Aクラス
「ちょっといいか? このクラスを仕切ってるのは誰だ?」
徴収金問題の原因を探るべく、俺はAクラスに訪れていた。
とりあえず、Cクラスの時と同じく代表者と話がしたかったのだが、その場にいた人たちの目線は俺に固定されている。
「それは教えないという意思表示か?……それとももしかして俺を指してる?」
「おいおいおいおい!アンタはなんだあ?ケンカ売りにきたのか?ええ?」
「ああ、いや、そういうつもりではなくて」
「うるせえうるせえ! テメエちょっとコッチこいや!」
威勢よく絡んできた男は俺を外に連れ出した。
俺のことを痛めつけようとしてるのか?
サシならこのまま付いて行っても、それほど危ないこともないだろう。
誰に話したらいいかもわからないし、とりあえずコイツからゆっくり話し合ってみるか。
「さて、ここまで来ればいいか」
辺りには人の気配は感じない。
伏兵もいないようだ。
本当に1人で挑んでくるのか?
「俺はカイル・ローランドだ。よろしく」
「お、おう、テオ・ユニシスだ」
突然の礼儀正しい挨拶に俺は驚いた。
どうにも今からケンカをしようという雰囲気は感じない。
「俺はアンタが強いってのはわかってる。敵わないとは思っちゃいないが、今は挑む時じゃねえ。率直に言うが、手を組もうぜ」
「手を組む……?」
カイルの目的はケンカではなく、俺と交渉したかったようだ。
とすると、先ほどの教室での乱暴な絡み方もワザとだということだろう。
「そうだ。さっきの発言から推測するに、アンタはAクラスの状況を何も掴めてないらしいな。だが、何やら欲しいもんはある。そこでだ、俺がアンタに情報をくれてやるよ」
「……なぜそう思った?」
「へっ、簡単なこった。クラスに入ってきていきなりアタマ出せなんて、今のAクラスの状況を知ってたら言えるはずがねえ。アンタは特Aで別枠だとしても、Aクラスの中での格付けは済んじゃいねえよ。みんな牽制し合ってんだ」
なるほど、システムを構築できたことから、すでに統率が取れているのだと考えていたが、まだその段階ではなかったらしい。
最初のCクラスで先入観が出来ていたが、そんなすぐにアタマは決まるもんじゃないのは当たり前のことだ。
「んで、そんなところにノコノコやってきたからには何か理由があるはずだ。入学試験での格付けで俺らより上のアンタが俺らにケンカを売りに来る理由はねえ。だとしたら、何か欲しいもんがあるんだろうが、アンタの立場なら欲しいもんがあるなら言えばいい。それを言わずにあんな聞き方をしたのは、誰が持ってるかわかんないものってことだ。ってことで、何が欲しいのかまではわからねえが、とりあえず情報は欲しいだろ?」
コイツは随分と頭が回るようだ。
この分析力なら、有用な情報が得られそうだが、どこまで信頼できる?
「……代わりに求めるもんはなんだ?」
「シンプルだ。俺は自分の実力を証明したい。だから、それができる実戦の場を俺に回せ。アンタならできるだろ?」
確かに、俺が戦いの場を作ることはできる。
コッチから他校に挑みに行くこともできるし、俺に挑んでくるヤツらも増えてくるはずだ。
それに……、いや、コイツはどこまでのことを考えて言っているんだろうか。
しかし、できれば戦いには関わりたくないので、上手く利用させてもらおう。
「わかった。じゃあ、俺に挑んでくるヤツをお前に回すのでどうだろう?」
「はー、ちっちぇな。どの戦いって決めんなよ。アンタの戦いには全部呼べ。それでどうだ?」
「いいだろう。だけど、無闇には戦いは増やさないからな」
「……アンタ変わってんな。まあいいぜ、そんな甘いこと言ってられないだろうしな」
この世界であえて戦わないという感覚は理解されにくい。
特に俺のように力があるものは積極的にその力を示すことが重要だ。
それが自分の将来のためにもなるし、世界のためにもなる。
俺の考えは非難されても仕方がないものだ。
そんな世界で戦わずに生きていくのは難しいんだろう。
「さて、じゃあ早速アンタの欲しい情報ってのはなんだ?」
俺は徴収金のシステムについてCクラスで聞いた事情を説明した。
「結論から言うと、Aクラスは絡んでないと思うぜ。さっきも言ったが、俺たちはお互いに牽制しあってる状況だ。まだ他に気を回せてるやつはいないな」
「やはりそうか……」
「だが、Cクラスが言うことも一理ある。アイツらが勝手にそんな動きをするとは思えねえ。俺たちに利がなければ遅かれ早かれ潰されるからな」
「犯人探しは手詰まりか」
カイルを信じずに他のAクラスのヤツに聞くのもアリだが、すぐに聞いてバレるような嘘を吐くヤツではないはずだ。
それこそ、そんなことをして俺に潰されるのを心配するのがここでの考え方だろう。
「いや、俺に考えがあるぜ」




