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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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24章 異界回廊 27

 さて、エンペラークラーケン戦がそれなりに長期戦になったこともあり、3日目もここまでとなる。


 貸し切り状態のセーフティゾーンに移動をして、いつもの野営を行う。


 ラーニとシズナとカルマがトンカツを食べたいと口を揃えるので、メイン料理は『タイタンボア』のトンカツになる。そちらはフレイニルやスフェーニアが作るので、俺は別にコンロ型魔導具や寸胴鍋を取り出して、取れたばかりのカニを茹でたり、魚の切り身を刺身にしたりした。


「魚介はやっぱり日本酒が合うんだがな……」


 などと遠い記憶を思い出しながらも準備をすると、なんとなく良さそうなものができ上ってきた。もっとも刺身はラーニがちらちらと様子を見に来て「本当に生で食べるの?」と眉をひそめていたが。


 なお、せっかくなので、トンカツのついでに鶏肉や白身魚の切り身のフライも作ってもらったが、こちらはラーニも「これなら美味しそう」とニッコリであった。


 夕食については、トンカツはもちろん、鶏肉や白身魚のフライも高評価だった。思いついてタルタルソースもどきを作ったところこれも高評価であった。


 食通のマリシエールも、


「鶏肉や魚のフライは、そのものがあっさりしているのでフライがとてもよく合いますわ。この卵を使ったソースもとても合いますし、何枚でも食べられますわね。特にこの白身のお魚のフライはとても気に入りました」


 と、実際に何枚も頬張っていて、魚があまり好きではないラーニも、


「これならわたしも食べられる! っていうかこのタルタルとかってソースも美味しすぎない!?」


 と絶賛に近かった。


 ダンジョン産の食材は新鮮な上に『アイテムボックス』内で劣化することもないのが大きいが、魚介類はその恩恵が非常に大きそうだ。


 一方物議を醸したカニのボイルと刺身だが、少なくともカニのほうは、「見た目がダメ」という一部メンバー以外は、「おいしいと思う」と認めてくれた。


 中でもシズナとサクラヒメはハマってしまったらしい。ちなみに『黄昏の庭』ではカニは普通に食べられているそうで、ゲシューラはカニ味噌まで「うむ、美味い」と言いながら淡々と食べていた。


 問題は刺身である。俺が醤油につけて食べていると、シズナ以外の恐る恐るこちらを見ていた。 


「美味しいの、それ?」


「美味いぞ。これは俺も滅多に食べたことがないくらい新鮮なものだからな」


 とラーニに答えたが、ダンジョン産の刺身は、俺の下手な包丁さばきでも十分美味しいとものになっていた。


「でも食べ物なんて強要するものじゃないからな。無理に食べる必要はないぞ」


「わらわは少し興味があるのう。一つ頂いてもいいかえ?」


 シズナがそう言って、ひと切れ食べる。全員の目がシズナの顔に注がれるのに笑ってしまうが、皆真剣な表情である。


「……ふ~む、なるほど、これは食べ慣れると美味しいかもしれんのう。驚いたことに、全然生臭さがないのじゃな」


「これは新鮮なものだからな。『アイテムボックス』持ちがいないとこうはならないだろう」


「なるほど、そう考えるとやはり贅沢な食べ物なのじゃな」


 シズナがもうひと切れもうひと切れと食べ始めたので、フレイニルやカルマ、サクラヒメも恐る恐る口にする。


「確かに、食べ慣れると美味しい気が致します。この醤油にとても合うのですね」


「あ~……これって酒が欲しくなる食い物じゃないかい? でもこれに合う酒となるとなんだろうねえ」


「ふうむ……ソウシ殿の言う通り、確かにこれはそれがしには懐かしい味に感じられる。不思議なことがあるものだ」


 という感じで意外と食べられるメンバーが出てきたので、今後も刺身は食べられそうだ。


 なお今日も、デザートとしてアイスクリームを大量に作らされた。こちらは本当に全員が気に入ってしまったようだ。


 美味しいものを食べてダンジョン攻略がはかどるならそれに越したことはない。この先も食事については常に充実させていこう。




『王の礎』もついに四日目だ。


『ソールの導き』は個々の戦闘力も、集団としての戦闘力もどちらも恐ろしく高いので、モンスターとの戦闘はまったく苦にはならない。


 といってもこの先もそうであるとは限らない。気を引き締め直して地下36階へと下りていく。


 36階で出てきたのは、頭部に二本の触角が生えた、虎型のモンスターだった。『ヒュプノタイガー』という、帝国の『龍の揺り籠』にも出てきたモンスターである。


 相手に幻覚を見せて仕留めるという特殊なスキルを持っているらしいのだが、全員が耐性スキルの高い俺たちには効果がない。そうなるとただの大型のトラなので、30匹以上出てこようが相手にはならない。


 魔石と素材の毛皮を回収しながら進んでいく。この毛皮は、俺たちが『龍の揺り籠』に入った時に初めて手に入った素材で、『精神安定』の効果があることも判明している。


 一部は帝室に献上したが、他はすでに市場に流してある。もちろん『龍の揺り籠』でしか取れない貴重な毛皮ということでかなりの値段が付いたらしい。噂では『精神安定』の効果で強い安眠効果があるらしく、寝具の素材として秘かに奪い合いになっているとも聞いている。今回も一部は王室に献上し、他は売りに出すことになるだろう。


 地下38階からは、太い腕を持ったゴリラ型のモンスター『グレートアームズ』が現れる。


『跳躍』『空間蹴り』『疾駆』といったスキルを駆使した立体的な動きが特徴のモンスターだが、すでに一度戦っているため驚きはない。


「戦うのは楽しい相手なんだけど、この素材がちょっとね……」


「キンタマだからねえ。女からするとどんな顔をしていいかちょっと困るね」


 ラーニとカルマがそんな愚痴を言っていたが、落とす素材はまさに『グレートアームズの睾丸』である。強壮剤の材料になるもので、上の階で拾った回春効果があるという『クラウドスライムの油』と合わせると、色々と使いでがありそうな品物である。


 地下40階は、降りてすぐにボス部屋になる作りだった。


 これも『龍の揺り籠』と同じだったので驚きはない。


 黒い靄から現れたボスは象に似たモンスターだった。全身がモスグリーンの甲殻で覆われていて、長い鼻の先には薙刀の刃のような形状になっている。もちろん長い牙もあり、鼻の先の刃も牙も同じ白金色をしているのは、どちらもオリハルコン製だからだろう。数は5匹で、これは出現ボスの数としては集団戦ボスを除けば最大かもしれない。


 初めて見るボスなので、マリアネがすぐさま『鑑定』する。


「『アースビースト』という名前ですね。見ての通りの物理攻撃特化型のモンスターのようです」


「『龍の揺り籠』の時は、確かレアボスの『ベヒーモス』だったな。ということは、これは『ベヒーモス』の通常ボスということか」


「その可能性が高そうです」


 そのやり取りに、ラーニやシズナなどは露骨に残念そうな顔をする。


「通常ボスだと楽勝過ぎてつまらないね」


「宝も期待できぬしのう。いや、役に立つアクセサリーくらいは出るかもしれんか」


「でも、油断をしてはいけないと思います」


 緊張感が抜けそうな感じもあったが、俺の代わりにフレイニルが一言そう言ってくれたので、「まあそうだね!」「戦いは真面目にやらんといかんのう」となった。


 さて、実際の戦闘だが、アースビーストは『疾駆』スキルで高速突進してくるタイプだった。しかも『翻身』も持っているらしく、巨体からは想像もつかないほど身のこなしが軽い。


『誘引』スキルで引き付けて『不動不倒の城壁』への突撃を誘発しても、最初の一匹が自爆した以外は、サッと身を引いていた。


 ただ、その回避行動を見逃す『ソールの導き』メンバーではなく、残り4匹の内1匹は魔法の集中攻撃で、後の3匹は前衛陣と『精霊』のミスリル人形が囲んで倒してしまった。


 特にラーニ、マリアネ、ライラノーラといった機動力のある者は動きで翻弄するので一方的な戦いになる。マリシエールが『告運』スキルで巨体の突進を逸らす姿はまるで闘牛を見ているようだった。いずれにしても、討伐までにそれほどの時間も要さなかった。


 宝箱は銀が5つなので、ノーマルボスが確定する。


 宝は『金剛体+3』効果を持つ腕輪、『金剛力+3』の効果を持つ指輪、『金剛壁+3』の効果を持つネックレスと、オリハルコン製の業物と思われる槍、それから『エリクサー』の3本セットだった。


 もはや『エリクサー』でも誰も驚かないのが『ソールの導き』である。


 アクセサリー類もどれも市場にないレベルのものだが、特に感慨もなく、淡々と装備する人間を決めて終わりである。ちなみに『金剛体+3』の腕輪はマリシエールが、『金剛力+3』の指輪はサクラヒメが、『金剛壁+3』のネックレスはラーニのものになった。


 オリハルコンの槍は誰も使わないので『アイテムボックス』行きとなる。


 ボス部屋の奥に扉が開いて先に進めるようになると、フレイニルが隣にやってきて見上げてきた。


「ソウシさま、私たちは今、地下40階にいるのですよね?」


「そうだな」


「この『王家の礎』はいったい何階まであるのでしょうか」


 その疑問は他のメンバーも気になるようで、こちらに目を向けてきた。


「それはわからないな。ただ、これは完全な勘なんだが、このダンジョンには最下層はないんじゃないかと思ってる」


「最下層がない? つまり、無限に続くということでしょうか」


「本当にただの勘だけどな。ライラノーラ、そういうことはあり得るのか?」


 ダンジョンは『神』の産物なので、同じ『神』の手によるライラノーラなら……と思ったが、彼女は首を横に振った。


「いえ、わたくしにはその知識はありません。ただ、ソウシ様のお話や、今までの経験からするとダンジョンは入る者によって変化をするようですから、階層数が変化することもあるのではないでしょうか」


「なるほど、無限ではなくて可変ということか」


 実際俺たちが入るとモンスターの出現数が大きく増えるため、ダンジョンの通路の広さが変化している時があるようだ。俺とライラノーラの相乗効果で出てくるドロップアイテムが変化しているという事実もある。


「しかし、もし入った冒険者パーティの強さによって階層の深さが決まるなら、私たちだと何階層になるのか想像もつきませんね。事実上ソウシさんの言ったように無限になりそうな気がします」


 というスフェーニアの言葉がひとまずの結論となり、俺たちは階下に向かうことにした。

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