第13話
~アルティーナ4番地区~
「ただいまっと」
右耳に人差し指を突っ込みぐりぐりとほじくりながらルークが探偵事務所に帰ってきた。まるで何事もなかったかのように。
「ルーク!大丈夫だったか?」
玄関先にオウルが心配そうに駆け付けた。
「おう、なんとか撒いてきたよ。それよりオウルこそ、他のヤツにつけられたりとかはしなかったか?」
「あぁ、周りには気を付けたし大丈夫だと思うが…。一体何者だったんだ?俺らの後をつけてきたのは」
「さぁな、俺にもよくわからん。探偵業をやっているうちにどっかから恨みでも買ったのかね」
ルークは適当に返事をし、リビングの方へ歩き始めた。
この事務所は1LKで、日差しが全くと言っても過言ではないほど差し込まない物件である。一部屋はルーク達の寝床で依頼人が来たらリビングへと通している。だが、基本依頼は手紙で実際に依頼人が事務所に来たことはない。そのリビングもそこまで大きくなく、ソファーと机しかない。キッチンには小さな冷蔵庫があるくらいで生活感を微塵も感じさせないものとなっている。たった今ルークが何も入っていない冷蔵庫を覗いてため息をついたところである。
「冷蔵庫なんか覗いてどうした?もう腹が減ったのか?」
尾行されていた事に気を取られていたが、数時間前まで食事をしていた二人はまだ満腹状態であった。
「違う、当分の間は食べ物を見たくないほど満腹だ。そうじゃなくて飲み物だ。水すら無いぞ」
ほら、と冷蔵庫の中身をオウルに見えるように扉を大きく開いた。そこには何故かチーズだけが入っていた。
「あっ。そういえば飯食った帰りに買い物もしようとか話をしていたな」
オウルが苦笑いをしながら頭を軽く掻いた。フード越しだが。
「さすがに水がないのは困るな。面倒だが、もう一度出かけるか」
仕方なさそうにオウルがリビングから出ようとする。
「あぁ、そうだな。と言いたいんだが、俺ちょっと別の用があるから水の買い出しは頼めるか?」
「なんだ?依頼か?」
「いや違う。ちょっとな」
なにかを隠そうと言葉を見越しながらゴニョゴニョと喋るルークを見てオウルが気づいた。
「女かぁ?!」
「なぜその考えになった…。女でもない。いいから水は任せた、俺は先に行く」
スッとオウルの横を通り抜け玄関から出ていったルークを不思議そうにオウルは見つめた。
~アルティーナ3番地区~
この3番地区は中心街と同じく店が多いが、大半が飲み屋である。治安が悪そうな居酒屋からお洒落なバーまで飲み屋に関してはこの国一番の盛んな場所である。そんな飲み屋の街の中にある、知る人ぞ知るお洒落なバーにルークはいた。時間帯は夕方と飲むには早い時間な気もするが、一番気になるのは一人でいることだ。わざわざオウルに秘密にしてまで酒を飲みたかったのだろうか。そんな理由だったらくだらないが、ルークの手元には酒らしき飲み物は無い。ただ一人、考え事をしていた。
そこへ、チリリンとこの店のドアについている可愛い鈴が店内に鳴り響く。入ってきたのは若い男性。似合わない顎髭を生やしている。その男は店内の奥の方へ迷うことなく歩き、一番端のテーブル席へたどり着いて一言。
「久々ですね、ルークさん」
「何年ぶりだろうな、ニック」
このバーの店主がグラスを拭いている。客は2人、だが注文をしてこない。話をしているだけだった。店主が小さくため息をついてから拭いていたグラスとクロスを置いてスタッフルームへ入って行った。暇なのだろう。一方で、注文をしない客のほうは。
「驚きましたよ、僕の手紙の返事いつもしないのに話がある時だけは手紙を出してきて。訓練が終わったらいつものバーに来いって置手紙が机に…。いつの間にやったんですか」
「お前が実践に行っている間に窓から入った。Δ4sの部屋は相変わらずあの端っこなんだな」
「えぇ、まぁ。てか、窓からって鍵は?かかっていたはずじゃ…」
「俺は探偵だぞ、なめるな」
「探偵じゃなくて泥棒ですよ、それ…」
2人は笑うことは無かったが、楽しそうに会話をしていた。そしていつしか話題はルークが呼び出した理由へ。
「でも、なんで急に呼び出したんですか?このバーだってルークさんが消えたあの日以来来てなかったですよ」
「ちょっと重大な話がな」
深刻そうにルークが言うとニックが気づいた。
「女ですか?」
「もうその件はいいって…」
最近、友人と組んでいるバンドが忙しく2週間に3回のライブを行うという所業。
来月も3回ほどライブがあるらしい(把握してない)
この頃暑くなっているが、夏は好きです。虫がいなければ。
釣りにいきたいなって思ってます。夏に近づく度にその思いが強まっていきます。
これからもチマチマ書いていきます。よろしくお願いします。




