44 ”terlo-laythtaug”
「嘉賀。
この家はすでに警備隊員に包囲されている。
今から一分以内に、佐上を俺に差し出すんだ。
抵抗するなどした場合、または一分以内に佐上を渡されなかった場合は、警備隊員が屋内に突入し対象を射殺する」
おっさんが相手か。
おっさんとは昔から良く、相撲だの柔道だの剣道だのそういった遊びをしてきたが、どれも半端無く強かった。
竹刀対素手でも勝負にすらならなかった。
正面突破は不可能と言える。
じゃあやっぱり窓から飛び出すのはどうだ?
今思えば、中に入ってこられるんだったら遥かに楽だったかもしれない。
窓から見えない位置から、窓を銃で狙われたら、グレネードか何かでも無きゃまず鉢の巣になる。
生憎これはFPSじゃない。
現実だ。
そんなものがこの家にあるわけがない。
この部屋から外に繋がるものは、窓と扉がそれぞれ一つずつ。
つまり、完全に退路を断たれたというわけだ。
本当に佐上を差し出すしか無いのか?
佐上は地面に座り込んでガタガタ震えているが、それでも目だけは前を見据えている。
やっぱやだな。
こんなやつには死んで欲しくない。
何か、何かないのか?
柊は何て言ってた?
確か、テロリストが佐上を誘拐しにくるから、何を使ってでも佐上を守れって……ん、待てよ。
「なあ清水のおっさん」
「……」
「あんたらさ、本当に警備隊なの?」
柊の言葉通りなら、こいつらは…。
「もしかして、あんたら実はテロリストだったりしない?」
「………何を言っているんだ、お前は。
俺たちはただの公務員だ。
それ以上でもそれ以下でもそれ以外でもない」
あれ?
…どうにも嘘を言っているようには見えない。
反応がやけに薄いのだ。
ってなると、なんだ?
やっぱり柊の予言は外れなのか?
当たっているとしたら後は、俺たちが気づいていないだけで、テロリストも一緒にこの家の中に潜伏しているという可能性ぐらいしかない。
まさかそこまでややこしい状況には…
「なんだ!?」
突然、家の中を白い煙が充満した。
もちろん、俺も佐上も何もしていないし、清水の驚きようからして、どうも警備隊連中がやったわけでもないようだ。
本当にいるんじゃねぇの、テロリスト。




