53 ”menuvuerl”
仮にこれが全部夢だったとしよう。
そしたら、俺は空を飛べるはずだ。
世話になりっぱなしじゃ悪いので、朝飯はここの食材を借りて俺が作ることにした。
夜に会った二人以外にも、紅玉の会のメンバーが三人タダメシを食らいにやってきた。
一人は鈴木という名のサラリーマン風の男。
成る程鈴木らしい鈴木だ。
こんな組織に身を置いている以外は、日本を探せばどこにでもいそうな男である。
二人目はカナタと呼ばれている少女。
これが本名なのかどうかは、確認出来なかった。
彼女は赤色に染めた髪をサイドテールにしばっている。
何処か既視感があるな。
佐上とは違って、女の子らしくも元気な子といった印象だ。
もう一人居るのだが、この男については、何かこう、情報を整理したくなくなる。
特徴を捉えるのは簡単だ。
ガッチリムッチリ固められた逆三角形の肉体を、青の全身タイツで包み込んでいる。
もう、それだけでいい。
それ以上いらない。
仮にも政府に背く反逆組織の人員なのだから、もう少し目立たない格好をした方がいいのではないかと聞いてみたら。
「……あたいの美を求める心が、このタイツを脱ぐことを許さないのさ」
爽やかな朝日をバックに、俺から見て逆光になるアングルでこんなことを言われたら、そりゃもうそれ以上追求できるわけがない。
「ま、問題ないよ。
いざという時は普通の服に着替えてもらうさ。
そしたら、全身タイツの鮮烈な印象をカモフラージュにできる。
これも作戦のうち、というわけさ」
日高のフォローは、流石というべきか真っ当に聞こえた。




