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スタティオン  作者: quklop
”fautht” 若かりしあの頃の彼女と冷たい鉄格子
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26 ”jyauwonu-nitaugkinu”

その後俺は一通り由紀乃とイチャイチャした後、礼を言って東町邸を去った。

「センリ、いい? それともお姉ちゃんがいい?」

「う、うおぉう!

おねい、ちゃん。

…なんという破壊力。

しかし、この体型でお姉ちゃんと呼ばれるのは、やはり違和感がありますし、千梨という名前も頂いてしまいましたし、んぬぬ悩ましい」


二人は東町邸のすぐ側にあるベンチに座って仲睦まじく会話していた。

結構長く待たせちまったな。

今度何か買ってやろう。


「キョー」

「あ、えっと、鹿賀さ…じゃなくて京之介さん。

お帰りなさい」

「おう、ただいま。

って、今日から俺たちは住所不定なのか?」

「京之介さんって言葉の揚げ足取るのが好きですよね。

ま、いいですけど」

「キョーは私の足を揉むのも好きだ」

「ま、やらしい。

今度セクハラされたらお姉ちゃんに言うのです。

この世界での通報の仕方はバッチリ覚えましたから」


「通報の仕方か。

お前の知っている方法と、なんか違うところがあったのか?」

「通りすがりの上腕二頭筋が逞しいおじいちゃんの情報によると、この世界では不審者を見つけた時に…」

「もうダメだぁぁぁっ!!」

「と叫ぶと、街中に配置されたマイクが音声を拾って、セットの監視カメラから位置を割り出してカツラ毛整備隊だかなんだかが…」

「桂木警備隊です!」

「あいつだ!

死刑囚の佐上玲子が、老人を人質にしてるんだ!」

「ま、まて、誤解だ。

私は爺さんが倒れて泡吹いてたから病院に連れてっただけだって!」

「嘘だ!

あんなに上腕二頭筋が逞しいおじいさんが突然倒れるだなんて、世界が裏返ってもあり得ない!」

「どんな理屈だよおい!

って、おい、来るな警備隊員! 待て、その手に持ってるそれは何だよ!?」

「例え真偽がどうであれ、お前が死刑囚であることは確か。

知ってるか? この国では犯罪者には何をしても罪に問われないんだぜ。

たった昨日からなぁ!」

「それでも警察かよ!」

「警察ではない、桂木警備隊だ!

大人しく死ねッ!」


「…とこのように、駆けつけて事態の対処に当たるようです」

「こ、殺されるぅぅう!」


一つ、許せないことが出来た。

許せない…けれど、この理を通すのは難しい。

いや、それどころか何の理屈も無い、感情論だ。

けど、それじゃあ理不尽だしな。

…ま、どうにかなるだろう。


真剣を持って女に迫る男に声をかける。

さて、言い訳のお時間だ。

「おい」

「今話しかけるな一般人!

公務執行妨害で殺すぞ!」

俺は男と佐上の間に立った。

「さっきの会話について一つ気になったことがある」

俺が人差し指を立てると周囲の喧騒が止まった。

皆ポカンとしている。

まあ仕方ないか。

ポカンとされている間に、必死に頭を回転させる。


「さっきお前は、昨日から犯罪者には何をしても良くなったとか、そんなことを言っていたな」

「…ああ、言った」

「ところが、こっちの佐上?であってるよな?

兎に角そいつの反応を見る限り、そいつは昨日からルールが変わったということを把握していないように思える」

「ああ、そんなトンデモ法初耳だ」

取り敢えず、確認作業で時間を稼ぐ。

………よし。

揚げ足取りは得意だ。


「で、剣を構えている方のお前は、そのことについて佐上に『知ってるか?』という語り口で説明を始めた」

「…何が言いたい?」

「知ってなきゃいけないだろうが」

「……」

「『知ってるか?』だなんて疑問形で質問してる時点で、そいつは国のルールとして成立していない。

ルールってのは、そのルールが適用される全員が内容を把握してなきゃルールとして成り立たない。

そりゃそうだ、考えてもみろ。

猿が二十二匹集まってもサッカーは出来ない。

二十一人と一匹の猿だったとしても、まあ確かに二十一人はまともなサッカーをするだろうが、一匹の猿にとってはサッカーは成立していない。

お前は『知ってるか?』と知らない可能性があることを前提で説明を始めた。

それって、知らない奴を作ること前提でルールを作ったんじゃねぇのか?

なんで『知ってるな』にならねぇんだよ。

俺はその不透明な政治とかいうやつが…


心底気に食わない」


辺りがシーンとなる。

…五秒。

…十秒。

「下っ端の俺が、知ったことか!!

死ねぇっ!」


沈黙を破ったのは真剣が俺の頭に向けて振り下ろされる音だった。

俺は不思議と冷静だった。

冷静に腕を引いて、刃の横腹に向かって突き出す。


バリイィィイン!


俺が殴ったところから、刀身が粉々に砕け散った。


「…は?」

警備隊を名乗るだけあって、男は呆然とした表情をしながらも、素手で襲いかかってきた。

またこうなるのか。

ま、いっか。

うん、いいということにしておこう。


俺のパンチは、自分で言うのも何だけれど、綺麗にあいつの顎を捉えた。

「フゲシッッ!」

男は道路に大の字に転がった。

手首を軽く押さえてみる。

よし、死んでないな。

通行人の邪魔にならないように脇の方に寄せておこう。


「う、うあ、うああああ!」

通報をした男が走って何処かへ行ってしまった。

いっつもこんなんだ。

結局この場に意識を保って残っているのは、俺たちと佐上だけになってしまった。

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