14 ”danguer”
「加賀さん、ポケット入れさせて下さい!」
「駄目だ。
お前はそこから動くな」
「だって、こんなの、恥ずかしい…」
ギョッとして下を向く者。
興味を持って俺の右肩の辺りをじっと見つめる者。
ヒソヒソと話を始める者たち。
中には拝み倒してくる者。
すれ違う奴らはそれぞれ一様に、思い思いのリアクションをとってから、視界から消えていった。
俺は今、千梨を肩に乗せて町を歩いている。
「やっぱり隠れさせて下さい!」
「…これから一生外に出る時は隠れ続けるのか?」
「それは…」
「安心しろ。
お前を笑うやつは俺が片っ端から殴ってやる」
「…」
暑くも寒くもない、丁度いい気温だ。
空は雲一つない青。
時々空の中を気持ち良さそうに鳥が飛ぶ。
十人中十人がいい日だと呟きそうな空気の中、俺は陰鬱な気持ちで歩く。
俺の知っている風景と今この目で見ている風景の違いが見つかる度に、俺は少しずつ不安になっていった。
これだけ違いがあると、ひょっとしたら俺の知っているあいつが、この世界ではそもそも存在していなかったり…そんなこともあるのかもしれない。
けれど、それでも俺は歩くことが出来ている。
それは別に精神修行の賜物というわけでもなく、俺の少し後ろを最強にして不動の味方が歩いているからだ。
「キョー、前向かないと、ダンゲル」
「ああえっと、デンジャーな」
「成る程、シッケイシタ」
ほらな。
さっぱり変わらない。
どんな世界に居たって、こいつはこうなんだろう。




