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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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24章 異界回廊 24

『王家の礎』攻略3日目。


 地下30階にて出現したザコモンスターはウインドドラゴンという、高速で飛翔するドラゴンだった。


 地上に現れたら厄介そうなモンスターも、閉鎖空間であるダンジョン内なら問題はない。合計で50匹ほど倒すと、ボス部屋前の扉に到着した。


「『龍の揺り籠』では『カオスフレアドラゴン』が2匹だったな。今回はそれより上になるだろうから、注意して行こう」


 と声をかけ、扉を開いてボス部屋に入る。


 予想通りに広大な空間が広がっていた。天井も壁も遥か遠くに見え、これが地下空間と信じられないくらいである。もっとも、これでもダンジョンとしての不思議度は決して高い方ではない。


 部屋の中央あたりに黒い靄が立ち込める。量から見て3匹か。


 現れたのは、青い光沢をたたえた漆黒の鱗を持つ『カオスフレアドラゴン』が2匹、そして中央に立つのはもう一回り大きな体躯の、赤みがかった黒い鱗を持つ二本首のドラゴンだ。


 早速マリアネが『鑑定』する。


「『ダブルヘッドクイーン』だそうです。カオスフレアドラゴンの上位種のようですね」


「とすると、この階の本来のボスはカオスフレアドラゴンで、ダブルヘッドクイーンがレアボスということか」


「多分そうでしょう。しかし王都のAクラスダンジョンの最下層で戦った『プリズムドラゴン』よりは下に見えますね」


「確かにな」


 プリズムドラゴンは四つ首の超巨大ドラゴンで、Aクラスダンジョン最下層のレアボスとして凄まじい力を誇っていた。


 目の前のダブルヘッドクイーンにはそこまでの迫力も威厳も感じられない。といっても全長40メートルを超える双頭のドラゴンなど、相手ができる冒険者は限られるだろう。


 ドロツィッテ曰く、「ソウシさん、ダブルヘッドクイーンというのは私も知らないドラゴンだ。なるべく情報収集を頼むよ」とのことなので、俺が相手をするしかない。


 ラーニが前に出ながら、


「カオスフレアドラゴン2匹くらいならわたしたちだけで十分だから、ソウシは真ん中のだけ相手してていいわよ」


 と言ってくれたので、その構えで行くことにする。


 見ると、すでにフレイニル、スフェーニア、シズナ、ドロツィッテ、ゲシューラの後衛陣は、獣形態の『精霊』にまたがっている。前衛陣は俺以外全員『疾駆』スキル持ちなので、カオスフレアドラゴンのブレスを避けるのは問題ない。


「カオスフレアドラゴンは皆に任せる。よし、行くぞ」


 そう言って、俺は『万物をならすもの』と『不動不倒の城壁』を構えて、ダブルヘッドクイーンの前に走っていく。


 ラーニ達は左右に分かれ、それぞれ後衛陣が魔法攻撃で一撃を与えてカオスフレアドラゴンを釣りだしてくれた。これで俺とダブルヘッドドラゴンは1対1となる。


 未だ地上にいる双頭の赤龍は、炎のように赤い四つの瞳で俺を見下ろしてくる。ダンジョンのモンスターは地上で現れるモンスターに比べて自我を感じないことが多いのだが、ダブルヘッドクイーンの目にはわずかに軽侮の感情が宿っているように見えた。


「来い!」


 とメイスの先を突き付けて『誘引』スキルを発動すると、二つの頭はギャアァァ!と叫ぶや、口を開いてブレスを放ってきた。


 それは炎のブレスというより、白熱するほどに溶けた金属でも吹きつけてくるような、質量のあるブレスだった。まともに食らえば熱よりその重さで大ダメージを食らいそうだ。


『不動不倒の城壁』に突き刺さる二本のブレスは、弾かれてすさまじい量の白熱の飛沫を周囲に撒き散らす。もちろんかなりの量が俺の身体にも降りかかってくるが、そこは『神嶺の頂』や各種耐性スキルのおかげでノーダメージだ。


「そんな攻撃では効かないな!」


 ブレスの切れ目にそう煽ってやると、ダブルヘッドクイーンは身体を回転させ、太い尻尾による一撃を加えてくる。


 城壁すら破壊できそうなほどの強烈な一撃。だが俺の身体を1センチ揺るがすことができたかどうか。それでもダブルヘッドクイーンは逆に身体を回転させ、2撃目を放ってくる。その動きは巨体に似合わずかなり軽快で、『翻身』スキルの存在が感じられる。


 尻尾による連撃は4回続いたが、効果がないとわかると、ダブルヘッドクイーンはギャオウッ! っと怒りの声を上げ、羽根を大きく広げてひと羽ばたきし、巨体を宙へと躍らせた。


 次は何を仕掛けてくるか、と見上げていると、足の下に違和感を覚えた。範囲魔法の前兆だと瞬時に判断、俺はすぐに前方にダッシュする。


 ギリギリで間に合わず、一瞬だけ炎の竜巻に呑まれた。熱と痛みを一瞬だけ感じたので、かなり強力な『フレイムサイクロン』の魔法である。負ったはずの火傷は、『再生』スキルがもう治しているだろう。


 その後も何発か範囲魔法を放ってくるので、俺はダブルヘッドクイーンの真下まで走っていって直上に『圧潰波』を放ってやった。


 ギャオッ!?


 巨体の腹部がくの字に持ち上がり、双頭の口から胃液かなにかがほとばしった。


 ダブルヘッドクイーンの巨体が、そのまま俺の頭上に落ちてくる。


 俺自身は平気だろうが、さすがに下敷きになるのは御免だ。それにダブルヘッドクイーンの力も十分見ただろう。


 俺は再度、全力で『圧潰波』を頭上に放つ。今度は赤い巨体が完全に真ん中から折れて、それで絶命したのか空中で消えていった。


 落ちてくる巨大な魔石は『アイテムボックス』を頭上に開いて回収する。だんだんと『アイテムボックス』の使い方もこなれてきた。


 ラーニ達の方はと見ると、ラーニ、フレイニル、サクラヒメ、シズナ、ゲシューラ、ライラノーラ組と、カルマ、スフェーニア、マリアネ、ドロツィッテ、マリシエール組に別れて戦っていた。


 すでに2匹のカオスフレアドラゴンは全身が傷だらけで、背中の羽根も半ばから切断されていて、飛行することもできない状態である。


 ブレスや魔法を放っても全て躱され、尻尾による一撃も、一方はシズナの『精霊』のミスリル人形数体とフレイニルの『絶界魔法』の壁に阻まれ、一方はマリシエールの『告運』スキルによって上方向に逸らされてしまう。


 しびれを切らした一匹が、巨体でシズナを圧し潰そうとして、ラーニとサクラヒメ、ライラノーラの集中攻撃を受けて沈んでいた。


 もう一匹はドロツィッテの『レーザー』で目を潰され、メチャクチャに暴れ始めたところをマリシエールによって転倒させられ、カルマに首を落とされて消えていった。


 戦闘が終わると、『精霊』にまたがったフレイニルがやってくる。


「ソウシさま、お疲れ様でした。ダブルヘッドクイーンというモンスターはいかがでしたか?」


「カオスフレアドラゴンよりは強かったが、あれなら皆でも問題なく倒せるだろう。ブレスだけは強烈なので要注意といったところか」


「ソウシさまはお一人で倒してしまわれるのですから、やっぱり凄いと思います。今カオスフレアドラゴンと戦ってみて以前より手応えがないと感じますが、それでも素手で倒せるようにはならないでしょうし」


 そういえば、俺がカオスフレアドラゴンを素手で絞め殺したのも随分昔のことになってしまった。


 宝箱は銀が2つ、金が1つだ。


 銀の方からは『エリクサー』が3本入った箱と、『黒龍の驕り』という腕輪を得た。


 前者はそのままだが、いざという時の『エリクサー』は何本あってもいい。


「そもそも『エリクサー』が一度に3本手に入るなんて聞いたこともないけどね」


 とドロツィッテは溜息をついていたが、秘かにゲシューラが作れるらしいので、俺としてはそこまでのレア感はない。


『黒龍の驕り』は龍の鱗があしらわれた黒い腕輪で、『金剛壁+2』の効果があるものだ。


 防御力アップの装備品だが、今のところなにも着けていないライラノーラに試してもらったところ、


「わたくしにはスキル効果というものは適用されないようです」


 とのことだった。ライラノーラは、ダンジョンやスキルといったものをこの世界にもたらした『神』に作られた存在なので、そのせいなのかもしれない。


 なので、前衛で『鉄壁』系スキルのないマリアネが着けることになった。彼女は超スピード型な上に、攻撃を予測できる『予知』スキルを持っていることもあり、ほとんど攻撃を受けることがないのだが、いざという時の備えは必要だ。


 金の宝箱からは『黒龍の護鱗』という、微妙に和風な感じの、青黒い龍の鱗で作られた鎧が出てきた。『全属性魔法耐性+2』『金剛壁+2』『金剛幹+2』という効果を持つ鎧で、その形状からサクラヒメのものとなる。


「着けるだけで力が漲るのが分かる鎧でござる。この武具に相応しい冒険者となるべく、日々精進を重ねるのみ」


 と相変わらず真面目なサクラヒメだが、


「サクラヒメが相応しい冒険者だからこそ、この武具が出たんだろう」


 と、リーダーとしてフォローをしておいた。実際その通りだと思うし、俺の『天運』スキルにはその程度の期待をしてもいいはずだ。

【宣伝】

3月25日に『勇者先生』の6巻が発売になります。

『ウロボちゃん』の背中が眩しい表紙の一冊です。

よろしくお願いいたします。

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