墓参(ボサン)・3〜マクシム視点〜
すみません。
中途半端なところまで執筆していて、予約投稿をしていました。きちんと書き上げましたのでよろしくお願いします。
私がメルに会ったのは、幼い頃、ニコの友としての事。女の子に会う事自体が初めてだったが、メルは笑顔がとても可愛い女の子だった。クルクル表情が変わってニコに怒ったり泣いたりと忙しい。でも必ず最後は笑顔になる。そんなメルに目が釘付けになった。……今なら分かる。私はメルに一目惚れしていたのだ、と。3人で目一杯遊んだその後暫くしてからニコからメルと婚約した、と聞かされた時は胸がギュッと痛くて痛くて何故か訳もなく泣きたくなった。……失恋なんてその頃には分からない感情だった。けれど、1年が経ち2年が過ぎて3年にもなれば、自分のメルに対する気持ちがなんとなく好きってものである事には気付いた。
それが恋だと自覚するのは、親友のニコが亡くなった後の事だったけれど。
ニコが質の悪い感冒にかかって治りかけていたはずなのに一気に悪化して死んだ、と聞かされた時の絶望感は言い表せない。嘘だ、何故の繰り返し。けれどニコを失ったメルを見て強く思った。
ーーメルは僕が守る。
亡くなったニコの代わり? 最初はそのつもりだと思い込んでいた。だが違う。本当は悲しみに耐えるメルのメルラ・レレンの健気さに惹かれたのだ、と。ニコを失い悲しみから立ち上がれない彼女を立ち上がらせたのは、ニコの父だったけれど。それ以降メルは強くあろうと必死になった。その一方でまるでニコルを忘れないとでも言うように黒か灰色のドレスやワンピースを着るようになった。
それは喪服の意味もあるだろうけれど僕の目には贖罪に見えた。僕とメルの関係は友人でありニコの思い出を話し合える貴重な仲間だった。ニコを失い3年が過ぎた頃、メルに迫った事がある。と言っても12歳のメルと11歳の僕だから大した事じゃない。
「メル。そろそろ他の色も着てみたら?」
程度のものだ。それに対するメルの対応は拒絶だった。
「シムやお父様達が言う事は解るのだけど。他の色は着たくないの」
「……メル。自分がニコを死なせたって思っていない?」
僕の指摘にメルが目を見開いた後、唇を噛んで俯いた。その時僕は間違った事をしたと慌てた。謝ろうかと口を開く僕より早くメルが僕に言った。
「シムには叶わないね。……思ってる」
「…………。メルがそう思っていたらニコが辛いと思うよ」
「分かっているんだけど。感情が追いつかない」
12歳で言うような言葉じゃないけど、既に作家として小説を書いて世の人達を驚かせるメルラならある意味当然だろう。そして僕は結局それ以上の事が言えなかった。私達は結局それからも友人でニコルの思い出を語り合うだけの仲間。ニコの両親や私の両親にメルの両親からも視線を向けられている。
その意味は……。
「メルちゃんに早く幸せになってもらえるように、ニコルを吹っ切れるように、あなたがもう少ししっかりしなさい」
……言葉は多少変化があるけど、大抵こんな感じだ。
だけど、どうやら相当意気地なしな私は、未だにメルに想いを告げられない。
そうこうしているうちに、ニコとメルの父親の友人という侯爵の跡取りと婚約話が持ち上がった。私はそれを聞いた時、頭の中が真っ白になってしまった。
この時程、自分の意気地なしを嘆いた試しは無い。
そして今日はニコルの命日。いつものようにメルがニコを見ている。変わらない好意を表すその目に。私は胸が痛む。侯爵家の跡取りとの婚約話は結局無くなったと聞く。その顛末もメルから聞いた。
だけど。もうこれ以上私は意気地なしのままでいるわけにいかなくなった。侯爵家の跡取りとの婚約が無くなったのはあくまでも結果論。いい加減私が中途半端に友人の位置にいたら、メルを他の男に取られてしまう。それは自分の気持ちに気づかずニコとの婚約を聞かされて痛んだ心よりももっと強く痛むはず。
だから私は今日、ニコルの命日である今日、メルラに想いを告げる事を決めた。
本当に中途半端なところで予約投稿をしておいてすみませんでした。
次話はレオナルド・リクナルド・マクシムがメルラに告白します。
先ずはマクシムから。多分、メルラ視点の予定……。多分?
活動報告にもお詫び文載せてあります。




