生徒会長
「あのー、すみません……」
俺は改めてCクラスへとやってきた。
しかし、今回はテオとしてではなく、Fクラスのライアンとしてだ。
「あん?なんだ?」
「あ、あの、Fクラスの代表としてお金をもってきました」
「なんだ、急に素直になったな。最初からそうしとけばいいものを」
「は、はい。では、失礼します……」
Fクラスの代表と言ったが、それは嘘だった。
この金は俺が商人としてやるために貯めていた資金の一部だ。
こんなところで使うことになるのは癪だったが、作戦のためには仕方なかった。
金を渡した後、俺はテオの姿に戻り、カイルの元へと向かう。
「どうだ?」
「動きはまだないな」
俺たちはCクラスのグラッドを見張っている。
資金が集まったので、それを首謀者に渡すはずなので、そこを押さえようという作戦だ。
「しかし、やけに早く金を持って来させられたな」
「……まあな」
「さすが、特Aクラス様だぜ」
その作戦を行うためには、金が集め終わっている必要があった。
しかし、Fクラスはまだ反発しようとしていたので、自分の金で早いとこカタをつけてしまうことにした。
カイルとしては、俺が出向くことで流石のFクラスも反発することを辞めるだろうという狙いがあったのだが、そういう武力を後ろ盾にした行為は極力したくなかった。
「おい、動いたぞ」
グラッドは俺が渡した金が入った袋を持って教室の外へと出ていった。
それなりの金額が入っているはずだが、何食わぬ顔で校舎を進んで行く。
「おい、アイツが入った部屋見てみろ」
「生徒会室か……」
「くそ、上級生とことを構えるのはまだ避けたいな」
生徒会はこの学園でも有数の実力を持つ上級生で構成されている。
中でも会長のアーロン・アーレントは俺と同じ特Aクラスで、時代が違えば勇者になっていただろうとまで言われている。
「ああ……だが殴り込みに行くわけじゃない。まずは話をしに行こうじゃないか」
「話ねぇ……」
カイルはまだ心が決まりきってないようだが、構わず生徒会室に乗り込んだ。
中には金を持ってきたグラッドと、あのアーロン会長がいた。
「君はテオ君だね?何か用かい?」
アーロンは穏やかな表情で俺に声をかけた。
「その金について話を聞きたいんですが」
「ああ、この金を取りに来たのかい?はい、どうぞ」
「ん?」
何故か俺に金を渡そうとする。
「いや、そもそもその金が何かを聞きに来たんですが」
「これは君の学年を強くするための金だろ?なら使い道は君が決めていいんじゃないかな」
「でも、俺が集めた金じゃないです。もしかして、この金は貴方の指示で集めたんですか?」
「いや、僕ではない。でも、彼は僕のところに持っていくように言われたらしいね」
「あ、ああ。手紙で生徒会室に持っていけと言われたぜ」
グラッドも直接指示を出した人物のことは知らないらしい。
手紙にも差出人の名前は書かれていなかった。
少し怪しいとは思っていたが、内容の筋は通っていたし、実行しないことで、後で潰されるリスクの方が高いと考えて、指示通りにやることにしたようだ。
「君の指示ではなかったとはいえ、ゆくゆくは必要になることだ。それがここまでの早さで実行できたことは褒めてあげてもいいと思うけどね」
確かに武力が低い人が上のクラスを支えるこの仕組みは対抗戦のためには、とても効率が良いやり方だ。
だけど、俺はこんなやり方は容認したくない。
「この金は使いません」
「そうかい?じゃあ僕たちで使い道を考えて1年生に還元しようか?」
「いえ、全部元の人たちに返そうと思います」
「……ふむ、君は無慈悲だね」
「無慈悲?」
何故金を返すことがそう表現されるのだろうか。
むしろ慈悲深い行為だと言われてもおかしくないはずだ。
「上位クラスから不満は出るかもしれませんが、その分は俺がなんとかします」
足りない分は俺が補えばいい。
対抗戦で負けなければいいんだろ?
こんなことをしなくたってやってやるさ。
「今は君の学年のことは君に任せることにするよ。でも、学園に不利益が出るようならこちらも黙ってはいられなくなるからね」
俺はみんなに返すためにアーロンから金を受け取った。
といっても元は俺の金だから、これで元通りになるわけだ。
結局、首謀者はわからなかったが、金のルートは止めたので、もう徴収されることはないだろう。
首謀者についても会長は否定していたが、嘘をついている可能性は高い。
だが、証拠があるわけじゃないので、今はこれ以上の追求はできないだろう。
俺は納得して生徒会室から出たが、カイルは不満そうな顔をしている。
「すまないな。何もしなければAクラスは恩恵を受けられた側だったのに」
「……いや、お前がそういう考えなのはわかっていたからいいんだ。だからこその契約だしな」
「ああ、ここまで手伝ってもらったからな。約束通り戦いの場には呼ぶさ」
カイルとの約束が守れる最初の機会は対抗戦だろうか。
その前にも学年内での格付けの戦いが起きるだろうが、それはAクラスが中心だろうから、俺が何かせずともカイルが巻き込まれるのは必須のはずだ。
それにカイルが戦うのにふさわしい相手はそうはいない。
Aクラスより上の存在となると、他校か俺か、それか上級生だが、上と戦う理由はそうないだろう。
必要な時は戦うが極力戦いには巻き込まれたくないのが俺のポリシーだ。
しかし、そんな俺の思いとは裏腹にすぐに戦いに巻き込まれることとなる。




