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第十一話 離れ離れ

数分が経ち、この街の噴水に集まる人が次々と増えていくのを見て、この町がかなりの人が住んでいるのを痛感した。

「すごい人だね。この場所からジェフを見つけるのすごく大変そう……」

「確かに……」

小雪の言葉に無意識に同意してしまう。リテシアもそれだけこの状況が芳しくないことを理解していた。だが、こんな場所で怖気付いていられないと唇を血が出るほど噛み締める。

「小雪、ジェフが行きそうな場所って分かったりする?」

小雪は確かジェフと幼馴染だったはず。昔からその性格を見てきたのなら少しは居場所を絞れるかもしれない。

「ん〜、ジェフが行きそうな場所……武器屋さんとか?」

少し困ったような表情で数分悩んだのちにぽつりと小雪が呟いた。

「あの、小雪一ついい?」

「どうしたの?もしかして見つけた?」

「いや、そう言うわけでは無いんだけど、男の人ってやっぱりみんな武器が好きなの?」

リテシアは自身の指を絡めつつ、ジェフと親しい小雪に質問した。

「大体は好きな人が多いとは思う。ただ、やっぱり人それぞれだから違う人もいるよ」

手を組んで相槌を打ちながら丁寧に答えてくれる。

「だから1番の候補は武器屋さんになるんだ」

小雪は自分が言いたいことが伝わったのか大きく頷き、私の手を握る。

どうやら、小雪もこの状況に割と焦っていたらしい。


小雪に手を引かれ、真っ先に向かうのはこの噴水より更に進んだ所にある大通り。パン屋や鍛冶屋、薬屋など生活に欠かせない店が大通りにはある。必然的に武器屋もあるはずなのだが、やはり人の数が問題となってくる。

と言うことで今回の対策はピッタリと肩と肩を密着させ、その上で手を繋ぐことになった。

少女たちは作戦通り、密着して大通りを歩くが二人の歩幅が全然違うためかとてもぎこちない。

「り、リテリテ……これやっぱり無理があるよ〜」

小雪が大量の大人たちに飲み込まれ、押しつぶされそうになりながら不満を漏らす。

二人とも大人の波に揉まれ、密着出来なくなって両方の姿も見えないがそれでも離すものかとお互いが固く握り合う。

だが、そんな頑張りも虚しくリテシアは汗で手がすり抜けてしまう。

「あっ!こゆ……」

名前を呼ぶ前に人が雪崩のように押し寄せ、閑散とした場所まで流されてしまった。流れ着いた場所で座り込み、震える手を抑える。

ここは日の光がほとんど入らない場所であり、居るのは大体が孤児か逃げ出した奴隷くらいであり、ほとんどが好奇の目で私を見つめている。

「っ……」

その異様さや灰色の生物に嫌悪を示し、脱兎の如く小さな路地へと入って行った。


「……んんん!……んん!!!」

路地に駆け出すと唐突に女性の声?が聞こえた。その必死そうな声に私は近くにあった苔の生えた樽に身を潜め、声のする方を注意深く見た。

(何かやっているのかな?でも、こんな気持ち悪い場所で??)

だんだん暗い場所でも目が慣れてきて男の人のシルエットが3人見えた。

その3人が囲むように女性を縛っていた。女性と言ってもまだ私と同じ12歳くらいだろう。涙ぐみながら少女は男たちを見ている。

(あれは……もしかして、人攫い?)

男たちは少女の服をポケットに入れておいたナイフで引き裂き、露となった白い柔肌を恍惚な笑みで眺めている。

「へへっ、やっぱ、貴族の女はいい実り方してるな!そうは思わないか?」

「へっへへ!兄貴は上物を発見する観察眼を持っててさすがだ〜」

子分は兄貴であるレディオスことを褒め称え、女の方に目をやった。女も身体は白く穢れを知らないと言ったそんな身体であった。剣も持ったこともないのだろう。細々とした白い腕は今にも折れそうであり、涙ぐむその目は紫紺の瞳をしていた。髪の毛の金色と相まって美しい作品のようであり、兄貴はその綺麗な髪を汚すためにグリグリと足で踏みつけた。

「兄貴は相変わらず物好きですな〜」

子分はまた褒めるように言うとレディオスは調子に乗ったのか、腹部辺りを気絶しない程度に蹴りつける。すると鈍い音と共に女の抵抗しなくなる。


(あれはヤバそう……よく女の子をあんなにボコボコに出来るね。めっちゃ腹たつ!!)

リテシアは憤慨し、小型の石をポケットに、手のひら大の石を手に持つ。

——後は誘き寄せるだけ!!

石を投げて大きな音を出すと男たちの一人が様子を確認するために私が隠れている樽に近付いてくる。距離的にはあと2歩で私の石が振り下ろせる距離にいる。

だが、男がすんでの所で戻ろうとしてしまう。

(くっ、あと少しなんだから数歩ぐらい来てもいいのに)

リテシアは来ない男に作戦を変え、思いっきり手に持っていた石を膝に向かって投げつけた。

「……ぐぁぁぁ!!だ、誰だ!!あ、兄貴ぃ」

私が投げた石で地面に倒れた男にすかさず、石を持ち顔に目掛けて振り下ろす。

なんか助けを懇願された気がしたが問答無用で振り下ろしていたら動かなくなってしまった。

「て、テメェ!!殺す!!殺してやる!!!」

そう息巻いていたが、実際に殺しに来たのは私より数センチ背がでかい男だった。

男がナイフで私の腹あたりに狙いをつけ、突撃してくる。こういうことを予見してこなかったのだろう。刃渡りは5cm程度で狙ってくる場所も分かりやすかったのでこちらに接近する前に足あたりに大きな石を投げつけた。

今ので足が潰れたのであろう。激痛で屈んで足を摩っている。

(よし!行ける!!)

私はそう思い、もう一人の男の存在を忘れて投げた石を回収しようとする。

だが、拾う前に私は地面に転がっていた。

何が起きたか分からない。分かるのは殺すと言っていた男がいつの間にか近づいていた事。そして、とんでもなくお腹が痛い。数分経つとお腹から何かが込み上げて吐き出した。口と喉は酸っぱくなり地面には朝食べたもの消化し切れておらず小さな塊出てきた。

「はっ……はっ……ぐぅ」

「ハハ!!もう吐きやがった。まだ、早えよ」

そう言って男はリテシアの今にも折れそうな首を持ち、持ち上げた。

浮遊感はジェフの時のような安心出来るようなものではなく、今にも殺されそうな恐怖しかない。

「もう一発行くぞ!!!」

男が意気込み私のお腹にもう一発、拳を殴りつける。

もう全部出し切ったと思っていた黄色い液体を口からこぼした。ただ顔を下に向けることが出来ず、少量の黄色液体が戻っていく。

「はぁ……はぁ……」

数発殴られ、リテシアの目はもはや霞、息は切れ切れである。

「チッ!!もう終わりかよ」

男はがっかりしてリテシアの首を絞める。

絞められたことで酸素を肺に入れることが出来ずくぐもった声をあげる。

全身に力が入らず、もしもの時の小型の石が取り出せない。

段々、男の声が遠くなる。このまま絞められつつければ私は1分も持たず死ぬだろう。もう終わった。そう思った時だった。

急に男が手を離したのだ。ゴホゴホと咳き込みつつ、正面をチラリと見やる。

そこで目に入ったのは橙色の蠢く生物のような炎だった。

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