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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
19.サキュス沖海戦 エリオvsサラサ

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その10

「艦隊陣形を維持せよ。

 各艦の距離を保て!」

 撃沈されて、反撃態勢に入ろうとした艦隊を、エリオが制した。


 味方がやられたのだから、頭に血が上らない訳がなかった。


 だが、エリオはそれを制した。


 直属艦がやられたのだから、すぐに反撃する選択肢もあった。


 それをやらない所が、エリオらしい。


 反撃をして、グチャグチャになるより、数的有利を活かして、秩序だった戦いをする事を選択した。


 冷静な判断といいたいが、エリオはエリオで、自分の中に渦巻く感情を抑えていた。


 まあ、珍しい事である。


 とは言え、子飼いの部下がやられたのだから、いくらエリオでも頭に血が上るだろう。


 しかし、その感情とは違う事を選択する所が、やはり、エリオらしい。


 4番艦が浮いたと同時に感じたエリオとサラサ。


 なら、何故、撃沈されたのか?


 その理由は、エリオにはよく分かっていた。


 指示を出そうとしたが、間に合わなかったのだ。


 これは、攻め手の有利さが出た結果である。


 この時、サラサの方は、砲撃する相手を変えるだけなので、スムーズに行動できた。


 一方、エリオの方は、艦隊が乱れていたので、交通整理を行わないとならなかった。


 しかも、それにより、艦隊運動が更に乱れる可能性がある。


 それを抑えつつ、指示をしなくてはならない。


 かなりの難易度だった。


 相手がサラサではなければ、指示する時間があっただろう。


 もしくは、あの程度の綻びは見逃してくれただろう。


 その差が、結果として表れたのだった。


 そう言う事なので、これは、自分のミスによって陥った事態だと認識していた。


 その為に、エリオは一層冷静になる必要性を感じていた。


 そして、戦い始めて見て、サラサは予想以上にやっべーヤツだと思っていた。


 それはそれとして、反撃したくてウズウズしながらも、エリオの命令により、エリオ・アスウェル艦隊は秩序を保っていた。


 そして、この行動により、サラサ艦隊の攻撃を去なし切っていった。


 この辺は、エリオの優れた統率力なのだろうか?


 それとも、クライセン艦隊全体の変態性なのか?


 よくは分からない。


 とは言え、サラサ艦隊の攻勢はまだ続いていた。


 エリオ・アスウェル艦隊が転針した為、直線的に突撃する事は出来なくなった。


 それでも、鋭い出足で、依然として、中枢部へ向かってきた。


「よし、敵艦隊最前部の2列目、向かって右側の艦に攻撃を集中!」

 エリオはタイミングを見計らって、そう命令を下した。


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