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2(そこのレディ)

「解説どうぞ?」と口紅女。禿げ男が憤慨した。

「デラウェアは」考えもなく、ぼくは口を開いてた。「サムおじさんの手下が幽霊会社をまま作る土地だよ」

「へぇ」と伊達男。

「確かにアメリカンね」と口紅女。「笑えないところが」ハッと、笑い飛ばした。禿げ男の顔が赤くなった。

「もうよせ」シカゴが割って入った。「ジョークの解説をさせるなんて野暮の極みだ」

 二重に恥をかかされた禿げ男は、今や顔も頭も真っ赤にさせていた。かわいそうに。彼のために数秒だけ使って同情した。

「デラウェアはいない」シカゴは右手の太い人差し指を突きつけ、禿げ男から順に名を呼んだ。「モンタナ、お前の隣の口髭がマイアミ。ひとり飛ばしたその若造はコロラド。で、そこのレディは?」

「ハーイ」

 呼ばれて、ぼくの右隣に坐る口紅女が軽やかに手を振った。ふわっと良い匂いがした。

「そいつじゃねぇか!」禿げ男モンタナが椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がった。

 ふいー、と伊達男マイアミが変な息を漏らし、「シカゴ、これはウマくないなァ」

「俺に云うな」ハエを払うようにシカゴは手を振り、モンタナを坐らせた。「で、どうなんだ? お嬢さん」

 気の早い真夏の海のような青いサンドレスの口紅女は、「シアトル」と名乗った。叔父なら「火傷しそうにホット」と表現する笑みを真っ赤な口元に浮かべた。シカゴの片方の眉がぴくっと上がった。

「そいつはおかしい」異を唱えたのは伊達男マイアミだった。「シアトルは男さ」

「知っているのか」とモンタナ。

「旧い仲でね。シカゴはご存知なかったようだが」片目を瞑って見せたマイアミに、シカゴが唸った。仕事は別々に呼び出され、個々の割当てだけを指示された。互いに知らぬ立ち位置で進む、慎重を期した計画だ。但し、不測の事態に滅法弱い。例えば当日、揃わなかった場合とか。例えば後日、山分けの場で顔を合わせた場合だとか。

「仕事に出たのは夫よ。アタシは代理」

「指輪がないな」モンタナが疑り深い目を女の左手に向けたが、「それが何?」と逆に鼻を鳴らされる始末。するとマイアミが如才無く、「つまり、貴女が本当にシアトル夫人かどうか分からないってことさ」

「あらやだ」女は自分の右頬に手を宛てて、「指輪ひとつで疑っちゃうの? だったらこの坊やは別として、アンタら全員チョンガーでしょ?」

「別れたんだよ」むっつりとモンタナ。

「俺は自由を選んだ」爽やかにマイアミ。

「ガールフレンドがいないんじゃないんだ、必要ないんだ」と呟くぼく。

「おい、シカゴ」苛立たしげにモンタナは女を指差し、「認めるのか?」

「認めるも何も、今ここにいるんだから、それで充分でしょ」しれっと女が言う。シカゴが天を仰いだ。

「まあいいじゃないか」と伊達男らしくマイアミが取り成すように云った。「で、ミセス・シアトル? 呼び名はそれでいいのかな」

「そうねぇ」彼女は小首を傾げ、顎に人差し指を当て、「アリゾナ」と答えた。「どうかしら」うふっとばかりに花びらを振りまいた。

 渋面のシカゴに、「そうかもな」と意外にもモンタナは矛を収めた。「俺はきっかり半年待った。今更つまらないことで話を流すつもりはない。そうだろう、坊主?」

 いきなり話を振られて、「ええ、まあ」とかごにょごにょ応えた。物凄く場違いに思えた。

「よし」とマイアミ。「これで人数の問題は解決した。シカゴ、話を進めてくれ」

 シカゴが口を開きかけたその時、ビーッとブザーが鳴った。「なんだ」

「あ、ボス。ロッキーのヤツが見えないんで、」

 シカゴは頭痛をこらえる人のようにこめかみに手を当て、「ばかっ」嘆いた。「いないヤツに構うヒマがあったら居る人間で廻す準備をしておけっ」

 ごもっとも。

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