その11
「敵艦1隻、撃沈!
敵総旗艦艦隊の艦です」
バンデリックが、サラサにそう報告した。
うぁっー!!
水兵達から歓声が上がった。
無理もなかった。
強く、忌々しい敵をやっつけたのだから、士気が高揚するのも無理がなかった。
「調子に乗るな!
敵の反撃を喰らうわよ」
サラサは、注意を喚起した。
そして、その表情は、何故か強張っていた。
戦果を上げたのだから、喜ぶなり、安心するなりしてもいい。
これまではそうだった。
だが、サラサには、これは困難な戦いの幕開けに過ぎない気がしてならなかった。
このままでは済まないと。
エリオも感じていたが、サラサの方も戦い始めて見て、思っていた以上にとんでもないヤツだと感じていた。
損害が出ても、微動だにしない。
いや、それどころか、敵の動きがスムーズになった気がしてならなかった。
サラサの思いに、すぐに艦隊の面々は反応し、気を引き締め直した。
「艦隊陣形を維持したまま、取り舵!!
転針した敵艦隊に対して、攻勢を続行!」
サラサは、気が引き締まった自分の艦隊に対して、命令を下した。
ここで、攻勢を止めると、反撃を喰らいかねない。
なので、命令は理に適っているものである。
ただ、相手はエリオ。
一方的に打ち破れる相手ではない。
したがって、慎重にかつ、大胆に攻勢を続ける他なかった。
ヒューン、ボッカーン!!
取り舵を取り、敵中枢部へと攻勢を開始した時、サラサ艦隊の1隻が集中他を浴びて、あっさりと吹き飛ばされた。
……。
艦隊の面々が茫然自失する中、
「7番艦、撃沈されました!」
とバンデリックがなるべく事務的な口調でそう報告した。
こんなにあっさりと被害を受ける程、陣形が乱れていた訳ではない。
そんな事より、こんな簡単に撃沈された事は未だかつてない。
艦隊に動揺が走った。
「分かっている……」
サラサの反応は、バンデリックが思っていたのとは違って、物静かだった。
だが、決して、落ち込んでいる訳ではなかった。
と言うか、性格上、落ち込む事はないだろう……。
ある意味、サラサの残念な所である……。
(選りに選って、一番叩かれてはいけない所を痛打してきた)
サラサの表情は悔しさで一杯だが、極力表には出さないようにしていた。
7番艦の位置は、攻勢に出る為の要という位置だった。
なので、撃沈されて出来た穴を放っておく訳には行かなかった。
「旗艦を中心に、一旦各艦の距離を詰めて、陣形を立て直す」
サラサは、悔しがりながらも、ジッと耐える事を選択したようだ。
要をあっさりと突かれたのだから、一旦陣形を立て直す必要があった。
このまま攻勢を続行したら、空いた穴から艦隊をバラバラにされかねない。
それが分かっていたので、サラサはジッと我慢する他なかった。
その為、サラサ艦隊の出足が止まった。




