆け下りていくというのだ。


 当然、崖というのは登るよりも降りる方が難しい。


「やっぱり〈歩行補助〉と〈重さ軽減〉を……」

「そんなの要らないわよ。行くわ」


 僕の言葉を余所に、シルアが崖を下り始めた。

 青年たちがそれに続く。


「ひいいいいいいいっ!?」

「静かにしなさい。バレるわよ」

「~~~~っ」


 そうして一気に崖を駆け下りた僕たちは、完全に敵軍の背後を取る形に。


「っ!? 後ろに敵がいるぞ!?」

「いつの間に!?」

「おい、後方に敵だ!」


 気づかれてしまった。

 すぐに敵兵がこちらに躍りかかってきたけれど、


「親分と姉御を守れえええええええっ!」

「「「うおおおおおおおおおおおおっ!!」」」


 青年たちが敵と激突し、食い止めてくれる。

 そうして彼らが時間を作ってくれている間に、僕はその生活魔法を発動した。


「〈日曜大工〉!」


 見る見るうちにもう一つの砦が築かれていく。


「な……と、砦が……?」

「い、一体何が起こっているんだ……?」

「これは夢か……?」


 あっという間に完成したそれを前に、敵兵が呆然と立ち尽くしている。

 その隙に僕たちは砦の中へと駆け込んだ。


「まさか、砦を二つも作っちゃうなんて。しかも敵軍を完全に挟み込んじゃうとか。さすがにとんでもアイデア過ぎよ」


 シルアが呆れたように言う。

 砦を攻めていたと思っていたら、砦に囲まれていたなんて、敵からすれば恐怖だろう。


「これで降伏してくれたらいいんだけど……ちょっと〈お便り〉を使って呼びかけてみよう」



   ◇ ◇ ◇



「クハハハハッ! 獣人どもも、なかなかやるではないか。だがあの邪魔な壁を破壊するまで、そう時間はかからなさそうだな」


 魔法部隊による魔法攻撃を受けて、徐々に抉られていく砦の城壁を見ながら、シュネイル軍の指揮官ドレアルは哄笑を響かせていた。

 肩に担いだ巨大な戦斧をゆっくりと下ろす。


「さて、そうなるといよいよオレの出番というわけだ」


 指揮官の中には後方の安全圏から指示を出す者も多いが、彼はそのタイプではない。

 自ら最前線に飛び込み、そのオーガじみた怪力から繰り出す戦斧で、これまで数多くの敵を屠ってきたのだ。


 当然のようにこの戦いでも敵陣に乗り込むつもりだった。

 しかしそのときである。


「ドレアル様っ! 大変ですっ! こ、後方に新たな砦が……っ!」

「は?」


 言われて振り返ったドレアルが見たのは、前方にある砦と瓜二つの砦。

 もちろんつい先ほどまでは影も形もなかったはずのものだ。


「……おいおいおいおい、今度こそ幻覚かよ?」


 さらに予想外の出来事が発生する。

 目の前の空間が四角く切り取られたかと思うと、少年の顔が映し出された。


「えーと、あなたが指揮官ですよね? フェリオネア軍を代表して、降伏を勧告します」


少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

きねづか
5月8日発売!!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ