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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
17.急変

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その2

「で、どうでした?」

 バンデリックは、興味深げにサラサに聞いてきた。


 2人は既に艦隊に戻っていた。


 そして、その艦隊は既にモルメリア島を離れていた。


 間抜けた形で、見つかってしまったので、離れた格好だった。


 追撃はないとは思われたが、一応念の為であった。


 この辺は、いくら間抜けていても、流石と言った所だろう。


 でも、まあ、それより、サラサが目的を達成したと判断した為に、帰路に就いていたのだった。


「『どう』って、何の事よ?」

 サラサは、怪訝そうな表情を浮かべた。


 とは言え、晴れ晴れとした気持ちになっていたのはよく分かった。


 まるで、セッフィールド島沖海戦の不完全燃焼な気持ちなどなかったようだった。


 エリオを追い回して、邪魔して、何をしているかを把握できたので大満足と言った所だろう。


 追い回されるエリオにとっては迷惑この上ない事だが、サラサにとってはよいストレス発散になったのは明らかだった。


「ですから、クライセン公と直接会った事ですよ」

 バンデリックは、サラサがどう言う反応をするのかが、本当に興味津々だった。


 エリオは妙な行動を取っていたが、それ故に、バンデリックは、シンパシー的なものを感じていた。


 それは、何だか分からないが、自分と同じ境遇にいるのではないかというものだった。


 まあ、傍からエリオとバンデリックをずっと観察していれば、それは間違いではない事はよく分かる事だった。


「えっ?何、そんな事?」

 サラサはあからさまに驚いていた。


「『そんな事』って、閣下……。

 直接見たいと仰っていたじゃありませんか!

 だから、危険を顧みず、島に上陸したのではなかったのですか?」

 バンデリックは、思わぬ反応に落胆した。


 そして、それ以上に、反発したくなった。


「うん、言ったけど?」

 サラサは、また怪訝そうな表情を浮かべていた。


 明らかに、コイツは何を言いたいのか、分からないと言った様子だ。


「なら、直接会って、何か、感じるものがあったのでは?」

 バンデリックが、感じるものがあったので、期待しながら聞いてみた。


「えっ?

 『直接見る』との、『直接会う』のは、全然違う意味でしょ?」

 サラサは、訳分からないと言った感じで、逆に聞き返してきた。


「えっ?」

 今度は、バンデリックの方が、訳分からないと言った表情になった。


 期待を裏切られただけではなかった。


 確かに、「見る」と「会う」では意味が違う。


 どういう事だろう?


「だから、あたしはあいつが何をしているかを直接確認したかっただけで、別に、会いたかった訳ではないわよ」

 ???顔になっているバンデリックに、サラサは説明を加えた。


「……」

 バンデリックは、絶句してしまった。


 理解できないからではなく、はっきりと理解したからだ。


「別に、やっている事が分かればいいだけで、それは会わなくてはならないという事には全く繋がらないでしょ」

 サラサはダメ押しの説明を続けた。


 がーん……。


 何故か、バンデリックは、衝撃を受けてしまった。


 とは言え、この事はエリオとサラサには共通認識があるのかも知れない。


 お互い、要注意人物だとは思っているが、だからと言って、直接会って話し合っても仕方がないと考えていた。


「それだったら、何も危険を冒して、島に上陸する必要はなかったのでは?」

 バンデリックは、衝撃を受けると共に、気付いてしまった。


「そこは、『流れ』よ、な・が・れ」

 サラサは、そう言うと年相応の悪戯っぽい笑顔を浮かべた。


 とても可愛かった。


 とは言え、到底、それで誤魔化……、いや、納得できるのではなかった。


「閣下、それはあまりにも……」

とバンデリックは、苦言を呈そうとしたが、

「細かい事はいいのよ!」

と口を挟んだサラサは、最後まで苦言を言わせなかった。


(細かいって……、さっきは、「見る」と「会う」の違いをご指摘なさってのではないですか!)

 バンデリックは、呆れていた。


「それより、バンデリック……」

 サラサは、急に険しい表情になった。


 今までの話の流れを完全に断ち切られる格好になった。


「はい……」

 バンデリックは、渋々そう返事をする他なかった。


 主がそう言うのなら、無念だが仕方がない……。


「あたしの呼び方を間違えたわね!」

 今度はサラサが詰問する番だった。


「えっ?」

 バンデリックは、呆気にとられた。


 今の会話では、禁句は言っていない筈だ。


 だが、ジッと睨み付けられている。


(あっ、あの時……)

 バンデリックは、どの場面の事を言われているのかが分かると、暗澹たる気持ちになった。


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