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使えないと追い出された生活魔法使い、無限の魔力で生活無双  作者: 九頭七尾


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第21話 私の生まれた家

〈庭いじり〉を使えば、作物の種類にもよるけれど、種蒔きから収穫までだいたい一日二日で行けることが分かった。

 ローヌ麦も二日で立派な実がつくし、穀物なので日持ちするため、どんどん栽培していった。


 しかもどうやらこの〈庭いじり〉、作物の成長を促すだけではないらしい。


「土が明らかに良くなってるんだ。仮にその生活魔法を使わなかったとしても、種を植えれば時間はかかるがちゃんと作物が育つだろう」


 土壌を改善する効果もあったようである。


 そうして食糧問題が改善されたことで、各地に散らばっていた元住民たちが次々とこの都市に戻ってくるようになった。


「マジで街が元通りになってる!?」

「あの日のままだ……まるで魔物災害なんてなかったかのように……」

「ああ、また我が家で暮らせるなんて!」


 復興隊の三十人程度しかいなかったのが、一気に百人を超えたのだ。

 魔物災害の前は五千人近い人口だったことを考えるとまだまだ少ないものの、故郷に戻ってくる人はこれからもっと増えるはずだ。


 もちろん、災害のときに亡くなった人もいるし、避難先からどうしても帰れない人もいるだろうから、完全に元通りになることはないけれど……。


「間違いない。ここだわ。私の生まれた家」


 そんなある日、シルアがとある家を見上げながら言った。


「え、ほんとに?」

「ずっと探してたのよ。昔のことだから断片的な記憶しかなかったけど……間違いなくここよ」


 それは五階建ての家だった。

 例によってアスレチックみたいな縦方向に長い造りだけれど、この家は左右にも広く、立派な庭まで付いている。


「すごい豪邸じゃない!?」

「言われてみればそうね。私の記憶の中でも、家の端から端へ移動するまで結構かかった気がするわ」


 もしかしたらシルアは良いところのお嬢さんだったのかもしれない。

 そんなふうに思っていると、


「お前さんたち、どうしたんだ? そこはこの都市の創始者一族、ホライア家の邸宅だぞ?」


 ゼファルさんが声をかけてきた。


「ホライア家、ですか?」

「ああ。今から百年ほど昔、その初代当主様が、各地で虐げられていた獣人たちを率いて、このフェリオネアを一から建国されたんだ。噂では、伝説の白虎族の末裔だとも言われていて、俺たち猫系の獣人にとってまさに英雄の中の英雄だ」


 よほど尊敬しているのか、敬虔な信徒のような目をして教えてくれるゼファルさん。


「本来ならそのまま領主や国王としてフェリオネアを統治するはずが、平等を望まれてな。あえて権限を捨てて、市民の代表が統治していく仕組みを作られたんだ」


 そんな無私の精神ゆえに、何の権力も持たなくなっても、その一族は市民から愛され、敬われていたという。


「だがあの魔物災害で……ホライア家の方々は、全員が行方不明になっちまった……」

「そうだったんですね……」

「御遺体が見つかっていないなら希望はあると思いたいが……フェリオネアを襲ったのは、グラトニーレギオンっていう凶悪な魔物災害でよ……」


 グラトニーレギオン。

 何かの書物で読んだことがあった。


 その原因は、デスグラスパーと呼ばれる巨大なバッタの魔物。

 一体一体はそこまで脅威ではないのだけれど、時にゴブリンを遥かに超える大量繁殖を引き起こすことがある。


 それがグラトニーレギオンだ。

 無数の巨大バッタが、進む先々でありとあらゆるものを喰らい尽くしていく……そんなものに襲われては都市など一溜りもない。


 つまり逃げ遅れた人たちは、その餌食になってしまった可能性が高いのだ。

 そのため魔力災害直後の都市には、犠牲者の死体すらも残っていなかったという。


 それで防壁や建物には、何かに齧られた跡が無数にあったのか……。


「ちなみに……そのホライア家の方たちって、雪のような髪の色をしていましたか?」

「ああ、そうだ。猫系の獣人の中でも、あそこまで真っ白で美しい毛色は珍しい。そうそう、ちょうど嬢ちゃんのように……」

「私、この家に住んでいた記憶があるのだけれど」

「……は?」


 シルアの言葉に、ゼファルさんの目が点になった。


「い、いや、確かにその名前っ……ホライア家の末娘様と同じだとは思っていたがっ……まさか本当にっ!?」

「念のため中を見てもいいかしら? 間違いないとは思うけど、まだ確信が持てないもの」


 そうして僕たちはホライア家の邸宅にお邪魔することになった。

 庭を通って玄関に向かいながら、シルアが何かを思い出したように言う。


「そうそう、この家の玄関、二階にあるのよね。その高さまで跳躍しないと、中に入ることもできないのよ」

「僕じゃ家に入ることすらできそうにないね……」

「私も小さかったから、いつも大人に抱っこしてもらって出入りしていたわ」


 近づいてみると、確かに一階に玄関らしきものがなかった。

 二階の高さのところに足場があって、そこにドアが付いている。


「今日は私が抱っこする番ね」

「恥ずかしいんだけど……」


 しぶしぶながら抱っこされる僕。

 シルアは地面を蹴って宙を舞い、軽々と足場に着地した。


 というか、〈重さ軽減〉を使えば自分でもこの高さまで跳べたんじゃ……?

 うん、次からはそうしよう。


 ゼファルさんも余裕で跳躍してくる。


「玄関を入ってすぐが、一階から五階までの吹き抜けになってるわ。ロープが何重にも張り巡らされていて、壁には非等間隔に足場が付き出してるの。ついでに家具が立体的に配置されてる。ここでよく鬼ごっこをしてた記憶があるわね。ちなみに一階の床は柔らかいクッションになっているから、落ちても心配ないわ」


 ドアを開けてみると、確かにシルアが言った通りの光景が広がっていた。


「……やっぱり。私の記憶通りだったようね」


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生活無双
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