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パクられてからが勝負

「ちょっとこれ見て!」


アイナが勢いよく机の上に袋を叩きつける。


「これはウチらのではないなあ」

「偽物……ですか?」


俺たちが販売している洗濯袋そっくりの商品が売り出されたようだ。

今回の商品は特別な技術などは使っていない。

売れると分かれば真似されるのは当然だろう。


「仕方ないね。でも、だからと言ってやられっぱなしでいるわけにはいかないな」

「どうするの?殴り込みに行く?」


いやいや、コイツは何を物騒なことを言っているんだ……


「まずはブランディングをしっかりとやっていこう」

「……ブランディング?」

「僕たちはただ洗濯ができる袋を売っているんじゃないんだ」

「また変なことを言い出したわね。ただ洗濯ができる袋を売ってるだけじゃない」

「どういうことでしょうか……?」

「僕たちが洗濯袋を売ると、それだけ生活が豊かになる。例えば配給される服じゃなくてオシャレな服を着れるようになったよね。だから僕たちは"綺麗になる生き方"を売っていると考えることもできると思うんだ」

「なんや詭弁を呈されてる気がしてくるなあ」

「いつも思うけど、アンタの言うことは胡散臭いのよね」

「ひどい……」


でも、これがブランディングで重要なことだ。

僕たちが目指す方向性を決めると言っても過言ではない。


「……汚れが落ちるだけではダメなの?」

「この洗濯袋を使えば"もっと汚れが落ちる"と機能を売りにするのももちろんありだね。でも、魔法を付与したり高い技術で実現しても、それだけ高い商品になっちゃうんだ」

「……高いのはダメ」

「うん、僕たちが目指すのはその方向じゃない。それに"綺麗"であるための武器も僕らは持ってるんだ」

「武器なんか持ってたでしょうか?」

「君だよ、カーティ」

「えっ!?私ですか?」

「カーティが武器……投げてぶつけるには柔らかすぎるけど、身軽だから振り回して使うことはできるかも……?」


いやいや、だからなんでアイナは物騒なことを言い出すんだ。

カーティが怯えてるじゃないか。


「ごめん、そういう意味じゃないんだ。僕たちの洗濯袋にはカーティが刺繍を付けてくれてる。これは簡単に真似できるものじゃない。アイナが持ってきた袋も見てみてよ。無骨でただ水が入って洗えればいいという商品だ。これなら僕たちの競合にはなり得ない」

「私の刺繍が……」


ただの趣味だと思ってた技術が商品を売るための武器となる。

これも誰でも活躍できる世界の良いところだ。


「うーん、せやけど実際に売り上げは落ち始めてるからなあ」

「ブランディングを完成させるためには、僕たちがちゃんとアピールしないといけないんだ。ただ便利なだけじゃない。今より綺麗な生活ができるってことがまだ伝わってない」

「そうか!またアタシの出番ね。冒険者のみんなに伝えてくるわ!」


お、今回は察しが良いな。

でも、惜しい。

そのやり方だと上手くいかない。


「今回は直接売り込むことはしないんだ。僕たちが押し付け過ぎてもブランドとしてのイメージは上手く広がっていかないからね。僕たちが言わなくても自然と広がっていくのが理想なんだ」

「もうじゃあどうすればいいのよ!」

「そこで僕たちが持ってるもう一つの武器を使おうと思う」

「まだ私たちは武器を持ってるんですか!?」

「今度は誰?アタシ?それともまたカーティ?」

「みんなだよ」


幸運にもこのビジネスに集まってくれたみんなはとても"綺麗"だ。

活発なアイナはまさに冒険者として理想といえる"綺麗さ"を持っている。

リマもお淑やかで清楚な雰囲気を醸し出しているし、とても"綺麗"だ。

……口を開かなければだが。

ミーシャも"綺麗"な金髪からは高貴さすらも感じるし、カーティも獣人としての可愛らしさと"綺麗さ"が見事にマッチしている。


「僕たちがターゲットとするのは"女性冒険者"だ。やっぱり女性の方が綺麗でいたいという気持ちが強いし、臭いにも敏感でしょ? だから、みんなが冒険者として僕たちの洗濯袋を使って"綺麗な生活"をするのを見せつけるんだ」

「なるほど、ウチらのファンを増やして真似させるっちゅうわけやな」

「私にファンなんて付くでしょうか……」

「安心しとき!実はウチの得意技やねん」


そうか!

聖女として生きてきたリマにとっては、ブランドとして仮面を付けることに長けているな。


「じゃあ、リマに任せちゃってもいいかな?」

「かまへんかまへん。どーんと任せとき!」


俺以外のみんなはどことなく不安そうな顔をしている。

みんなは聖女としてのリマを知らないから、こんな親父丸出しのリマに任せるのは不安だろう。

だが、逆に言えばそれだけの大きな変化も期待できる。

……はずだ。


「さーて、ほんじゃギルドに行きますか」

「も、もうですか? まだ心の準備が……」

「さあさあ、そんなん待ってられんで!ウチらの若さはこの瞬間も消費されていってるんや!」

「嫌な言い方ね……」


大丈夫……だよな?



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