014 初めての森
歩くこと10分、ついに森のそばまで来た。
「戦いに生かせるスキルは持ってるか?全部は答えなくていい。手の内を隠す権利はあるから」
ガウェイクさんの表情が少し暗い。緊張感が漂う。
「回復魔法があって、あとさっきみたいに地図も作れます」
いざとなったらスキルの持ち替えも視野に入るな。
「回復もできるのか!了解した。では注意点を言う。これだけは従ってくれ」
そう言って説明が始まった。
・初見のモンスターとは戦うな。先に特徴と対処を伝えるから
・見慣れた敵でも、先に進化種かどうか確かめろ。森だと変異が強いんだ
・疲れたり、MPが切れたら素直に言え。無理するのはダメだ
「分かったな?落ち着いて立ち回れば大丈夫だ」
「はい!」
「今、マッピングと索敵をできるか?」
「もちろんです。普段通り作ればいいですか?」
「できれば、モンスターの種類を区別できるくらいの精度が欲しい。範囲は変えなくていい」
まずは地図からだ。普段通りに魔力を放出し、、あれ、木が邪魔だな。じゃあ魔力を追加して上から回り込ませよう。と、魔力が戻り始めて、内部の構造が浮かび上がっていく。木々が密集する部分とそうでない部分があり、道のようになっている。道は複雑に枝分かれしていて、まるで迷路だな。
続いて索敵を行う。同じように魔力を放つが、今度はモンスターの魔力を探るイメージだ。ええと、ちょくちょく反応があるな。どうやらオークらしき大きな生物が数体集まっている、群れだろうか。ぽつぽつと小さな反応もあるが、ゴブリンだろうか。ん?宙に浮いてる奴もいるぞ。なかなか多彩ね。
最後にモンスターのいる場所を地図と照らし合わせて確かめる。点在するゴブリンらしき奴、開けたところに集まるオークっぽいの、そして浮いてる奴は道沿いの木の集まった地点にいるみたい。
「どうだ?見えてきたか?」
ちょうど作業が完了したところだ。
「はい、正面あたりからは道が続いていますね。最初の枝分かれの付近にモンスターがいて、おそらく浮いています。不意打ちを狙っているかもしれません。枝分かれの右は行き止まりで、数体のオークが群れてます。で、小さい反応もいくつか見えます」
「そうか、助かった。飛んでるのはグリーンビーだ。葉っぱたちに紛れているから注意しろ。あと、ここからは索敵もしなくていい。戦闘に集中してくれ」
なるほど。新しいモンスター、楽しみだな。
「じゃ、行くぞ」
ガウェイクさんに付いて行って森に入る。昼間だが薄暗く、じめじめとしている。と、左横にゴブリンが。まだこちらに気づいていないし、先制攻撃、、待て。ちょっと服がきれいだぞ。
「ガウェイクさん、あれは?」
左を指さして尋ねる。
ちゃんと指示を守ってくれて何よりだ、と前置きして
「進化種になる途中ってとこだな。ちょっと強いが、普通に戦っていいぞ」
一気に距離を詰めて、軽く斬る。素早く守りに入ったが、すでに息絶えていた。魔石も、普通のゴブリンと変わらない。なーんだ、拍子抜けだな。
「所詮ゴブリンだからと言いたいんだが、たまに妙に強いやつがいるんだ。一応油断はしないでくれ」
舐めプした結果ゴブリンに負けました、なんて洒落にならないからな。気をつけよ。
その後もゴブリンを狩りながら道を進んでいると、道が分かれるのが見えた。ここにグリーンビーがいるので、一度歩を止める。
「そんなに強くないモンスターだし、戦ってみるか?」
「危なくなったら助けてくださいね」
一人で足を踏み出す。剣をいつでも出せるように手をかけておく。分岐点まで着いてしまったが、どこにいる?
「あれ?ほんとにいま——」
唐突にブンッと風を切る音が。慌てて後ろを振り返る。体長1mくらいのグリーンビーがすぐそこまで迫っている。超気持ち悪い。
「死ねええ!!」
1ミリでも近寄らせたくないと、フルパワーで剣を振りぬく。自分史上最速で放った太刀筋は羽を真っ二つにし、彼方へと飛んで行った。
「あっ」
すっぽ抜けた剣を見送ることしかできない。不幸なことに、前からオークが向かってくる。仕方がないので、素手でやってやる。近づいて、全力パンチ。
「オラッ!!」
拳がオークの腹にめり込む。うめき声が聞こえるが、まだ耐えている。同じところにもう一発押し込むと、息絶えた。
「大丈夫か!?」
ガウェイクさんが駆け寄る。腕を確認するが、とくに損傷はしてない。腕の太さ自体は変わっていないと思うのだが、筋力は相当強くなっているみたいだ。
「肉弾戦で打ち勝てるとは、なかなかだな、、、、ぇ」
魔石を拾ったガウェイクさんが固まる。どうかしました?
「あのオーク、進化種だったぞ......」
そう言って少し大きな魔石を渡す手は震えている。不味いな、ステータスの異様な高さを勘づかれたかもしれん。
「あのバケモンに接近戦を......どんな胆力してんだよ......」
「そんなに強いんですか?」
「強いなんてもんじゃない。食らったら終わりなんだぞ」
怒りより恐怖が勝った表情で、ぼそぼそと言う。そんな気はしなかったが、俺のHPが多いからかな。
「お前が大丈夫なんだったら問題ない。俺には無理だ......」
強大な存在と対面して絶望している、そんな感じだ。大げさだなあ。
「剣拾いに行っていいですか?」
小さく頷いたので、取りに向かう。途中やけにオークと遭遇したが、全て一殴りでワンパンした。確かにさっきのオークは普通じゃなかった。こっちの方が早いし、午前中も殴ればよかったな。
「ひぃぃ」
相変わらずガウェイクさんは畏怖している。屈強な体なのに、変なの。
お、剣が見つかった。オークに突き刺さっている。おっ、進化種だ。しかし、深手を負っているので動きが遅い。軽く小突いて倒し、剣を回収。よし、一仕事終わり。
「う、うわぁぁぁぁぁ」
ガウェイクさんはそう言い残して、ついには逃げ出してしまった。
えぇ、俺なんかした?
お読みいただきありがとうございます。
よければ評価、ブックマークお願いします




