第四話 『ライバル宣言』
ナーガちゃんは椅子を倒して立ち上がると、テーブルに思いっきり両手を振り下ろした。
大きな音とともに、テーブルの上に乗っていたお皿やコップが飛び跳ねる。
「全部っ……仲間を守るためっ……!? そんなっ……!! 彼があの時、私たちを裏切ったのは……私たちを皆殺しにしたことが、現実の私たちを守るため、ですって――!?」
ナーガちゃんがいきなりあげた大声に、何事かと周囲のテーブルの人たちがこちらを訝しがっていた。
「……そうだよ。いっつも不器用なんだよねぇ、セイギくんはさー」
ナーガちゃんはとさり、と放心するように椅子に座った。
背もたれに体を預けて上を見上げ、手の甲を額に当てる。
「彼が……セイギくんが――ジャスティス――でも、いえ、そうね、そうだわ。だから戦闘でもあんな動きを――そんなまさか同じ学園にいるだなんて……今さらどうしたら――いいえ、これは幸運と考えるべき、だわ。でもあの人は私を知った上で黙って――だめ、考えが……まとまらないわ。どんな顔をして、これから黒猪くんに会えば……」
「あいつが”魔王”……。……現実世界の仲間たちを守るために……その仲間を殺すなんて……。あいつ、辛かったでしょうね……。……その〈ヘリダム〉ってやつ、許せないわよ……!」
そう吐き出したミヤちゃんの声は怒気を含んでいた。
――辛い、どころの話じゃない。
彼の――黒猪正義くんの心に負った傷はみんなが考えているよりも、もっと深い。
私は知っているから――
この場のみんなが知らない彼の闇を、彼がしでかしてしまった罪を、私は知っている。
《リベレイター》の出現、人工知能の解放、現在進行形で行われている現実世界での戦争と仮想世界での戦争――すべて彼が始まりを作ったのだ。
私は当時のことを思い返すように自分の左足をゆっくりと撫でた。
――だから、あの場にいた、すべてを知っている私には推測が成り立つ。
誰も気付けないことに、私は気づいてしまう。
黒猪正義くんにとって《ディカイオシュネ》が何を意味していたのか。
《ディカイオシュネ》に彼が何を込めていたのか。
私兵団……そう、彼にとって《ディカイオシュネ》は世界を導くための私兵団になるはずだったのだ。
《リベレイター》や人工知能、《シグナル》や《ハッカー》、誰にも真意を悟らせないで優秀な人材を集めるために、サイバーセルズという形で擬態したのだろう。
彼にとって《ディカイオシュネ》の頼れる仲間たちは――希望であり、償いであり、彼が存在する理由そのものだったに違いない。
何も知らないフリをして、普通の人間を装って、道化を演じて、大きな目的のために、確固たる信念で、必死に、長い間、彼は動いていたんだ。
彼は、あれから……必死に生きていたんだ。
全部、自分のせいだから……自分で決着をつけようとしていたんだ。
闇の中で彷徨う彼にとって唯一の光――それが《ディカイオシュネ》だったのだ。
それを――潰された。
その努力のすべてを――無駄にされた。
それも、自分の手で、その希望を壊しただなんて。
とてつもない喪失感が、想像もつかないほどの哀しみが、彼を襲ったことだろう。
……ひどい。ひどすぎる。
眼にじわりと涙が浮かんでくる。
まるで自分のことのように、その時の彼の心情を想うだけで胸が苦しくなる、張り裂けそうになる。
私は彼―黒猪くんのことをまだまだ理解できていなかったらしい。
重要な駒の一つ。CSNゲーム界の覇者”魔王”。ちょっとエッチな男の子。
私は黒猪くんのことをそういう風に見ていた。
好きだと言って、幼馴染だと言って、ウソをついたのも彼に近づくための口実。
男の子は幼馴染とか自分のことを『好きだ』と言ってくれる娘に弱いと漫画で勉強した。
病院で、有り余る時間を持て余していた私にとって漫画や本が先生だったのだ。
もっとも、彼は幼馴染だという私を怪訝に思い、ずっとつっけんどんに突き放してきていたけれど。
私が近づいたのは黒猪くんだけじゃない。学園で最もBQが高く、《ディカイオシュネ》の参謀だった永森郁巳さん、”神の足”を持ち、日本記録保持者の一之瀬美耶子さん、そして”魔王”が最も信頼する友人で、《ディカイオシュネ》の特攻隊長だった、本郷虎雄くん。
――そう。このメンバーは……《ユビキタス》は偶然なんかで集まったわけじゃない。
こんなに有能なメンバーが偶然で集まるはずがない。すべて必然。
私が集めたのだ。
私にしか出来ないことを成すために。
しかし私は、今、気づいてしまった。
彼の、黒猪正義くんの真意に。
彼が何をしようとしていたかを。
そして、彼が目指すものは、私の目指すものとは相容れないということを。
もし、もしもだ。彼が私の真意に気づいたら――
簡単にその光景は予想できる。
彼が、自分の正義に従って私に剣を向ける光景が。
嫌だ……。嫌だ……! 彼とはっ、争いたくないっ……!
仮想世界での殺し合いならまだ生易しい。もっとひどいことになるかも知れない。
私が彼の、彼が私の、互いに命を――いや、そんなことは想像したくない。
それでも、そうなっても、きっと彼は止まらない。自分の考えを曲げることはない。
日本だけじゃなく全世界で犠牲が出ようと、彼はそれが人類のための正義だと思っているから。
私も自分の考えが人類の未来のためだと思っているから。
彼が光なら私は闇。彼が闇なら私は光。
私と彼の道が交わることはない。
このまま彼が私の真意に気付かなければ何事も無い。
彼とじゃれあう偽りの関係はまだ続けられる。
だが、気付いてしまうだろう。
いや、彼は必ず――気付く。
現実の世界と仮想の世界――二つの世界は表裏一体、もはや一つの”世界”だ。
私が”世界”を制するか、彼が”世界”を制するか。
――”世界を制する者”は一人だけ。
眼から溢れた涙が、私の頬を伝っていった。
湧き出る感情が整理できない。
私が好意を匂わせる事を言うと、困ったような顔をする彼が可愛らしくて。
私が彼の腕を抱くとその赤らめたウヴな反応が面白くて。
私は彼にちょっかいをかけるのが楽しくて楽しくて。
――ああ、なんてことだろう。
彼が――黒猪正義くんが、どうしようもなく――愛おしい。
偽りの『好き』は、いつの間にか、本当の『好き』になってしまっていた。
やっぱり黒猪くんは、こんなことを考える”黒猪正義”は――あの時の少年だったんだ。
戻れるものなら戻りたい。
まだお互いが何も知らなかった純真無垢なあの頃に。
またここで会おうと指切りをし、再会することはなかったあの公園に――
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
巨大な闇を背負いながらも、傷つきながらも、必死にもがきながら進む彼が格好良くて、いたたまれなくて、愛おしくてたまらない。
その背中を後ろから優しく抱きしめてあげたい。彼をすべて包み込んであげたい。
でも、彼は私と違う道を選び、進んでいる。
もう色んな想いが溢れて頭の中がぐちゃぐちゃだった。
……いけない。明日野未来は明るく馬鹿な子。そういう設定だから。
私は涙を拭って瞳を閉じ、ゆっくりと眼を開ける。
すべてを終わらせるためには――みんなの力が必要だから――演じ続けなきゃ。
彼が《ディカイオシュネ》にすべての想い詰め込んだように、私もこの《ユビキタス》にすべての想いを詰め込んでいるから――――!
だから私は――みんなを騙し続ける――!
そこで、ずっと天井を仰いでいたナーガちゃんは急に私を見た。
「ごめんなさい、ミライ。先に謝っておくわ」
どうして、と私が問うと、ナーガちゃんは眼を反らして仄かに頬を染めた。
「私、彼に告白しているのよ」
「「はあっ!?」」
思わぬことをいきなり告げられ私とミヤちゃんは仰天した。
「CSNゲームをしてこなかったあなたたちは知らなくて当たり前でしょうけれど、彼は本当に凄い人よ。様々な伝説を残してきているわ。はっきり言って、彼以上のプレイヤーなんて存在しないと断言できるほどに。今一度言うけれど、私にとって彼は憧れの人だったし、崇拝の念を抱いているわ」
私は思わずごくりと生唾を呑んだ。
「私も……伝説のプレイヤー”魔王”について調べたこと、あるわよ。CSNゲームって言葉で検索すればネットに幾つも“魔王”のことが書かれたサイトはでてくるし。《ディカイオシュネ》解散の謎を推測するようなサイトも幾つかあるわよね。女がらみとか説は色々あるみたいだけど……。……今のが、真実ってわけね……。サイトを見た時はこんな人が本当に実在するのかって思ったけど……まさかあいつがCSNゲームの伝説的存在……“魔王”の〈ジャスティス〉だったなんて……」
「おぉー! 白ウサギもしってるのよぉー! セイギ、すごいー! にんげんでいちばんー!」
口のまわりをケチャップでべとべとにしたまま、〈白ウサギ〉ちゃんがグーで握ったフォークを掲げる。
「そうね。〈黒ウサギ〉と〈白ウサギ〉が助けを求めたのも彼が〈ジャスティス〉だというのなら適任……いえ、当然だわ。きっと彼なら現実を守るために《リベレイター》を倒すために尽力するはずだもの」
テーブルを見つめるその眼はびっくりするぐらい一途な想いが見てとれた。昔のことを思い出しているのか、沈黙するナーガちゃんは想い人のことを考える乙女の表情だった。
「ナ、ナーガ……ちゃん? え、えーっと……」
「ミライ、いえ、未来。私は彼が黒猪正義が好きよ。違うわね。元々は〈ジャスティス〉が好きだったと言うべきだけれど、黒猪くんが〈ジャスティス〉だと分かった今……〈ジャスティス〉が黒猪くんで良かったと安堵しているの。私は黒猪くんに不思議な魅力を感じていたし、彼が〈ジャスティス〉だったら私が彼を妙に気になっていたのも納得できるわ。未来、私が『ワールドマスター』に参加しようと決意したのも”魔王”が参加するという話をきいたからなの。私は彼に会いたい一心でプレイしていたのよ」
そ、それは知ってるけど……! こ、これってもしかしてライバル宣言?
えぇえーっ、ちょっと待ってぇ! こんな話ってないよっ! や、やばーい! ナーガちゃんって落ち着いてるし大人びてるし綺麗だし頭も良いし言動と裏腹に貞淑っぽいし、や、やばーい! やばーいっ!! 色々とやばーい!!
あれ? 待って待って。なんでやばいのかな? 別に永森さんと黒猪くんがそういう関係になったとしても……いやいやいや、やっぱりまずいよ! ほら、そうっ、計画が狂っちゃうかもしれないもの!
黒猪くんが永森さんを好きになっちゃったら私の言うことを聞いてくれなくなるかもしれないもの!
だからだめなの! やばいの! ナーガちゃんとセイギくんがくっつくのはだめなの!
「あ、あ、あ、あ……! ど、どどどど、どうしよう、ミヤちゃん……!」
私は訳も分からずミヤちゃんに救いを求めていた。
「はえぅ!? い、いや……ナーガがセイギのこと好きだったとしても……そんな……別に……私は……関係ないし……二人が好きにすれば……いいと思うし……? 最終的にはセイギが誰を選ぶかだと思うし……? ごにょごにょ」
そっぽを向いて何かぶつぶつ言ってるミヤちゃん。
なぜかその耳は真っ赤になっていたりして。
はぁうぇええぇ!? ミヤちゃんも黒猪くんが好きになっちゃってるのー!?
なんでぇぇえ!? いつからぁあぁあ!? ミヤちゃん、黒猪くんにぜんぜん興味なかったじゃない!? いっつも冷めた対応してたじゃない!?
なにこれっ、話が違うよぉお!? わっかんないよー! どうしてこんなことになっちゃったのぉ!?
「にひひひひっ、にひっ、にゃはははははは! にーっひっひっひ、ふがっ! にゃーっはっはっは!」
私たちの様子を見てトラくんは大爆笑していた。
「ト、トトトトトラくん……! 笑いごとじゃないよっ……! わ、わたしど、どど、どうしたら……!」
「あー、ごめんね、ミライっち。力にはなれないよ。実は俺もセイギくんのこと大好きなんだ」
いきなりトラくんがそんなことを言い出した。
その意味が理解できず、私たち三人は眼を点にする。
だけどその言葉の意図を理解した瞬間、私たち三人は大仰天する。
「「「はああああぁあぁぁああ!?」」」
身を乗り出し、トラくんへ詰め寄る私たち。
「あっんたっ、男でしょうがぁっ! 男のトラが男のセイギを好きになるの!? べつに私があいつをどうこう想ってるわけじゃないけど……!! それって……どうなの!?」
「ちょっとそれどういう意味なのかしら、トラくん!? さすがに私もそれは興奮せざるを得ないわよ!! 詳しくセイギくんのどこが好きなのか話して頂戴!! はやくッ!!」
「だめぇええ! だめっ、だめだめだめだめ!! だめだよ! そんなのだめだよぉ!!」
「あ、いや、冗談……なんだけど……」
「別に同性愛を否定するわけじゃないけど、だって、そんな……!! 頭の中がカタストロフよ……!!」
「トラくん! あなたセイギくんを見る目が違うとずっと前から思っていたのよ! やっぱりそうだったのね!? 突き合うのね!? 突き合いたいのね!? ナニで!? どっちが!? どっちを!?」
「だめだめだめだめだめだめだめ!! まぁくんは渡さないもん! 渡さないんだから!」
「いや、聞いてってば! 冗談だって、冗談! セイギくんは無二の親友だけど、そんな風に見てるわけじゃないからっ!」
ぎゃーぎゃーと喚きたてる私たちの様子を〈白ウサギ〉ちゃんはフォークを握りしめながら、ぽかーんと見上げていた。
しかし、「おぉーっ?」と何かを悟ったのか〈白ウサギ〉ちゃんも私たちの会話に参加してくる。
「おぉー! 白ウサギもセイギすきー! セイギ、いると、あんしんよぉ!」
その言葉に私たちは〈白ウサギ〉ちゃんへと視線を集める。
「ナーガも、ミヤも、トラも、ミライもすきー! 白ウサギはみぃーんなが、すきよぉー?」
〈白ウサギ〉ちゃんの純粋すぎる発言に私たちは互いに顔を見合わせた。そして熱くなっていた自分に恥ずかしくなりそれぞれ視線を彷徨わせ、席に着きなおした。
コホンと咳払いをして本題へと戻したのはナーガちゃんだった。
「……彼が〈ジャスティス〉なら色々と納得がいくわ。妙に私のことを理解しているのも、妙にCSNゲームに慣れているのも。……そうだわ、彼が〈ジャスティス〉だというのなら……トラくん、やっぱりあなたは“虎牙”の〈タイガ〉なのね」
「にひひ。せいかーい。お久しぶり、ナーガっち」
悪びれた様子もなくトラくんはいつもの調子で笑っていた。
そんな彼にナーガちゃんはがっくりと肩を落として額に手をやる。
「はぁ……。あなたたちという人は……同じ《ディカイオシュネ》でありながら、ずっと今まで私に黙っていたのね。あの独特の戦い方まで隠して……まったく何て文句を言えばいいのやら。呆れて言葉が出てこないわ」
「いやぁー、永森さんと最初に会ったカフェで、《ディカイオシュネ》の〈ナーガ〉だって言われた時はもう心臓が口から飛び出すかと思ったよん、ほんと」
「思ったよん、じゃないわよ。その時のあなたの驚きが今の私の驚きそのものよ。……でも彼が“魔王”なら今回の件をこのままでは終わらせないわね。彼はきっと《正道騎士団》を――」
そこまで言ってナーガちゃんが急に立ち上がった。
何かに気付いて驚きに染まっていた顔がみるみるうちに青くなっていく。
トラくんはそんなナーガちゃんに肩をすくめてみせた。
「にひひ……。そういうことだぁね。今頃、セイギくんは――」
俺は大きな館の前で足を止めていた。闇に染まるヤツの根城――その館の窓からは光が漏れ出て、周りにまとわりつく闇を跳ね返しているようだった。門の前には騎士甲冑を装備した二人のプレイヤーの姿。
俺の口は自然と笑みに裂いていく。
そこは何を隠そう《正道騎士団》の本拠地だった。
門番をしていた二人が立ち止った俺に気づいて声をかけてきた。
「おい、ここは《正道騎士団》の本館だ。何の用だ? 加入希望者か?」
「…………お前、どうして姿を隠している? 名前も非表示設定になっているぞ」
「加入希望者? くくく、ははははっ! ぎゃーっはっはっはっはっはっは!!」
大爆笑する俺に、二人は訝しげに顔を見合わせた。
「なあ……そんな怖い顔すんなよ、お兄さん。……なぁに、ただのソロ狩りだよ、ソロ狩り」
「ソロ狩り? お前は何を言ってるんだ?」
俺はすっと眼を鋭くした。
「――貴様らをぶち殺がしにきたと言っているんだ……!!」
真っ黒のマントを脱ぎ放ち、二人の視界を塞ぐ。
同時に、そのマントを裂き、俺の抜き放った剣は門番二人の首を掻っ切っていた。
それが《正道騎士団》に対する――宣戦布告となった。
「……大変だわ……! なんてことなのっ――!!」
ナーガちゃんは焦燥を隠そうともせず一目散に酒場を飛びだした。
「ナーガっ! どこへ行くのよっ!?」
ミヤちゃんがナーガちゃんの背中に叫んだ。その問いに緊迫した表情で彼女は振り返る。
「ソロ狩りと言うからてっきりモンスター狩りに行ったのだと思っていたけれど、彼はモンスター狩りに行ったんじゃないわ……! 彼が行ったのは――《正道騎士団》の本拠地よッ!! ――彼はそういう人なのよ!」
「なっ……! なんですってぇええ!? 一人で喧嘩売りにいったっていうの!? 相手は二四〇人近くいるんでしょ!? っ、あのイノシシバカっ……!! 一人で突っ走るなって言ったのはあいつの癖に……!!」
ミヤちゃんが驚きの声をあげ、ナーガちゃんの後を追った。
「さーて。そんじゃまー、相棒を助けにいきますかねぇ」
トラくんは、ぺろり、と唇を舐めた。
その鋭い眼光は猛獣のように闇の中で光っているように見えた。
ぞくり、と寒いものが私の背中を走る。
《ディカイオシュネ》十二幹部の一人、特攻隊長”虎牙”の〈タイガ〉。ナーガちゃんにバラしたこともあり、彼もこれでやっと本気が出せる、ということなのだろう。
「うん、行こう……! まぁくんを助けに……! 〈白ウサギ〉ちゃんはお姉ちゃんのところに戻って!」
「おぉー! わかったー! 白ウサギ、ねーねのとこ、もどるー!」
元気良く返事をする〈白ウサギ〉ちゃんを残して私も走りだす。
ここで――あの人を失いたくはない……!
たとえ、彼が私の敵になることが分かっていても……!




