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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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24章 異界回廊 15

 王都の城門は顔パスどころか最敬礼の待遇であった。


 直前に連絡を入れていることもあって、すでに王城から迎えの馬車が待っているくるくらいである。


 王城では、以前もお世話になった筆頭執事のレイロット氏が迎えてくれる。ロマンスグレーという言葉の似合う老紳士で、その所作には一切の隙がなく、かつ上品だ。


「ようこそオクノ侯爵閣下、そして『ソールの導き』の皆様。お話にはうかがっておりましたが、アルマンド公爵領からまさか半日でおいでいただけるとは思っておりませんでした」


「オーズ国の『精霊獣』という存在の協力を得ておりまして、そのお陰です」


「そういった存在ともつながりを持てるのもオクノ侯爵閣下だからこそでしょうな。我が主も、侯爵閣下とのお話を楽しみにしております。では、まずはこちらへ」


 今回は王城に宿泊することになるので、まずは各々寝泊まりする個室に案内され、その後旅の埃を落とすということで風呂に案内された。


 国王陛下との謁見は明日になるが、俺とドロツィッテ、そしてマリシエールは、今日の夕食は陛下と同席することになっている。


 風呂の後は、フレイニルやシズナ、サクラヒメは、ヴァーミリアン王国の姫君であるマルガロット殿下と応接の間で話をしていた。もともとフレイニルはマルガロット姫とは姉妹のような仲で、シズナも姫とは仲がいい。サクラヒメも『至尊の光輝』時代に一度会ったことがあるらしい。


 俺は夕食の間まで暇だったので、レイロット氏に身体を動かせる場所はないかと相談したところ、練兵場に行ってみてはどうかと提案された。


 練兵場は王城の北にあった。サッカーコートの5倍はありそうな広さで、1000人ほどの兵士たちが訓練を行っていた。これは王都の規模を考えると少ない数だが、モンスター出現数の増加によって多くの兵士が王都の外に出て警戒に当たっているので仕方がないのだろう。


 さすがに練兵場を勝手に使うわけにもいかないので、まずは官舎の方へ向かう。


 残念ながら将軍は不在だったが、副官の男性がいて練兵場を使う許可はもらうことができた。


 官舎を出て、練兵場の端に移動して、『アイテムボックス』から『万物を均すもの』と『不動不倒の城壁』を取り出す。


 俺の持ち物の中でこの二つより重い物がないので、自然とトレーニングでもこの二つを使うようになってしまった。できれば鎧『神嶺の頂』も着けた方がいいのだが、さすがに人前で金色の鎧を着けるのははばかられる。


 両手にメイスと盾を持って走ったり振り回したりしていると、だんだんと身体に負荷がかかってくる。『万物を均すもの』の槌頭は巨大な多面体だが、そのトップスピードは音速を超えている。振る度に破裂音が響いたりもするのだが、やはり兵士たちの注意を引いてしまうようで、しばらく続けていると多くの視線を感じるようになる。


 さて、30分ほど全力で動いて小休止をしていると、王城の方から一人の偉丈夫が歩いてきた。


 身長は二メートル前後あるだろうか、黒髪を短く刈り揃えた厳つい顔の男性である。


 その筋骨隆々とした姿は見覚えがある。以前王都の聖女交代の儀で騒動があった時に、会場で警備をしていた親衛騎士第二位のガンドロワ氏である。ちなみに王国の親衛騎士は3人いて、第二位がガンドロワ氏、第三位がハーシヴィル青年、第四位がメルドーザ女史なのだが、第一位は伝統的に空位なのだそうだ。これは国王そのものが第一位という建前があるかららしい。


 と、それはともかく、彼とはまだ挨拶すらできていなかったので、この場で話ができるならそれはありがたい。


「凄まじい音が聞こえると思いこちらに参ったのですが、オクノ侯爵閣下でいらっしゃいましたか」


 見た目に似合う野太い声で言いながら、軽く一礼するガンドロワ氏。


「お騒がせして申し訳ありません。長く身体を動かしていないと落ち着かないものですから」


 とこちらも軽く礼をして答えると、ガンドロワ氏は表情を少し緩めた。


「そのお気持ちは私も理解できます。戦う力を得た者として、その力は常に研いで置かねば不安になってしまうものですからな」


「ええ、本当にそうです。私はもともと小心者なのでその性向が強いようです」


「オクノ侯爵閣下が小心というなら、ドラゴンですら巣から出てこられなくなってしまいますな、うはははっ」


 破顔して身体を揺するように笑うガンドロワ氏。


 笑い方はいかにも豪快といった感じだが、立ち居振る舞いには品の良さが見え隠れしているので、彼もハーシヴィル青年と同じく貴族家の生まれなのかもしれない。


 彼は一通り笑うと、子どもが面白そうなものを見つけた時ような目を向けてきた。


「ところで、以前よりオクノ侯爵閣下の腕力についてはハーシヴィルより色々聞いておりまして。あの聖女交代の儀の時の戦いぶりを見ていて感服をしていたところなのですが、どうやらあの時よりさらにお強くなっていらっしゃるようですな」


「そうですね。あれから北の帝国に行き、さらに南のメカリナン国まで下りと旅を続ける中で、あの時より倍……ではきかないくらいになっているでしょう」


「想像もできないほどですな。カオスフレアドラゴンと素手で倒されたとか、『黄昏の眷族』の王を討たれたなどとも聞いておりますぞ」


「目の前のことに当たっていたらそうなったという感じですね。私がやってきたことはほとんどがそうですが」


 というのが自分の偽らざる実感なのだが、しかし第三者から見ると俺が積極的にあれこれ解決するために奔走しているように見えるらしい。


 まあ冷静に自分のことを客観視すると確かにそう見えるかもしれない、くらいには自覚しているが。


「国王陛下もおっしゃっておられましたが、やはりオクノ侯爵閣下は控え目でいらっしゃいますな。しかし今お持ちのそのメイスと盾は控え目からは最も遠いところにあるように見えますな、うははっ」


 そう言って笑うガンドロワ氏だが、どうやら『万物を均すもの』と『不動不倒の城壁』に興味があるようだ。ハーシヴィル青年によると力自慢ということだったので、持ってみたいと考えているのかもしれない。


 実はカルマも力自慢なのだが、『金剛力』スキルが上限に達した時に「ソウシさんのメイス、一度持たせてくれよ」と頼んできたことがある。ちなみに持つことはできたのだが、そこから振りかぶることはできなかった。


 ともかくチラチラと見ているのがわかるので、


「このメイスと盾、試しに持ってみますか?」


 と提案したら、子どものような顔になって、


「おお、もし叶うなら是非ともお願いしたい。噂に名高いオクノ侯爵の武具に触れたとなれば、自慢もできますからな!」


 と迫ってきた。なんともわかりやすい御仁である。


 俺は『万物を均すもの』と『不動不倒の城壁』を静かに地面に置いて、「どうぞ」と言うと、ガンドロワ氏は「では早速」と言って、まずは巨大な盾へと向かっていった。


 両手で取っ手を掴んで腰を落とし、そして「むうっ!」と気合を入れて持ち上げる。


 さすが力自慢なだけあって、しっかりと持ち上げて保持できている。歩くこともできているので、俺が見てきた覚醒者の中では間違いなく一番力があるだろう。


「いや、これは凄まじい盾ですな。辛うじて持ち上げて運べますが、これを戦いで使うのは私では無理でしょう」


 というのが彼の感想だが、もう少し鍛えれば行けるような気がしなくもない。


 彼は盾を地面に置くと、今度は金色のメイスに向かった。柄を両手で握り、そして「ふんっ!」と気合一閃持ち上げる。


 遠くで「おおっ」と声が上がったが、いつの間にか訓練していた兵士たちが動きを止めてこちらを見ていた。


 ガンドロワ氏は持ち上げたメイスを振り上げ、そしてゆっくりと振り下ろした。実は遅い動きで振り下ろす方が力が要るので、それだけで彼の膂力がカルマを上回っていることがわかる。


 彼はメイスを何度か両手で振ってみて、それから「ふう」と息を吐き出しながら、静かに地面に置いた。


「いや、大切な武具を触らせていただき感謝いたします。しかしどちらも想像を絶する、もはや神か、神話の巨人が扱うようなものですな。私如きではとても手に負えるものであはありません」


「このメイスを振ることができたのは私以外ではガンドロワ殿だけですよ。すばらしい力をお持ちですね」


「侯爵閣下にそう言っていただけると嬉しいですな。しかし閣下はこのどちらをも片手で軽々と扱われる。これならドラゴンを素手で一捻ひとひねりするのも納得というものです」


 そううなずくガンドロワ氏の俺を見る目には、先ほどまではなかった敬意のようなものが見えた。


 いや、それまでも敬意がなかったわけではないが、なんというか、覚醒者同士としての敬意みたいなものが感じられるようになったのだ。もっともその理由は何となく察せられるし、俺としても納得できるものであった。


 ガンドロワ氏は、それから少し恥ずかしそうに、


「いや、実は可能なら侯爵閣下に一手お手合わせをお願いしたかったのですが、残念ながら私では足元にも及ばぬようです」


 などと言ってきた。


 そうだろうなと思っていたところなので、


「そう言わず、少しお相手願えませんか。一人でメイスを振っているだけなのも退屈なもので」


 と試しに言ってみると、ガンドロワ氏はまた破顔して「是非お願いいたしますぞ!」と即答してきた。


 で、結局二人で立ち合いのようなものもやったりしたのだが、兵士が囲んできて見世物みたいになったり、ガンドロワ氏が振るう大槌が『不動不倒の城壁』に叩きつけられた時の音がものすごかったりと、その場が妙に盛り上がってしまった。


 その後ガンドロワ氏とは世間話などもして仲良くなったのだが、やはり同年代の男同士で馬鹿な話をするのは楽しいものである。


 そんな中で、


「国王陛下もオクノ侯爵閣下とは砕けた話がしたいとおっしゃっておりましたぞ」


 というガンドロワ氏の言葉が妙に頭に残った。


 国王陛下ともなるとその孤独感は想像を絶するのだろうなと、一人しみじみと感じたのであった。

2月22日は更新を休ませていただきます。

次回更新は2月25日になります。

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