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第2話『祭りの後、砂時計は壊れて』

### あらすじSランク冒険者のグレイリィは、相棒の蒼白竜ルゥと共にリズの海の女神の聖祭を家族と祝い、母とハープを奏で花火を楽しむ幸せな時間を過ごす。


しかし、祭りの翌日、魔物の軍勢が結界を破りリズを襲撃。


グレイリィは父と兄を回復魔法で助けようとし、姉やルゥと共に戦うが、魔物の圧倒的な数に家族は力尽き、グレイリィはルゥに抱えられ逃げる。


燃えるリズを後にし、家族の「女神になる」との願いを胸に、グレイリィは街を去る。


Sランクになってから数ヶ月が経ち、私がこの街のダンジョンを全て運営しながら、高難易度のダンジョンを制覇した帰り道。


『ボク、お腹減っちゃったな!』


「もう、ルゥは食いしん坊なんだから。」


街の飾り付けや人が多く活気あって賑やかだった、今日はこの街をお護り下さっている海の女神様の聖祭なのだ。


「グレイリィ、今日は聖祭の警備を手伝ってくれ!」


「わかった、お兄様。」


『アカバネ、ボクも戦うぞ!』


「あぁ、頼んだ!」


城下町へ行くと、さっきよりも賑やかで、出店とかもたくさんあった。


私はお兄様と一緒に警護しながら屋台でお裾分けと言って分けてくれた食べ物を食べたりして、この街の人の気遣いによって、警備側なのに私とお兄様も楽しんでしまった。


夜には家族で年に一度のお母様の手料理でお祝いのご馳走を食べた。


私はお母様に頼まれて、今まで練習してきたハープをお母様と一緒に、憧れの女神様を祝福するために歌うのだ。


最初は手が震えていたけど、ルゥがそれに気付いたのか、私の指を軽く握った。


『大丈夫、グレイリィが頑張ってるの、ずっとみてたんだから!』


ルゥに励まされ、お母様や家族の笑みを見て、勇気が湧いて、歌いきることが出来た!


歌いきった後に、城の上で赤、黄、緑など色とりどり花火が夜の海を彩った。


楽しかった、嬉しかった。憧れのお母様とハープを引けたこと、上手になりましたねと褒められたこと。


今年もこんな華やかな花火のように輝かしく、大型の魚が泳ぐようにのんびりな日々がずっと続くなんて思っていた。


お祭りと花火も終わった静かで深い夜。今日は祝いということでお酒もお喋りもして楽しい気分だったのに、部屋に帰ると何故か私のお気に入りの砂時計が壊れていた。


お祖母様から頂いた砂時計が壊れてしまったことがとても悲しくて、まさか不吉の予感が起きることに私は気付かないで砂時計を片付けてしまったんだ。




これが最後の楽しいリズが存在していた昔話。



お祭りの次の日は、お兄様と一緒に城外の見回りをしていた。


そして何も無く今日も平和な日になると思っていたのに。


突然何かが破られる音がして、魔物の軍勢が現れたのだ。


女神様のヴェールと私の高魔力を注いでいた結界が破られてしまったんだ。


「嘘だっ!なぜあの結界が破られているんだ!?」


何とか私も剣を抜き、魔物を切り続けた。


『氷柱炎弾!!』


ルゥもたくさん魔法を使って、援護してくれていた。そしたら、背中側から何かが倒れる音がして…振り向くとお父様とお兄様が、血だらけで倒れていた。


「お父様、お兄様!?」


この街で最強なのに、魔物の多さに太刀打ちしきれてなかったみたいだ。


「グレイちゃん!アカ兄さんとお父様をお願い!!」


お姉様が私の盾になってくれた。お姉様も魔法は得意な人だ。


「ルゥ、お姉様を手助けしてやってくれ!」


『わかったよ、グレイリィ。シレッドのことはボクにまかせて!』


ルゥは、お姉様の所へ飛んでいくのを見届けて、魔物と戦っていた私は急いで倒しきって、お父様とお兄様に駆け寄り、回復魔法の光を2人にかけた。


ルゥもお姉様も、全力で頑張って応戦したんだけどね。


「出血が止まらない。」


この街や人々、家族を護れなかったら、私は何も出来なかったのと同じだ。


「くそっ、それにしてもなぜだ。どんなに戦っても魔物が減らない!」


呼吸を浅くするお父様とお兄様、魔力は流し続けて居るが、力及ばずの苦しさに唇を噛み締めた。


「グレイリィ!お前だけでも逃げろ!?」


突然私の腕を掴んで、そんなことを言うんだ。


「な、何を言っているのですか!お父様!!」


この状態のお父様とお兄様を置いていくなんて、出来るわけない。


「グレイリィ、貴方ならきっと…この街をまた良いものにできるわ。」


「お母様まで、何を言っているのですか!私はまだ戦えます!」


私は家族に早く逃げろと言われとか、意味がわからないよ。


「さ、グレイリィ様。お早く!」


「こちらです、グレイリィさまっ!」


メイドや執事に引っ張られて、さらには相棒である蒼白竜のルミナ、通称ルゥが元々の大きさに戻る姿を見て嫌な予感がした。


「ルゥちゃん。グレイちゃんを頼んだわよ。」


私の前に攻撃を仕掛けていた、魔物をお姉様が食い止めている。


「まさか、ルゥ……嘘よね。」


ルゥは一言も喋らず私を抱えて、リズの街が燃える姿が遠ざかるのを、私はビクともしないルゥの腕を何度も叩き続けた。


「降ろして!降ろしなさい、ルゥ!!」


大好きで、綺麗だった、あのリズの街を見ていることしかできなかった。


「悔しい、こんなのあんまりだっ。」


ルゥは私を護りながら水中の魔物と戦ってくれているのに、私はただただ何もせずルゥと逃げることになってしまったんだ。




「グレイリィはきっと素敵な女神になるわ。」


「そうだな、悪いな力不足で。」


「いいえ、あの子が生きてくれてるだけで幸せよ。あなた。」




「あの子に祝福と大き幸あることを。」



私は、そんな話もお母様とお父様の話も、街の人が私の誕生祭を記念に像を立ててくれたこと、語り継がれているなんてことも、なにもかもわからないまま。



ルゥに抱えられて、私はリズの街を去った。


……To be continued


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