そのニ
にやにや。
やっぱり、キラパラを着ると気分アガるなぁ。一年ぶりかな。
去年までの衣装はアクセサリーが全身に散りばめられてて、ブレスレットは大きいし、スカートからハート型のチャームがいっぱいぶら下がってるし、取り回しが大変。
その代わり、キラキラでカワイイ。
服の素材はサテンやビニールとかで、スカートやパレオは傘に使うのと同じ素材のビニールだから、重かったし、通気性も無かった。
でも、カワイイ。
今年度からシリーズは新番組になり、登場人物と共に衣装も変わった。
ワンピーススタイルの衣装の服地はサテン主体になり、全体的に軽く、動きやすくなったように感じる。アクセサリーも数は減ってるみたい。
でもその代わり、キラパラシリーズの必勝ギミックの電飾は大幅マシマシ。スカートを彩る何層ものフリル、マスクの上に輝くリボンやティアラ、そして何と言っても目立つのは、背中に生えた羽!
これらのパーツを縁取るように、材料を惜しまず付けられた電光素材は鮮やかに光を放つ。会場の照明を暗めにすると輝きが増し、天使の羽があたし達の背中に浮かび上がる。
衣装を発光させるために、あたし達の背中には電源が積まれている。これが重いし、熱を持つ。もちろんきらびやかな服の内側に隠してあるから、熱は体内にこもる。
ついでに光るフリルの一部には、しっかりビニール製が踏襲されてたりする。やっぱりこの衣装、暑いし重いし動きにくいし、着るのはとっても大変。
それでも、キラパラになれるのは嬉しい。だって、
カワイイから!
——
嬬恋さん、楽しそうだなあ。
私ときたら久々の着ぐるみ操演で、そんな余裕無いのに。
普段の私はキャラクターショーのスタッフの方をやっている。イメージ的には運転手兼マネージャーとかディレクターとか、カッコ良く言うとそんな感じの仕事。会社ではこの職種はクルーリーダーとか呼ばれている。
一方でキャスト、つまりスーツアクターとしての経験は浅い。時々、急病などで出演や出勤が出来なくなった子の代役をすることはあったけど、最近はうちの会社にMCをやれる人が不足していたので私が「司会のおねえさん」役を兼ねることが多く、MCがある以上はキャストの代わりが出来なくなった。
ところが去年の秋、MCも出来るキャストの子がうちに加わった。彼女は以前にキャストをやってた子の大学の後輩で、アナウンス研究会所属なので声の仕事を経験したいというのだ。ちなみにその先輩は現在プロのアナウンサーである鹿沢志保さん。
プロのアナウンサーを多数輩出している名門のアナ研出身だし、さらに本人の努力もあり、MCの腕はかなりのもの。
と言うわけで、私がMC兼任クルーリーダーを無理にこなさなくて済むようになった。
ところで、数年前からうちの会社は、キャラクターショーの受注はピュアピアシリーズのみに絞っている。私たち社員の中には様々な作品を手掛けたい気持ちもあるけれど、様々な作品の様々な役を演じられるキャストが不足している。
もっとも、ショーではなく、単体もしくはスポット的な仕事は大歓迎。ゆるキャラ・マスコットキャラはもちろん、いわゆる普通の動物ぬいぐるみもOK。
アニメのキャラクターについても、単体でのサイン会などは今も積極的に受注していて、去年から増えているのがピュアピアと並ぶ女の子向け人気コンテンツのキラパラシリーズ。
これはアイドルをモチーフにしたゲームから始まったメディアミックス作品。ピュアピアとは違って少人数だし、関連企業が参加するイベントでの出演が主なので、衣装一式はそちらの管理下。つまりキャストは着る準備だけしておけば、ほぼ手ぶらで電車移動でも構わない。
その代わり、公式ということで高いクオリティが求められるし、衣装には惜しみなく高級な素材を使っているぶん、動きやすさは容赦なく犠牲にしている。
また、キャラクターの一挙手一投足に統一性を持たせるため、原則「中の人」は専属制になっている。
専属スーツアクターをつけることは、一点もののキャラクターではよくあること。このメリットはなんと言っても、そのキャラクターを演じるスペシャリストが育つこと。
一方で専属のスーツアクターになると、それが本業のようになってしまうので、学生アルバイト主体の我が社がそれを請け負うのは難しい。今回そこを何とか、と拝み倒されたのは他でもない、キラパラ操演の経歴がある嬬恋さんのおかげでもある。
キラパラの着ぐるみは、一昨年から登場した。これまでキラパラを演じるのは関連企業の社員であることが多かったが、それはかつて新入社員に過酷な研修を課していた頃の名残りらしく、実際にそういう意味合いで新人がマスコットなどの着ぐるみを着るという慣例は多くの会社にあるらしい。
しかし、キラパラは本当に歌ってる体で曲を披露することもあり、高度なスキルが要求される。だからそういう時は都度都度、主にダンサー出身のアクターに依頼して入ってもらったりしていたそうだ。
当社に依頼が入ったきっかけは、ダンサー出身のキャストを多く抱える同業他社と予定が折り合わず、先方の担当者が踊れるスーツアクターを他で探した末にたどり着いたことから始まる。その後、より確実に人員を押さえられる当社への発注は増えていった。
そして新シリーズのスタートを機に、専属のアクターを付けようということになり、それには経験者が良い、さらにスケジュールも押さえやすく、スキルもあるという点から、嬬恋さんに白羽の矢が立った。
ところが、これまでのような新入社員に試練を与えるような研修が運営会社の方で廃止となり、嬬恋さんの相棒が居なくなってしまった。
そのため、当社からもう一人キャストを派遣することが求められたのだが、学生バイト主体でキャストを組んでいるウチとしては難しく、強いて言えば正社員でかつ着ぐるみ操演の経験がある私が適役、という結論に至った。
ところで、嬬恋さんは派遣社員をしながらウチの会社でアルバイトもしていた。そうなると、派遣の仕事とキラパラとしての出番が重なったりしないだろうか? との懸念もありそうだが。
大丈夫。彼女は今年からスーツアクター専業になったから。




