13-17 酒宴②/鏡③
酒を飲んで、歌って、踊って、大いに騒ぐ。
ニノマエを通じて歌や楽器演奏、踊りに宴会芸といった文化も流入しているため、宴会はかなり盛り上がっている。
宴会は何度もやっているので、みんな慣れたものだ。
合唱「およげ〇いやきくん」を、たい焼きを食っている最中に聴かされたときはちょっと吹いたね。
こいつら、俺をいじるネタの仕込みも覚えたようだ。
なんでたい焼きがあると思ったら、そういう事かよ。俺が手を出さなかったらどうしたんだろうね。まぁ、俺の性格上、手を出しただろうけど。宴会にミスマッチだから。
「10番アフロ! 火噴き芸、いっきまーす!!」
俺が突発的に開いた宴会は、事前に分かっていたんじゃないかというぐらい準備がされていた。
宴会を突発的に開く上司に慣れた部下というのは、どことなくパワハラ系ブラック臭がするのだが、酒を飲むのも美味い物を食うのもみんなで共有する楽しみなんだから許して欲しい。
ああ、いかんな。
酒を飲んでるっていうのに、考えが悪い方に傾きやすくなってる。
「まだだ、まだ終わらんよ! 私はまだ飲める!」
「そんな無理をする奴が、体を壊していくんだ! それを分かるんだ!」
「そこで倒れた奴は、坊やだったのさ」
「酒の飲みすぎで倒れている奴だっている! みんな、もうやめろ! こんなことに付き合う必要なんて無いんだ!」
ただまぁ、周りのみんな楽しそうではある。
どれだけ飲めるか競い合っている連中とか、こんな機会でもなければやれない馬鹿をやっているので笑顔である。無理やり飲ませるアルハラも無いから、俺も笑って見ていられる。
ただ、馬鹿のやり過ぎで周囲から止められているけど。倒れるまで飲むというのも――こんな機会なら、むしろ俺が試すべきか?
「創様、ダメですよ」
「夏鈴。たまには良いんじゃないか?」
「絶対に、ダメです」
「飲みすぎは良くない」
「お酒の飲んでも飲まれるな?」
俺も飲み比べをしている輪に入ろうとすると、夏鈴が待ったをかけた。凜音と莉奈も俺の腕に抱きついて身動きできなくなった。
仕方がない。諦めるか。
「一応、俺の憂さ晴らし? 気分転換? そんな宴会のはずなんだがな」
「良いじゃないですか。楽しそうな中に居るだけでも。
それに、飲み過ぎはダメですよ。あの人たちはお酒が好き過ぎで飲めるだけ飲みたいから良いですが、他の人が真似しても体に悪いだけです」
止められたので、浮かせた腰をまた落ち着けた。
腕は変わらず解放されないので、フリーの夏鈴に「あーん」をしてもらいながら、騒ぐ村の家族を見ている。
見ていたが、なんとなく酒の匂いが濃くなったような気がする。左右に顔を向け、匂いを嗅いでみると、うん、かなり酒臭い。
俺に何か言っていたが、こいつらの方が飲みすぎで、酔っぱらいじゃないか?
すると、俺の考えを読んだ夏鈴がクスクスと笑った。
「二人は飲んでいましたが、私は飲んでいませんよ。ほら」
夏鈴がスルリと俺に身を寄せてきた。
確かに、夏鈴からは酒の匂いがしない。
さすがに三人にくっつかれると暑いんだけどな。
俺はそんなことを考え、体の一部が暴走しないように意識を逸らした。