表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
6章 血捧げの呪印
95/140

95 やっぱり強いね

 

「くっ、こいつら、個々でもけっこう強い!」


 タンクのギデオンが影狼を引きつけつつ攻撃、そこへヴィレムが連携して攻撃の主軸となり、その後ろでミリーが魔弓にて遊撃のフォロー。


 最後列ではセルカが全体支援をし、その横ではミルミトが、驚くべき洞察力を発揮して魔法による的確な援護射撃を飛ばす。


 同レベル同数であっても、相手が普通の敵であれば戦いはとっくに終わっているはずの、見事なパーティプレイだった。


「ふむ。素早いし、攻撃力もあるな。だが、何より――」


 そう、普通の、首を斬ったり心臓を貫けば死ぬ真っ当な生物であったなら。


「キリがなさそうだ」


 首や胴を切り離され、床に倒れ伏す影狼たち。

 傍目には完全に命を絶たれているはずのそれらが、どろりと溶けて一度、黒い水たまりを作り、すぐさま再び狼の形を作り直す。


 魔力が尽きぬかぎり、際限なく生成され続ける影の眷属たち――それが吸血鬼の能力の一端なのだ。邪神ペディアより。


 ともあれ、そちらはヴィレムたちに任せるしかない。

 私たちは、眷属らを生み出している本体の相手だ。


「さぁ、この我に血を捧げよ」

「「断る」」


 即答を重ね、私とシグマは同時に吸血鬼へと斬りかかる。


「多少上質とはいえ、所詮は下等な猿どもか。我の糧になることが、どれほど光栄なことかもわからぬとは。まぁ、それならば仕方あるまい。死なぬように加減するのは、けっこう難しいのだぞ?」


 左右から迫る二つの刃。それを吸血鬼は、己の手首を斬り裂き、流した血液を硬質化させて作った赤い刃で受け止めた。


 これもまた事前に邪神ペディアから得た情報で知っていた、血液を自在に操るという吸血鬼の能力の一つだ。驚きはない。


 一度引き、再び床を蹴って黒刀を振り下ろす。それもなんなく血剣でさばかれてしまうが、絶妙なタイミングでシグマが大太刀を斬り払う。


 私はゲームでも基本はソロだったし、こっちに来てからもずっとひとりだ。

 なので連携というものにあまり慣れていないのだが、そのあたりはシグマのほうが心得ているようで、私の動きに合わせてくれている。さすがAランク冒険者。


 しかし吸血鬼は、シグマのその重く鋭い一撃も軽々といなしてしまう。


 それから二人で連撃を叩き込むも、血剣で受け止められ、または弾かれ、または巧みにいなされ、または回避される。


 その動きには余裕しか感じられず、眼差しはつまらなそうに冷めたもので、ときおり小馬鹿にするように鼻を鳴らすのが腹立たしい。


 ギリギリと競り合うも、力で押し負ける。体勢が崩れたところへ反撃され、それを辛くもかわし、大きく後ろへ跳んで立て直しをはかる。


 その隣にシグマが並んだ。


「わかってたけど、やっぱり強いね」

「あぁ。技術的なもんはアレだが、それが必要ねぇくれぇに、素の身体能力が高すぎて余りあらぁな」

「シグマはそれで全力?」

「――まさか」


 横目でうなずき合い、再び同時に飛び出す。


 大太刀を振るうシグマの速度と技のキレが一段増した。

 力を加減していたわけではなく、魔力で肉体を強化したのだ。


 魔力のない私にはできない芸当だが、これは闘気での強化の下位互換らしい。


 限界はあるものの、練度次第でいかほどにも強化率を上げられる闘気とは違い、魔力での強化には限界があり、その度合いもたかが知れている。

 そのぶん肉体への負担は軽いそうだが。


 ともあれ――さっきまでのやり合いで、少しずつだけど、シグマの呼吸や動きが掴めてきている。


 彼の大太刀が受け流された、その間隙を突いて斬り込む。

 黒刃が狙うは、相手の首。取った――とそう思ったのだが、


「嘘っ!?」


 ガキンッと、生物の肌からするにしてはありえない硬質な音を響かせ、黒刀が弾かれる。


 存在位階が一定以上に高い者の体には、ちょっとやそっとじゃ刃は通らない。

 実際、すでに私の体も、相応に力の込められた攻撃でなければ傷つかないようになっている。


 けれどもこれは、それとはまた別。魔力によるものだ。


 といっても、以前に戦った悪魔がまとっていた魔力の鎧とも少し違う。

 悪魔のそれが、意図してまとう技術的な鎧なら、吸血鬼のそれは、自然に漏れ出て勝手に身を守っている鎧だ。


 この世界の生物は例外なく、常に魔力を帯びている。保有する魔力が多いほど自然に漏れ出る量が増えるのだが、増えた分は広がらずに密度となる。


 技ではない、自然に作られる魔力の鎧――それが、私の攻撃が弾かれたカラクリだった。


 そのことは事前に聞いていて、実際に対峙した時点で予想していたことだ。

 しかし……まさか、ここまでとは思わなかった。


 私の持つ黒刀は、遺物の中でも性能が高く、レアリティも高い古代超文明産。その切れ味のよさは邪神のお墨付きで、実際、悪魔も『暴食』も、この刀で斬り倒してきた。いまだ刃こぼれ一つない。


 それで、傷をつけるどころか弾かれてしまうほどとは。

 感触も、まさに鋼鉄を斬りつけたようなものだった。


「ならっ」


 闘気を練り、刀身にまとわせる。どうやらシグマも闘気を使えるらしく、同様に大太刀の刀身へまとわせていた。


 そのうえで再び、先よりもいっそう息の合った連携で畳みかけ、わずかな間隙を縫って攻撃を当てる。


 当たった。今度は、ちゃんと肌に。――攻撃が通った。


 だが、それでも少し皮膚が裂けた程度だ。しかも、それさえも一瞬で塞がってしまい、血が数滴、宙に舞うくらいのものだった。


 肉体の再生は、吸血鬼の特性の一つ。これはヴァンパイアも持つ特性らしいが、吸血鬼のそれは速度が段違いだという。


 再び攻撃が当たる。今度はさっきよりも深い。が、今度も再生は一瞬だ。


 段違いにしても速すぎる。だが、そこに文句を言っても仕方がない。


 この再生は魔力を使って行われるらしく、当然ながら深い傷ほど消費する魔力は多くなる。

 このまま傷を与えて魔力を消費させ続け、いずれ枯渇するのを待つか、どうにかして再生する前に命を奪うか――その二択だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ