↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/43

墓参(ボサン)・2〜リクナルド視点〜

お待たせしました。リクナルド視点の話です。リクナルドとメルラの出会いと、リクナルドの想いです。

俺がメルラに初めて会ったのは、メルラが10歳で俺が12歳の時だった。母上主宰のお茶会だというのに母上に媚びる事もなく、俺と兄上や弟達に媚びる事もなかった。それどころか黒のドレスを着て来た。母上の茶会だぞ⁉︎ 無礼にも程がある! と憤っていた俺は、初対面のメルラを怒鳴り付けた。


「おいっ! お前! 母上主宰の茶会に黒のドレスを着て来るなど、母上を侮辱しているのか!」


母上と俺達兄弟に挨拶をすると、サッサとテーブルの片隅に去って行ったメルラに腹を立てていた。幸い、俺達の周りには俺の護衛や城の侍女が居るだけだったから、将来の側近候補になる令息達や弟達の婚約者候補になる令嬢達に聞こえなくて良かった……と安堵したのは、茶会が終わってからだった。


「発言をさせて頂いても宜しいでしょうか」


メルラが俺に許可を求める。俺がふんぞりかえって頷けば、メルラは「ありがとうございます」と礼を述べてから意見を述べてきた。


「王妃殿下主宰のお茶会でしたので、お断り出来ずに出席致しました。私は先の流行した感冒により婚約者を亡くしました。その弔いのために喪服を着用しておりますが、王妃殿下に事前に申し出ましたら、快く承諾下さいました。ですので本日は喪服での出席をさせて頂いております」


淡々と紡ぐ声以上に、俺と同じ年頃の令嬢が無表情に語る事に驚いた。しかしその手を見れば震えている事が分かる。俺が怒ったから怖がっていたのか、と当時は思っていたが、今思えばメルラは婚約者の死を悲しんでいたのだろう。


「ふん、ならいい」


当時の俺は、婚約者を亡くしたメルラになんて声をかければ良いのか分からずそそくさと引っ込んだ。さすがの俺でも婚約者を亡くした令嬢に言い過ぎた、と思ったものだ。結局謝る事が出来たのはかなり先だったけれど。


そんな事を思い出しながら俺は今年もメルラの姿をそっと見守っている。

護衛付きの俺が近くに寄れば向こうの迷惑になりかねない。それは避けたいため馬車の中からそっと見守るだけだ。

あの茶会から半年に一度くらい母上は茶会を開催する度にメルラを招いた。いつだってメルラは黒いドレスで俺の目を引いた。母上に挨拶だけ済ませると、片隅でひっそりとしている。俺の目がメルラに釘付けになってしまえば周りが俺の側妃に、と考えるからずっとメルラを見る事は出来ない。


ーー俺には政略で結ばれた婚約者が居た。


隣国の王女だが、我儘で傲慢。王族であるが故にそういう性質は多少有るのも理解出来る。だが俺の婚約者は会う度に我慢出来る範囲を超えた振る舞いをする。何しろ、俺が婚約者である事が彼女の汚点だと宣うのだから。

確かに我が国は弱小だ。

だから隣国の後ろ盾は欲しい。しかし、そのために彼女の俺に対する言動を我慢しなくてはならないのだろうか。そう思ってイライラしていた頃。


「リクナルド殿下?」


「メルラか」


「どうしました? なんだかいつもと違いますね」


時々母上の茶会に来るメルラと話すようになっていた。


「婚約者と上手くいかなくてな」


「好きになれないのですか?」


「恋愛の気持ちが無くても穏やかな関係を築きたいのだが」


「それをきちんと言いました?」


「言ったら鼻で笑われた」


こんな愚痴を吐けるのはメルラしか、いない。

メルラは俺が隠しているはずの婚約者に対する苛立ちを弱小国と馬鹿にされる悔しさを波風を立てないように諭すしか出来ない情けなさを、見抜いてくる。

第二王子として常に周囲には平静さを持って穏やかに微笑んで接しているのに。


その裏にある俺の本心にいつも気付かれてしまっていた。そんなメルラに惚れるな、という方が無理だ。

……同時にこの恋が報われない事も気付いている。


我儘で傲慢な俺の婚約者は、同時に嫉妬深くて猜疑心も強い。側妃など持てるはずがない。

兄上に子が生まれるまで、俺はスペアとして城に居なくてはならず、兄上に子が出来て臣籍に降る事は内定していた。俺が側妃を迎えられるのは、正妻との間に子が出来なかった場合のみ。結婚してから3年は側妃は持てない。メルラは現在17歳。俺が結婚するのは20歳……つまり来年。それから3年と言えば、メルラは21歳。嫁き遅れ(いきおくれ)と呼ばれてしまう年齢だ。


仮にメルラと恋仲になれたとしてもそこまで待っててくれ、などと言えるわけがない。


最もそれ以前にメルラと俺の関係は友人以上では無いのだが。それでも俺はギリギリまで可能な限りメルラの側に居たい。愛を告げたくなる事もある。告げればもうメルラと俺は友人には戻れない。そして今のところメルラの中には亡き婚約者だけ。

だから俺がこの想いを告げるのは結婚する前だろう。それでも女々しくも思うのだ。あんなに一途に亡き婚約者を思うメルラだから、万が一にも俺と恋仲になってくれるなら何年でも待っていてくれるのではないか、と。それも子が生まれればメルラは側妃になれない。そんな曖昧な立場にメルラを据える事は出来ない。今メルラの隣に立つあの男に託すのが良いのだろう。マクシム・イオットに。


……大切だからこそ、メルラは諦めなくてはならない。

解っていても尚、俺は夢を見てしまう。


「……ああ。今年も墓参りが終わったか」


俺は1人言葉を零すと城へ向かうように御者に告げた。

リクナルド視点はここで終了です。次話はマクシム視点。その後、レオナルド視点(おそらく)で執筆予定です。多分?


取り敢えずマクシム視点も今週中に公開予定です。その後の事はマクシム視点の後書きにでも書きます。


リクナルド殿下は俺様だけど、意外にも自分の立場をきちんと理解出来る冷静さがありました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。