クラス決め
この世界は武力こそが正義だ。
それは学生の世界でも変わらない。
そのため残酷なまでに明白なカーストがある。
「頼む頼む頼む、なんとかCには入りたい」
「ああああああ、ミスった……、Dかもしれん……」
「よっし! これはBは確実だろ」
聖ガレリア学園は、どんな学生でも入学できるが、実力でクラスが分かれている。
魔法でも剣でも何でも良いので自分の実力を示せる科目で実技試験を行い、その結果でクラスが決められる仕組みだ。
「おい、あれ!!」
「あいつか」
「本物見るのはじめて……!」
今年の試験会場には過去に例を見ないほどの観客がいた。
いつもであれば新入生の実力など、わざわざ見るほどのものでもないし、有力な生徒は入学前からその実力も知られているので見る必要もない。
しかし、今年は話が違った。
みんな知ってはいても自分の目で見たいと望んだ。
あの勇者の息子の実力が見れるのだ。
「では、次は1012番のテオ・ユニシスくん。前へ」
名前を呼ばれて、俺は試験会場の中心へと向かう。
試験方式は先生相手の模擬戦だ。
対戦相手の先生が自分の選んだ科目を得意としているとは限らない。
剣士相手に魔法で戦うこともあるし、その逆に魔術師相手に剣で戦うこともありうる。
模擬戦なので、どんな戦い方をしてもいいのだが、対戦相手の先生は生徒が選んだ科目に応じて、実力が出し切れるように考慮してくれる。
例えば、魔法の科目を選択していれば、詠唱の途中で邪魔をすることはないし、剣の科目を選択していれば、遠距離からの攻撃は行わない。
また、それだけのハンデがあって、ようやく先生と生徒の模擬戦が成り立つとも言える。
とはいえ、戦いながら分野の異なる科目の実力を正当に評価するのは難しいため、各分野の専門の先生たちが試験監督として、外からその戦いを観察して、最終的な判断を行うというやり方が取られている。
「えー、テオくんは科目を剣で申請してますが、よろしいですか? 貴方は魔法も優秀だと聞いているので、特別に変更してもいいですよ?」
対戦相手の先生は魔術師のようで、俺の剣の実力よりも魔法に興味があるらしい。
「おいおい、ターナ先生、そりゃないぜ。俺はコイツの剣を見に来てるんだからな」
「彼は体術も優秀だと聞いていますよ? それに変更するのはどうですか?」
「いや、槍も……」「弓も……」
試験監督の先生たちは皆こぞって自分の専門分野の科目を述べはじめる。
「あの、実は学園長から許可をいただいてまして、俺は科目に拘らなくていいと」
「「「おお!」」」
観客と試験監督の先生たちから歓声が上がる。
先生方の承認ももらえたようなので、さっそく俺は自分が持っていた剣に炎と氷の魔法を付与した。
「おお、いきなり複数属性の付与ですか!」
相反する二つの属性を付けたことに深い意味はない。
俺の技術が見たいようだったので、余興がてらやっただけだ。
なにせ今回の試験で、俺は圧倒的な実力を示す必要があるからな。
「では、行きます」
俺は大きく踏み込んでターナと呼ばれた先生に斬り込む。
通常は剣の実力を見るために、杖で受けるのが普通の対応だ。
しかし、ターナ先生は自らに強化魔法もかけて、思いっきり距離を取り、遠距離からの火球で攻撃を仕掛けてくる。
「剣の科目に拘らないってことは、こういう対応もありですよね?」
「いいぞ!やれやれ!」
「まったく、ターナ先生は性格が悪いことで……」
試験監督の先生たちは好き勝手にヤジを飛ばし始めている。
「ええ、構いませんよ!」
俺は剣を薙ぎ払いつつ、剣の先から火球を飛ばして応戦する。
その間も詠唱を続けていたターナ先生の攻撃の手は緩まない。
次々と火、水、土、雷、風とあらゆる魔法の攻撃が飛んでくる。
俺は自分の体術を見せるためにも、それらをアクロバティックな動きで交わし、飛んできた魔法の中から土のものを選んでターナ先生に蹴り返した。
ついでに、俺も避けながら詠唱していた魔法を展開する。
「これは!もしかして!」
俺の周りに7つの光の玉が浮かんでいる。
赤、橙、黄、緑、青、藍、紫
玉はその色を変えながら、ゆらゆらと漂っている。
「独自光学魔法波長同期光線破壊」
俺が開発した光学魔法シンクロ・アブレーション。
今までの光学魔法は暗闇を照らしたり、視覚を誤魔化すなど、補助的なものが多かったが、相手の弱点となる波長に同期させることで、光に攻撃力を持たせている。
光線は先生が放った魔法をかき消し、先生とその周囲の地面に降り注いた。
「あ、ぶなかったですね……」
先生は攻撃魔法を詠唱することを辞めて、代わりにバリアを張って身を守っていた。
しかし、ローブのあちこちが焦げていることから、完全には守りきれなかったようだ。
「このローブも高かったんですけどね。対全魔法加工が付いているので、なかなか魔法で破るのは難しいはずなんですが」
俺は他の技も見せようと、魔法で弓と槍を作り出して構えると、ターナ先生はバリアを解いて、手を挙げた。
「降参、というのも変ですが、試験終了です。これはみなさん文句ないですよね」
それを合図に割れんばかりの拍手と歓声が押し寄せる。
後日、試験結果が張り出された時、俺だけは欄外で「特Aクラス」と書かれていた。
「これでようやく学園生活が始められるな」
そうして俺はFクラスの扉を開けた。




