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命懸けの反撃

「いやー、訓練せずに勉強してていいなんて最高の環境だな」


Fクラスでは商売をするために必要な会計の付け方や税金のこと、さらには基礎的なポーションなど薬の作り方までも習うことができる。


「ただ、それだけで満足する僕はではないんだな」


俺は授業が終わった後も、学園の図書室に入り浸り、商売をする上で必要な知識を付けていく。

商売をするためには、幅広い知識を持っていることが重要だ。


「今日は歴史でも学んでおくか」


知識は商売のアイデアを出すために役立つだけではない。

仲間作りのためにも重要だ。

例えば、王国の外からも学びに来ている人や、それこそ人族以外のエルフやドワーフも学びにきている。

特にFクラスにいる人は俺にとっては注目株だ。

武力がある場合は、冒険者や決闘士として働くことが多いが、Fクラスの生徒たちは各々の家業やギルド職員、それこそ商人など幅広い職に就くことになる。

その生徒の活躍の幅の広さが俺の商売にも役に立つはず。

そのためには、それぞれの種族や王国の歴史を学び、その人たちが大切にしている価値観や文化を理解することが大切だ。


「あれ?ここの歴史書借りられちゃってるのか」


俺が読もうと思っていた歴史書のところがぽっかりと空いている。

この学園で俺以外にも真面目に勉強してるヤツがいたんだな。

今日は諦めて別の本を読んでいくことにした。

本を持って席につくと、目の前にいた金髪の女の子が読んでいる本が目に止まった。


「あ、それ……」

「……?」

「す、すみません。僕も気になっていた本だったので」


その子はちょうど俺が読もうと思っていた歴史書を読んでいた。


「……読む?」

「ああ、いや、大丈夫です!」

「……」


親切にも譲ろうとしてくれたが、横から取るのは申し訳ない。

しかし、断ったにも関わらず、その子は俺のことをじっと見つめ続けている。

何か言いたいことでもあるのだろうか?


「あの……、あれ? もしかして同じクラス?」

「……そう」

「やっぱりそうか。どこかで見たことあると思ったんだよね。僕はライアン。よろしく」

「……ミーシャ」

「ミーシャは歴史が好きなの?」

「……好き、ではない、けど、勉強する」


まあFクラスだからな。

好きじゃなくてもやらなきゃいけないこともある。

ただ歴史を学んでも仕事には結びつきにくいから、趣味以外で読む人は稀だ。

もしや、俺と同じ目的か?


「なんだか仲良くなれそうな気がするよ」

「…………ナンパ?」

「ち、ちが!」

「そこの人たち静かにしてくださーい」


思わず大きな声を出したら怒られてしまった。

もし同じ目的なら、ぜひとも一緒に商売をする仲間になってほしいもんだ。

まあ会話は教室でもできるか。

これ以上怒られないために俺たちはそれぞれの勉強に集中した。



「さて、今日はどうするかな。あの子を仲間に誘ってみようかな」


次の日、登校してみると何やら教室が騒がしい。

俺が絡まれて揉めていた時も騒がしかったが、今はその比ではない。

悲鳴や罵声が飛び交い、モノが壊される音が響いている。

果てには目の前の窓ガラスを突き破って椅子が飛んできた。


「だから、どうして俺たちがテメエらに従わなきゃなんねーんだよ!」


中を覗き込むと、俺に突っかかって来ていたボウズ頭の男が、知らない顔の男に詰め寄っていた。


「さっきも言ったが、お前らは対校戦で役立たずなんだから、武力以外で奉仕する義務があると言っているんだ。税金だよ税金」

「んだとぉ?」

「今日のところは1人1万ゴールドでいい。早く出しな。これ以上怪我人は出したくないだろ?」


見れば教室の至る所にうずくまって痛みを堪えている生徒がいる。

コイツらにやられたということか。

不当に金を取られるのは商人を目指している俺としては容認できないことだ。

何か言ってやろうと思ったが、俺より先にそいつらの前に金髪の女の子が向かい合った。

ミーシャだ。


「ほう?金を持ってきたか?さあ出しな」


しかし、ミーシャは動かない。


「おい、なんだ?早く出せよ」

「……税金じゃない」


ミーシャはそれだけ言って男たちを睨み続けている。

それを見かねた黒髪の女の子がやってきて、ミーシャの手を引いて下がらせようとした。


「まあまあ、ミーシャ、気持ちはわかるけどな。ここでそんなこと言ったってしゃーないやんか。それかやるんか?やったるんか?」


下がらせようとしているのか煽っているのかわからないが、ミーシャはそこから動こうとしない。

男がイライラしてきているのがわかる。

戦えないのに挑発しすぎだ。

どうする?ここで俺が助けに入るわけにもいかないし……


「はあ?それだけ言いにきたのかよ。ったく、俺らは男女平等だからな、力ずくでも出してもらうぜ」


男はミーシャの綺麗な金髪を掴んで、殴りかかった。


「……カウンター」


ミーシャの声の後に耳を疑うような破裂音が響いた。

続いて液体がビチャビチャと撒き散らされる音。

何が起きたのか誰にもわからなかった。

一瞬の静寂の後、悲鳴が響く。


「ぐああああっ!お、俺の腕がぁぁ」


殴った男の腕は膝から先がなくなっていた。

ミーシャのカウンターで壊されたのか?

それにしてもただの打撃でここまでの威力を出せるなんて……

しかし、それ以上に信じられない光景が目の前にはあった。


「……痛い」

「ああ!やった!やってもうたな!まー、やると思ってたけどな!いやー、ええでええで、ウチに任しときー」


カウンターを放った方のミーシャは肩まで腕がなくなっている。

自分の方がダメージを受けているじゃないか!

しかも、俺の目には致命傷に見える。

命をかけてまで、金を払いたくなかったのか?

さらに、知り合いらしい黒髪の女の子はどこか楽しそうな顔でミーシャたちに近寄っていく。


「さてさて、さすがに死人を出すのはアカンからなー。治癒魔法っと」

「……ん、ありがと」

「ああああああ、あ?お、俺の腕が、戻った?」


欠損部位の修復だと!?

それも2人同時にあんなスピードで行うなんて……

そんな神業、国家治癒魔術師でもできるヤツは限られてるぞ。

ん?そういえば、どこかで見たことがあるような……


それが俺と聖女リマの2度目の出会いだった。


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