52 ”fhikthionu”
「妖怪眠り小僧は、昼に衆人環視の中で眠るからこそ、妖怪眠り小僧なんだよ。
だから、夜は寝れねぇの」
………。
なんか喋れよ。
………………。
「あのさ」
沈黙に耐えかねて、俺はつい心の奥底にある何かを零してしまいそうになる。
「ん?」
「実は俺さ、まだ大学の芝生の上で眠ってるのかもしれない。
今までのあれやこれは、全部夢の中での出来事でさ」
「へぇ。
それで?」
「でもやっぱ、わかんねぇんだよな。
本当に夢なのか、これが現実なのか。
嘘みたいなことばっかり起こるんだ。
そして、俺はなぜだかそれをやけにあっさりと受け入れてしまう。
まるで、理不尽な夢の中にいるようなシチュエーションだけれど、確かにその出来事の一つ一つに現実感がある。
もしこれが夢だったら、あの窓から飛び出せば、俺は空を飛べるのかもしれない。
けど、これがもし現実だったとしたら、まず骨折は確実だろう。
俺は……俺はさ…………」
「怖い?」
「そう、怖いんだ。
何かをしてしまいそうで、本当はそれは大したことじゃないのかもしれないけれど、大したことになってしまうのかもしれない。
俺が一つ呼吸する度に、人が何千億人死んでるのかもしれないし、何千兆人産まれているのかもしれない。
俺は、どうしたらいいんだろうな?」
「京ちゃん。
どうしたらいいかなんて、決まっているさ。
したい事をすればいいんだよ。
それにね、京ちゃん」
いつになく、日高が真剣な目をしている。
「夢と現実に、大した違いは無いよ」




