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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
17.急変

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その1

 エリオ一行は、温泉に入らずに港の館に戻っていた。


 島に来て、最大の危機を無事脱した感があったマイルスターだったが、どうにも腑に落ちない点があった。


 宿命のライバル同士が対面して、全く盛り上がらなかった点ではない。


 ああ、物語的には最大の欠点かも知れないが、それは、彼らが与り知らない所である。


 まあ、それはともかくとして、エリオの妙な雰囲気が全く抜けていなかったからだ。


 サラサとの遭遇は、想定しうる中で、最大の懸念事項だったと思われた。


 それを無事に抜けた事により、もう懸念事項はないと感じていたからだ。


 その辺を整理する為に、マイルスターはエリオに聞いてみる事にした。


「閣下、島に来てからずっとご気分が優れないご様子ですが、何か気掛かりの事でもお有りですか?」

 マイルスターは、いつもの柔やかな口調だが、エリオをしっかりと見据えて聞いた。


「ううん……」

 それに対して、エリオはやっぱり煮え切らない様子だった。


 エリオ自身、その懸念が言語化できるのなら、すぐに手を打つ覚悟はあった。


 だが、言語化できないので、対応のしようがなかった。


 それに、この気持ちは、島に来てからではなく、その前からだった。


「ワタトラ伯との遭遇を懸念していた訳ではないのですか?」

 マイルスターは、取りあえず、思い付いた事を言ってみた。


「えっ?あ?それは、懸念事項ではないよ」

 エリオは、意外な事を言われたという反応だった。


 だが、それ以上の反応はなく、意外に素っ気なかった。


(あんなにビビっていたじゃあ、あ~ありませんか……)

 サラサとの遭遇が何でもなかったように言い切ったエリオに、マイルスターはいつも通り呆れた。


 とは言え、それについては、今は横に置いておこう。


 話はシンプルにしていかないと……。


「我が軍の哨戒網を突破され、あまつさえ、島に上陸を許したのですよ。

 これが懸念事項と言わずとして、何を懸念事項と言うのですか?」

 マイルスターは、和やかながら、エリオを詰問した。


「ああ……」

 エリオの方は、相変わらず、それは些細な事と言う態度を変えなかった。


「か……」

 マイルスターは、尚も畳み掛けるように、詰問を続けようとした。


 だが、エリオに制された。


「確かに、我が軍の哨戒網は優秀だ。

 世界一だと自負してもいい。

 だが、完璧なものなんて、存在しない。

 特に、この島の周辺は人員不足だ。

 突破されても、仕方がない面がある」

 説明するエリオは、いつも通りに戻っていた。


 それを見て、マイルスターは安心はした。


「しかし、閣下、敵艦隊をティセル沖で補足できなかったのですよ。

 かなりの問題かと思われますが……」

 マイルスターは、安心しつつも尚も言わなくてはならなかった。


「いや、それは仕方がないんじゃないか。

 水兵達の能力にも限界がある訳だし」

 エリオは、マイルスターと違って、やはり、深刻に受け止めていなかった。


「……」

 マイルスターは、辺りを伺った。


 またしても、水兵達の能力に触れていたからだ。


 この場にいたら、またまた緊張関係が増大する事になっただろう。


「ああ、人員数から無理があるという事だよ」

 エリオは、珍しくそれを察したように、補足した。


「ならば、増やすのはどうですか?」

 マイルスターは、ごく簡単な提案をした。


「今の財政、慢性的な人材不足では、それは自殺行為だよ」

 エリオは、溜息交じりにそう言った。


 エリオ自身、やれるなら、とっくにやっているという認識なのだろう。


(流石ですな……)

 マイルスターは、本来感心する所を、心底呆れていた。


 正に、真の稀代の策略家だと感じた。


 全方位で見えすぎている気がしてならないからだ。


「で、今回の伯との遭遇は織り込み済みという訳ですか?」

 マイルスターは、呆れた気持ちを引きずりながらそう聞いた。


「ああ、あれはびっくりしたね」

 エリオは、苦笑する他なかったようだ。


「へぇ?」

 マイルスターの方は、あまりにもエリオが素直に気持ちを述べたので、目が点になっていた。


 それに、今までの流れでは、当然、予測は可能だったと言う流れの筈である。


「この件で、あの銀髪少女は、考えていた以上に、行動力がある事が分かったよ。

 それにしても凄いよね、2人で敵地に乗り込んでくるのだから」

 エリオは、変な感心の仕方をしていた。


「はぁ……」

 そんなエリオに対して、マイルスターは生返事をする他なかった。


 そして、あれ以上にヤバい事が起きそうな事に対して、戦慄して待つ他ない事を悟らざるを得なかった。


 問題は、まだ何も解決していなかった。


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