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「レッド・フード:蜜の狼」  作者: 猫夢アトニマス
第一章:【蜜の味】

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第一章:蜜の味1

蜜を求め彷徨う狼女の物語。

 第一章4話完結

【ご注意】

 この物語は、

直接的な表現もなく

やんわりと

18禁でもないはずですが、

性をテーマにしています。

もしそれが駄目な人、

それ以前に面白くない人も

ご退室どうぞ(笑)


ーーーーーーーーーー


 私はあの日を堺に、

本当の自分を知らしめされ苦悩した。

父の手一つで育てられ母を知らず、

母の死をどんなに聞いても父は答えず、

どこか私の事を

冷ややかに観察してるような父。

父は普通の人間で、

そうなれば答えはおのずと

母の血こそが

自分の源流だと言える。

私は犬歯が発達していて、

筋肉質でしなやかな体。

母譲りとしか思えない身体能力で

野山を駆け巡り、

運動会でも、

普通のかけっこでも、

近隣の村々で相手が年長の子でも、

私に勝てる者はそうそうおらず、

狼の生まれ変わりだと

囃し立てられたが、

悪い気はしなかった。

しかしあの日、

父が私の誕生日プレゼントに

狩って持って来た野兎。

ありがとうと言いつつ

可愛いと抱き頭を撫でつつも、

凄まじい衝動に駆られ、

夜中に生きたまま

頭から齧り付き食べてしまった。

その様子に父は、

「ついにこの日が来たか…」

 私を縄と鎖で

がんじがらめに拘束すると、

何度も動けないことを確認し、

痛い痛いと喚く私に、

真実を語り始めた。

目の前の男は、

自分は育ての親で

私との血縁はなく、

母だと信じて疑わなかった

死んだ母も

私の母親ではないと言われ、

泣きじゃくる私には

それだけで充分だったのに、

それ以上に恐ろしい話しを

聞かされていった。


▼父の妻(母だと思っていた者)

 だけが知る情景


 ある日、

父だと思っていた男の妻が

まだずっと若い頃、

森の奥にひっそりと住む祖母の元へ

頼まれ物や物資を届けに行くと、

ベッドで伏せってる

祖母の様子がおかしいと感じ、

赤ずきんの裾を払い、

腰のナタをいつでも出せるようにし

質問した。

「おばーちゃん。おばーちゃん」

「なんだい赤ずきんちゃん」

 若い妻は祖母にいつも着てる

赤ずきん姿が可愛いと

赤ずきんちゃんと呼ばれており、

祖母に付けられたあだ名に、

『この事を知ってるのは

 私とおばーちゃんとパパと…』

 少しホッとしたが、

それでもおかしいことはたくさんで、

「おばーちゃん。おばーちゃん」

「なんだい赤ずきんちゃん」

「おばあちゃんのお口って

 元々そんなに大きかったかしら?」

 赤ずきんちゃんは、

大きく前に飛び出た祖母の

口を見て質問していた。

すると祖母はいきなり

ゲホゲホむせ出し、

聞いたこともないダミ声で、

「すまないね風邪が酷くて、

 喉が腫れて痛いんだ。

 頼んだ飲み薬を

 飲ませてくれないか?」

 赤ずきんちゃんは答えない祖母に

不信感は募り、

「…うんでもね…おばーちゃん」

 もう一度繰り返される質問だったが、

「グェッホグゲゲゲッゲホゲホゲホ」

 祖母の咳はますます酷くなり、

顔から精気が消え

本当にしんどそう。

見るに絶えず、

異様に膨らんだお腹の事も

聞きたかったけど、

言われるまま飲ませてあげ、

「ゲホゲホゲホッ。

 ありがとう。

 ありがとうゲホゲホ…」

「大丈夫おばーちゃん?

 (でもこんなに大きなお腹…)」

 赤ずきんちゃんが思わずその

大きなお腹に触れると、

「ギャアアアアアアアアア!」

 恐ろしい絶叫が響き、

森の中の鳥たちも驚いて

一斉に飛び立ち、

赤ずきんちゃんもすっ転んでしまい

ナタを握りしめ怯えていると、

絶叫は断続的な悲鳴になり

静寂を貫き、

絶叫を上げ続ける祖母は、

ベッドの上で腹を押さえ呻き、

脂汗ダラダラに目は虚ろ。

大きな口を開けたり閉じたり、

小刻みな息をし、

歯茎には何本もの牙。

「お前は!

 この辺りで有名な化け狼だな?!

 おばーちゃん食べたの?!

 なんてむごい!

 おばーちゃんを返せー」

 赤ずきんちゃんは、

祖母への恨みをはらそうと

勇猛果敢に立ち上がり、

ナタを化け狼に振りかざしました。

だけど化け狼、

そんな事にはお構いなしで、

腹の痛みに耐えるだけの

余裕しか無く、

息も絶え絶え。

体をガクガク震わせ

布団を蹴飛ばしただただ呻き、

腹を擦っている。

「あぁあああああまさか…

 おばーちゃんが飛び出てくる?!」

 赤ずきんちゃんもガクガクと震え、

その恐ろしい様子に目が離せなくなり、

「グワァアアアアアアアアァアアアア」

 絶叫が轟くと、

ビュブバアアアアアアーブシューーー

 その腹は裂け血しぶきが舞い、

その血を浴びる赤ずきんちゃんは

目を見開いたまま、

その腹から何かが飛び出し、

大きな腹はすっかり

ぺちゃんこになるのを目撃しました。

狼の絶叫は断末魔の悲鳴で、

すっかり動かなくなり、

死んでしまったのかと思え、

その腹の上には肉の塊、

飛び出てきた何かが乗っていて、

それをじっと見つめる赤ずきんちゃん。

ハァハァと肩で息をし、

これは何とナタの先で突こうとしたら、

「頼みを聞いてくれないか…」

 狼はかろうじて生きており、

驚き跳ね退きました。

「言えた義理ではないが…

 お前の言う通り

 私は化け狼…

 婆さんを喰ったのも私、

 私には静かに暮らせる家が…

 安全に子を産める場所が…

 欲しかった」

 掠れ声で途切れ途切れの声。

「子ども?!

 この肉塊がお前の…

 だから何!

 いったいお前は何人の村人を

 死に追いやったか、

 私の友達も居たんだ!

 酷い死に方…

 人間殺しの化け狼!

 この手で成敗してやる!!」

  振り下ろされる大きなナタ。

「待て!

 待ってくれー!!

 ほんの少しで良い聞いてくれー

 私のような化け物は一代限りで、

 子など産めるはずは無い…

 だがなぜか1年前に通りすがった

 死にぞこないの

 男を喰ったら妊娠した…

 これは奇跡なんだ…

 だから頼む…

 子に罪はない…

 だから…

 この子を助けて」

 化け狼は腹の肉の塊を必死に抱え

そのまま白目を剥くと、

口が大きく開き長い舌がドロリと垂れ、

ガクンと

力を無くしていた。

「ハァハァハァ…

 死んだ?

 ついに死んだ…の?

 ハァハァハァ

 これを育てろ?

 馬鹿言わないで、

 私は最近結婚したばかりで

 自分たちの子さえまだ…

 そんな事出来ない!

 化け物の子など殺してやる!!」

『子に罪はない…』

「そそそそそそんな事知らない。

 化け物の子はきっといつか

 お前と同じ

 人喰いの化け狼になる!」

 するとなぜだか涙がポロポロ溢れ、

旦那様との子が健康でありますようにと、

毎日願っている事を思ってしまい

目の前の生まれたての命と重なり、

ふいに葛藤しはじめた

血まみれの赤ずきんちゃん。

「駄目よ!なぜ泣くの!

 自分とこいつを比べてはならない!

 しっかりしなさい自分」

 彼女は勇気を奮い立たせ、

そっとナタでそれをつついてみると、

何も変化がなく、

「死産…それならそれに越したことは無い…」

 血まみれの自分の手を見つめ、

そしてやっと我に返ったように、

「でもこのままにしておけない…」

 繋がったままのへその緒をナタで切ると、

両手に抱え小屋を出て、

「流そう…それがせめてもの供養」

 川の洗濯場へ向かい、

そこから川の中程まで進み

流そうとした瞬間、

肉塊が跳ねるように動き、

驚いた赤ずきんちゃんの手は滑り、

川へ落としてしまったがすぐに掬い、

羊膜を剥がしてしまうと、

「ほんぎゃーおんぎゃー

 ほんぎぁああああ」

 と元気いっぱいに泣く

普通の人間の赤子が現れた。

「生きてた!

 生きてたぁああ男?女?

 女の子だー!

 第一子は女の子が希望なのー

 旦那様は男の子だーって

 言ってるけど」

 これが化け物子だと言うことは

咄嗟に忘れ、

彼女は生命の生まれる瞬間に

立ち会えた喜びを

隠せず彼女は彼女に抱かれ、

赤子は自分はここに居るぞとでも

言っているのか、

オギャーオギャーと泣いている。


▼父との情景に戻る

 父だと思っていた男は、

なかなか帰って来ない妻が心配で、

祖母の小屋まで迎えに行くと、

そこに祖母も妻の姿も無く、

居たのは赤子だけ。

泣きじゃくってる赤子だけ。

真っ赤な血を吸い時間が経ち、

どす黒く染まってしまった

頭巾の上で寝転がる赤子。

それを見て

心臓が止まりかけ旦那さん。

幾日も何日もかけ妻たちの消息を探し、

手助けしてくれる村人も1人また1人去り、

たった1人で当てもなく捜索し、

そして近年やっと

妻の死を受け入れられるようになり、

この子は神の思し召し、

妻の身代わりだと信じ

今の今まで育てて来たが、

娘が成長するにつれ見せる

異様な身体能力、

そして犬歯。

やはり化け物の子ではないかと、

不安が大きく顔をもたげ、

ついに娘だった者が、

長い年月を経て

そうではないと分かり、

兎を生きたまま喰らう者が

人間なはずはないと、

男はそれを見定めるために

彼女を育てたと言っても

過言では無く、

鎖に囚われ身動きできない子に、

「祖母を妻をどこへやった?

 喰ったんだな!

 あの兎みたいに!!

 お前はやはり化け物…

 あの日捨て去るべきだった!!

 お前があの日、

 何が起こったか答えるまで

 生かしといてやる。

 覚悟しろ!!」

 凄まじい怨念の形相。

男は今や私にとってただの悪魔でしかなく、

泣いてもどう抗っても拘束から

逃げ出すことは無理。

自分でも薄々気づいてはいたが、

『私はやっぱり化け物!!!』

 心に杭をさすように思った途端、

凄まじい腕力が宿り、

人間の理性を持たない獣、

「グワァアアアアアアア!!」

 狼に変身し、

引きちぎった鎖。

地下室を出て男の背後を襲い、

ずるずると引きずる鎖で、

その首に巻いて締め、

手にかけていました。

もがく男は簡単に力を無くしていました。


 時間は分からなかったけど、

ふっと我に返った時、

人に戻っていて、

私は父を抱き、

ずっと泣いていたようでした。

泣いて、

泣いて、

泣きぬれて、

お腹が空き結局は

父を食べつて過ごし、

数日経った頃、

眠り込んでいると、

近所の村人がやって来るのに気づき、

「やばい!」

 逃走していました。

私の体と頭脳はとても冴えていて、

以前の自分とは

比べ物にならないと実感し、

森や林や山岳地帯の取り分け

前人未踏のような獣道をかき分け、

食べられる物は何でも食べ、

人には決して手を出さず、

そして数年が経ち私も成長し、

城下町や村へ入り

動物の肉や皮を売りさばき、

たまには弁当なども売る、

行商人のようになってました。


 人と接触する機会が増えたおかげで、

皆は若い女の私に色々聞いてきたけど、

長年の放浪の旅で蓄えた知識で

見事な嘘を組み立てやり過ごし、

襲ってくる者には容赦せず、

時と場合によっては喰い、

優しくしてくれる者には微笑み。

友人も出来てはいたが、

でも自分は化け物だと充分知っているので、

深くは交わらず浅い付き合いのまま。


 そしてある日それは唐突に来て、

川で体を洗っていると下腹部に違和感、

股からの血で川も染まり、

オロオロしつつ親しくなった女医の元へ

仕方なく行くと、

「女になったんだよ。

 おめでとう。

 母親が居たら教えてくれただろうね」

 彼女には自分は両親もおらず、

天涯孤独だと話しており、

そう教えられると

清潔な白い布をもらい、

巻くように言われていました。

「女になるって何?」

 私は質問していました。

「子を産める体になるってことさ。

 お前何も知らないで今まで生きてきたのか?

 男どもの魔の手からどうやって逃げて来た?

 しかもまさかの生娘…

 そうだろう?」

「きむすめ??」

「ふぅ~やれやれ…今日は早じまいだ。

 お勉強の時間が必要だ。

 色々教えてやるから、

 とりあえず飯の支度を頼む。

 お前の肉弁当は美味いからなぁ」

「ん?うん。分かった鶏と牛と豚。

 どれがいい?今なら青魚も美味いぞ」

「牛丼!」

 大きな声の女医。


 それからと言うもの私は先生に

男と女の違いを

徹底的に教えられ子を作るすべ

性交術も

難しい避妊の方法も叩き込まれ、

恋愛そして結婚、

子を産み女はやがて母になる。

頭の良い私は、

もっと頭の良い人の教えを

一言一句覚え、

町医者の住居兼院内の

そこら中にある本を

医学書でも恋愛小説でも、

なんでもかんでも読み漁っていると、

いつの間にか女医の看護士兼、

料理人になり、

女医がたまにぼやく未解決事件に

興味を持つようになっていった。


ーーーーーーーーーー

あなたの街医者。

フローレ・ハナ医院

診察時間:朝:7時~12時

    :夕:14時~19時

*助産婦も致します。

ーーーーーーーーーー

 今日は朝からボロボロだった看板を

新しい物に作り変え、

院内へ戻り朝食の支度、

先生には毎朝同じな、

蜂蜜パンとたっぷりなミルク。

2個の目玉焼きと、

適当な野菜スティック。

私はステーキをほぼ生に焼き、

日に1食朝だけ食すが、

私が喰う所を見ると

胸焼けがするらしいので

先生はキッチン。

私は待合室でがっつくから、

ここはいつも油臭いと言われている。

お給料は無い。

なんでもするからと

住まわせてもらい、

一応まかない付き

(自分で作ってるが)

先生の知識を全部、

知ってる事なら

何でも教えてくれという

取り決めで今まで来ている。

私は女医と同等の技術を持つ

者になりたいと妄想していたが、

そんな事は無理な話。

あと数ヶ月で18になる。

この土地では大人になる歳なんだそうだが、

誕生日が来たら医院を

出て行こうと思っている。

こんなに長く人と接するのは初めてで、

危険でもあるからだ。

だが、こっそりこの街から

出て行こうと思っているものの、

さすがに気が引けるが、

恩や情が移りすぎている…

私はただの化け物…

初めて喰った男の味が

今も口に残り

そして今は、

先生が気になっている、

遺体損壊事件を

少し調べたいと許可を貰い、

週に1日の休みを使い、

王宮図書館で調べたりしている。


「お前の見立てが知りたい何か、

 なんでも良いから発見があれば

 聞かせてくれ」

 先生に言われ、

この事件は過去12年に渡り

同様の事件がふたつ、

酷似した事例がひとつ。

被害者はいずれも若い女。

年齢も皆同じ。

その時の検視のカルテを持ち出し、

医師は絵も上手くないとやっていけないのかと

唸るほど上手く描けている、

遺体の状態を模したスケッチが

別紙で添付され、

全てに犯人は大型の獣?とメモが書かれ、

人の手による犯行ではないのは明らかで、

大きな噛み傷、

「大き過ぎ…稀に見る大型種?」

 左肩から喰われ始め、

心臓を持ち去られたのか

喰われたのかは、

現場にその部分は残っていなかった為、

判断は不可能。

だが十中八九喰われたはずで、

『そんな一番美味いとこ

 残すわけ無い…』

 被害者の二人はまったく別の場所で

同じ方法で殺害され

4年越しの犯行に、

連続殺人だと見なされないのは、

3件目の状況に変化が見られ、

模倣犯かもと言われたから。

「被害者たちにまったくの因果関係ナシ。

 こんなの狼か熊か虎でしょ?

 獣で良くない?

 なんでハテナマーク?」

 なぜ獣の仕業と断定出来ないのか

先生に聞くと、

「場所だよ。

 2+1件とも街の住宅地で

 いきなり獣がぁああああ

 襲ってこれるかぁああああ?

 個人の部屋へこっそり入ってガブリ…

 あり得ない。

 誰にも見られずとか魔法か?

 だから未だにはてなマーク」

 先生は大好きなウィスキーを

チビリチビリ、

タバコを吹かし、

酔っぱ顔でお前も飲めや吸えやと、

誘ってきたが、

「そーいう事かー。

 もしかしたら魔物の仕業かもね」

「魔物?

 物語のウェアウルフの事か?

 すると敵対するドラキュラも

 そのうち出てきそうだな。

 あははははは」

「あ。私お酒飲めない。

 タバコは勘弁して毒だし。

 しかし4年に一回ってなんだ?

 判を押したような犯行…

 (ここは恩返しの意味も含めこの事件を

 一件落着させたら、

 先生の株も上がる?)

 んふふっ」


 私は事件の新聞記事や、

カルテから3件を見比べ続け

何度も記事を読み返し、

3件目の変化に注目。

傷口こそ前2例と同じだったが

 心臓は抜かれてはおらず、

『喰うのためらってる?

あぁそうかこれためらい喰いってやつかー?』

 プラス1の事件にはそれが

顕著に現れているのだと直感し、

3件とも同一犯の犯行で、

犯人は男で確定。

『男はとかく女を喰いたがる…し、

 殺害相手が皆若い女だからだ』

 犯人の目星の予感はあったものの

本当に付いてしまい、

『犯人は私!

 こんな神出鬼没な、

 悪魔の所業が出来るのは、

 同じ化け物しか居ない!

 やばいやばいね異性の同類とご対面?

 もしかして初めての蜜を堪能できる?!』

 相当気持ち良いと先生は言い、

「これは女に与えられた最高の特権。

 昔はあたしも蜜にまみれてたぞ?

 うひゃはははは」

 酔にまかせ赤ら顔の女医。


 私も好奇心旺盛なお年頃、

蜜に惹かれた事も認めるが、

だからと言って尻軽ではないと

断言できる。

それが証拠に私はまだキムスメ。

で、品定めに参ろうかと、

先生には申し訳なかったが

唐突に別れを告げ、

同類探しの旅に出ようとしてる

だが、

この時はまだ物見遊山な側面は強く、

獣道を歩いていた自分が、

街道という道の王道を歩き

街々を渡り、

人として振る舞えるのだ。

「おいおい行く宛あるのか?

 お前くらい出来るのはそうそう居ない。

 きちんと看護学校、

 いや医師大へ推薦する考え直さないか?」

「ありがとう先生。

 まぁあれです例の未解決事件を

 なんとかしたいなーと思って。

 解決出来たら先生も嬉しいでしょ?」

「えぇええええぁー?

 だからあんな熱心に…

 そんなの無理。

 王宮警察が何年も捜査して未解決。

 それに私のためとかは要らないぞ?

 一時のニュースにはなるだろうが、

 あぁそうだ!

 警察へ推薦するぞ?

 お前ならすぐ要職に付ける。

 女と言うハンデはその知性でなんとでも」

 どうしても引き止めたい先生に、

「まぁとにかく決めた事だし、

 終わったら戻ってくるって約束する…

 (あぁいけない出来ない約束しちゃダメ…)

 世話になったねまたね」

 別れを告げ、

この街から外へと続く大きな門へ

向かおうと玄関を出ると、

「そうかそこまで言うならきっと何か

 私など思いも寄らない

 犯人の目星があるんだろう?

 解決させたらさっさと帰って来い。

 待ってるからなー」

 女医にハグされ

ついでに厚い封筒を握らされ、

それは札束。

突っ返そうとしたが先生の涙に、

引っ込めた。


 だが私はすぐに後悔する事となる。

私が私の特性に気づきさいなまれた時、

私はためらう事無く、

人を喰い殺すだろうと

確信してしまう事になるのだ。

だがこれはもっと後の話。


 門まで歩くと掲示板が幾つかあり、

そんな物があるなど初めて知った私は、

つらつらと眺め、

城下町界隈の人々の些細なお仕事依頼、

一日仕事や時間仕事の募集。

家庭教師やりますや、

祭りへの出店志願者募集要項。

そして、

ーーーーーーーーーー

【化け物?!退治者募集】

 近年隣国との間の深い森で何名もの旅人が

 行方知れずになり、

 狼どもの犯行とはされているが、

 未だ謎は多く、

 問題解決は急がれなければならず

 今後一層の監視が必要。

 そこで、

 勇猛果敢な男子諸君。

 知性のある者!

 腕に覚えのある者!

 体力のあまりある者!

 集え警ら強化の為の人員たち!

 任務態度、

 能力によっては

 正規登用の場合も

 十二分にあり!

 連絡は王宮警察警ら課:

  ジナミル・オクマ隊長まで

ーーーーーーーーーー

『ななななななんだこれ!!

 なんだよこの化け物ってー

 こっちが熱心に資料読みしてたら

 以外な近場で同類に会える?

 まじかー

 どうしよー戻るか医院…

 いやまてよ、

 このままこれに応募…

 いや先生にお願いしててっとり早く

 警察官とやらになる?

 要職とかに付いたら身動きが…

 そうか…

 そうだな…

 この森に適当に、

 向かってみるのもありだが、

 警らにひっかかっても面倒…』

 その貼り紙、

応募要項の書かれた何枚もあるうちの一枚をむしり、

あーでもないこうでもないと思案していると、

「興味あるのかー?」

 男の声で肩を叩かれていた。

「あん?」

 振り向くと立派な

王宮付きの警ら員の制服を着た男。

腰のサーベルが眩しく光り、

「あぁ女?女かーまさか興味あるのか?

 女は駄目だぞ、

 募集要項のここにも書かれてる。

 な?ここに」

 男は私の紙ペラのそこを指していた。

「彼氏か旦那に見せてくれよなー

 じゃー良い一日を」

 私はムッとしてしまい、

その横柄な態度に実力を見せてやろうと、

すかさず彼の前に回り込み、

相手をハッとさせた瞬間、

その立派なサーベルを鞘から抜き、

その鼻先へ切っ先を向ける。

つもりだったが、

『駄目。目立ってはダメー!』

 そう思い返し、

地面に足を取られた振りですっ転んで見せた。

「な?大丈夫かお前」

 心配され、

頭をぼりぼりかく仕草でそこから離れ結局私は、

「戻ったよー」

 朝食中の医師と再会し、

驚く彼女のあんぐり開いた口から

焦げた目玉焼きがこぼれるのを見て、

新しく作ってやる前に、

そのチラシを見せ推薦してくれと頼むと、

先生はとても喜び、

すぐに推薦書を書いてくれた。

でも私は、

『この人食べたら医師になれる?

 んな訳ないよな』

 とも思っていた。


 話はトントンと進み、

私は警ら課の警護員となり、

一番下っ端の制服と使い古しのサーベルを貸与され、

治安を守る仕事に就くこととなった。

深いと言う意味のグーリンの森にある、

簡易拠点は左右2箇所。

私は街から遠い方へ配属され、

6時間交代でみっちりと

3名体制で街道を行き来し、

森の中へも分け入るルートを巡っていた。


 最後の犯行があってから数週間しか経ってないと、

数名集まった新人には、

これまでの事件の経緯説明があり、

話しているのはチラシにもあった

オクマ隊長。

掲示板で出会った男。

彼は私を覚えておらず、

女が来たと驚き追い払われそうになったが、

彼の上役から渡された推薦状を読み、

またびっくりしていた。

ーーーーーーーーーー

推薦状

  この者は両親はおらず

 気づいたら山の中。

 狼に育てられたらしいが真実は不明。

 出生ははっきりとしないが、

 頭脳明晰。

 運動神経抜群。

 料理の腕もすこぶる良く、

 当医院で雑用をこなす間、

 何百冊ある本を読破。

 読んだと言うのが本当か

 乱雑に本のタイトルを上げ、

 内容を答えさせたが、

 8割正しく、

 信じられないほどの才覚。

 ここからは余談になるが、

 この娘はきっと上位国民の落とし子。

 そもそもの血筋は良く、

 継承権を剥奪され滅ばされた一族の

 末裔ではと勝手に思っている。

  推薦人:Dr.フローレ・ハナ

ーーーーーーーーーー

「ふぅ~

 こんなすごい推薦文読んだの初めてだ。

 相当な才能があるみたいだが、

 激務に耐えられるか3ヶ月の試用期間中

 仕事っぷりをたっぷり見せてもらうが、

 試験と実技と諸々

 何も光るものが無ければ、

 首!

 男だらけの職場に女警護人の前例が無い!

 恋愛は自由だが、

 ここの外でならと言う意味だ分かるな?

 あと、剣や体術は未経験のようだから、

 これから毎日時間を設けてある。

 しっかり修練するように。

 自分の身を守り、

 犯人を追い詰める術が最も重要なのだ。

 では支給品を持ち宿舎ヘ向かい

 荷解きしろ。

 では解散!」

 隊長は仕事の続きをしようと書類を開いたが、

「それで犯人が化け物と言うのは、

 本当なんでありますか?」

 私は質問していた。

「ん?あぁそうか、

 そこの説明の詳しい事は、

 お前の直属の指導員に聞いてくれ。

 でもま、そうだ。

 痕跡が消えるから…化け物としか…

 だから女でも、

 その明晰な頭脳に期待してる。

 励めよ?」

「イエッサー」

 覚えたての敬礼をやって隊長の

テントを後にした。


 3ヶ月の試用期間は知っていたが、

それだけあれば対象と出会い、

さっさと追い出される作戦でもいいな?

と楽観的に思ってはいたが、

指導員に遺体はほぼ無いと言われ、

死者2名のの殺され方も、

あれとはまるで違い、

当ては大外れ。

『うぅうううううそぉおおおおお』

 心で泣いていたが、

『じっくりと確実にスキルを身に着け、

 いつか同類との出会いを楽しみに待つか…』

 それに、

 人間の戦闘スキルにも凄く興味があり、

 いつか見た剣劇の

 チャンチャンバラバラはカッコよく

 憧れがあり、

 これからの旅に必要だと判断したので、

 何を急ぐ事もない旅。

『会得出来るでここで頑張るか』

 そう考えるように思い直し、

尚且なおかつ、

『同類も私と同じ種なら、

 相当に強い…

 もっと強かったらやべー』

 こう思うようになり、

自分が死んでは元も子も無いのだ。

だが、

『お前の弱点は読めている。

 喰い残しの心臓。

 ためらうのはお前の弱さ…

 まだ完全に人の皮を被れてないんだろ?』


 こうして始まった私の本格的な仕事。

毎月お給金をもらい、

剣術、体術の訓練もしてもらえ、

王宮の法律の勉強は必須で、

3ヶ月の間に簡単な試験に通らないといけない。

飯はまずかったが、

初めて宿舎に案内された時、

男ばかりだと思っていたら、

小間使いや料理人の中に数名女が居て、

女性専用の宿舎もあり、

質素なテントだが守衛も居て、

私は入るなり、

「間仕切りがあるんだー」

 個室とまではいかないが、

入ってすぐの一つのカーテンをいきなり開けたら、

「そうよー男たちとは訳が違うのよー。

 その辺はさすが王宮直下の警ら課よね。

 しっかりしててありがたい」

 中に女が居て雑誌を読んでいたらしく。

「うわぁごめんごめん」

 一歩後退りしていた私。

「いいのよ?

 あなた初めての女警護人でしょ?

 噂になってる。

 もっとごっつい人だと思ってたよ。

 男どもの魔の手にハマらないでね。

 もっともそんな事する奴ら居ないけどね。

 バレたら鞭打ち10回と国から追放。

 あなたからの誘惑もだめよーん?

 あはは。

 あたしの名はマーブルで、

偉いさんたち専属のメイド。

 あんた名前は?」

「ナマエ…あぁ名前………」

 躊躇ちゅうちょしつつも正直に答えると、

「え?なんて………

 えぇえええそれ名前なの?!

 面白すぎる。

 で、どっちなの??

 赤い食べ物?赤ずきん?」

 毎回聞かれる質問に、

被る方と答えていた。


 私の名は、

レッド・フード(赤ずきん)。

あいつが私に名を付けれず

育てたおかげの話。

父だった者は赤ずきんちゃんと呼び続け、

私にはそれが当たり前で、

それで良かったのに、

人に聞かれるたび笑われ、

隊長はその名前に肩が震え必死に

笑うのを堪えてたし、

先生にはしつこく改名しろと言われけど、

レッド・フードで通している。

名前などに興味はない。

赤ずきんのままでいい…

なぜそうなのか?

あの頃に戻りたいのかもしれない。


つづく

読んでくれてありがとう。

面白かったら、

拡散・応援などよろしくね。

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