第1話
初恋は甘く切ない。あの青春時代に2人はまるで映画のように奇跡的に出会ったことだけは不変である。
とある大学に学内一のモテ男と呼ばれる人物がいた。その名は三川マサトと言い、大学4回生で経済学部に在学していた。既に上場企業から内定をもらって卒業必要単位も取得していた。
彼には彼女はいなかったので、毎晩違う女性と逢瀬を重ねていた。彼はモデルのような容姿であったので、よく女性から声がかかりすぐにそういう関係になった。
前期試験が終わった八月初旬のある朝、彼は駅前で不思議な老人に出会った。
「青年よ、寿命が尽きようとしている」
老人はいきなり彼にそう話しかけた。
彼はその老人を無視して通り過ぎようとしたが、老人は付いて来る。
彼は振り切るのを諦め、老人に話しかけた。
「悪い冗談は止めて下さい。急いでいるので」
するとその老人は杖をつき時間を止めたのであった。そして今老人と彼だけが動いている。
「これなら時間は大丈夫だろう」
彼はびっくりして、老人がただならぬ者であるとようやく気が付いた。
「あなたは何者ですか?」
するとその老人は神様であると答えた。
「神樣なら大学まで瞬間移動は可能ですか?」
彼がそう言うと、神様は杖を振りかざした。するとたちまちに彼が通う大学の正門に移動した。
ようやく彼はその老人を神様だと認めた。
「俺の寿命は後どれくらいですか?」
神様は半年だと答えた。
それを聞いて彼の顔は青ざめた。
そして神様は次のように言った。
「もし、君が半年以内に永遠の愛を見つけたならば寿命を延ばそう」
それを聞いて彼は迷うことなく神様からの申し入れを承諾した。
「ではまた逢おう」
神様がそう言うと姿が消え、時間が動き出した。
不思議な体験に彼は時間を忘れていたが、セミが騒がしく鳴いているのに気付き、我に返った。




