シナリオ8 来訪者
「くそおおおぉぉぉ!!!!!!」
「負けたああああぁぁぁぁ!!!!!!!」
《サブシナリオ『小さな頂点』を達成しました》
《シナリオ達成ボーナスが与えられます》
皆が悔しがる中、俺は2歳児にしては動き過ぎた体を近くの巨木に預ける。それから、いつも通りこのサブシナリオを達成したときの通りに攻撃力関係のステータスに補正が追加されていることを確認した。
俺がそうして達成感を味わっている中で、
「ごめんねレオ様。負けちゃった」
「ごめん。今日こそは勝つつもりだったのに……」
「良いよ別に!……その、2人とも、かっこよかった、ぞ」
「「レオ様っ‼」」
どこかの許嫁な奴らがいちゃいちゃしてやがった。ちょっとどころではなく大量に砂糖吐きそうだ。
気を紛らわせるため、ちょっとあいつらのことも紹介しておくか。
今はこんな感じでも、実は最初の頃あの3人は中が非常に悪かった。それをどうにか村の今後のために俺が動き回って仲を取り持ったのだ。
あの時は村長を含めた村人たちに非常に感謝されたし、シナリオのスキルで発生したサブシナリオの報酬として強力なスキルなんかも手に入れられたりした。
本当は動き方によってはあの2人を俺のヒロインにすることもできたのかもしれないが……まあ、村のためには村長の家系の人間であるレオが安定していることの方が大切だったからな。俺もこの結果には満足している。
なんて自分の思考をごまかして砂糖を吐くのを耐えていると、
「でさぁ!ヴェン、今日使ってた武器は何だったんだ?」
「ああ。これ?」
レオがいちゃいちゃを終わらせて、俺の最後に使った武器に興味を示してくる。
俺の両手に握られたのは、中国武術なんかで使われる武器。その名も、
「トンファーだね」
「「「「トンファー?」」」」
俺の片腕くらいの長さの棒に、垂直に短い取っ手がついているものといえば分かるだろうか?
この世界ではあまりなじみがない武器だな。
「いろいろと武器を作ってみて使ってたんだけど、適当にいろいろとやってたらいつの間にか『トンファー術』っていうスキルが生えててね。そのスキルを使うときに1番なじむ武器の形状がこれだったんだよ」
「へぇ~」
「スキルが生えるって、ヴェンは相変わらずだな」
もちろん嘘である。
本当は、少し特殊なサブシナリオをクリアしたら報酬としてスキルをもらえたのだ。そこで記憶を頼りに作ってみた結果がこれである。
「まあ、なんでもいいけど、とりあえずやってみようぜ!」
「「「「おおぉぉ!!」」」」
子供たちは新しい物好きなことが多い。
今回もまた、知らない武器に興味を示していた
「ってことでヴェン!貸してくれ!」
「はいはい。そう言うと思ってある程度作ってあるよ。もう少し増やすつもりだから、それまではそこにあるので我慢して」
「おぅ!分かった。がまんしておいてやるぜ!…みんな、やるぞぉ!!!」
「「「「うおおおおぉぉぉぉ!!!!!」」」」
子供たちは我先にとトンファーを取り、好きなように使い遊び始める。特に例の双子は俺にこれで負けたのが悔しかったようで、熱心に研究してるな。数が足りなくて持てなかった子が持っている子供に貸してくれと頼んでいるのだが、あの双子には誰1人として声をかけない。2人で2つずつ両手に持っているというのに、だ。2人があまりにも気迫がありすぎる様子でトンファーを振り回していて怖いのだろう。
「まあ、向上心があることは悪くないんだけどねぇ」
俺はそう呟いて苦笑を浮かべつつ、新しいトンファーを作っていく。
こうやってために新しいスキルを手に入れてその武器を作ってるから、木工関係のレベルも最近はかなり上がってきてるんだよな。赤子の頃は伸ばせなったスキルが伸ばせるのはうれしいことだ。
そんなことを思いながら黙々と作業を進める。そんな時だった、
「おや。何をやっているのでしょうか?」
幼い声。だが、聞き覚えのない爽やかな声が耳に届いた。この村の子供のものではなさそうだな。
俺が顔を上げてみると、俺たちの様子を眺める幼児が1人。
「ん?誰だお前?」
レオは不思議そうに首をかしげる。
が、そこで俺は即座に理解した。見かけない子供だが、その子供は非常に格好が身ぎれいである。とても俺のように村から追放されたなどという理由でここまで来た人間には見えない。
となると、
「レオ君。恐らくその子はお貴族様のご子息か何かじゃないかな?」
「え?あっ!?そ、そうなのか!?………え、えぇと。なんだっけ。このたびはたいへんしつれいしませんです、で良いんだったっけ?」
そんな言葉と共に俺に視線を向けてくるレオ。
間違ってるし、言う相手は俺じゃないんだからこっちを見ないでほしいな。まあ、どちらにせよ俺がフォローに回らないとマズいだろう。
さっきから見ることこそできていないが近くにいくつも護衛だと思われる気配を感じるし。
「初めまして。高貴なご身分のお方であられるとお見受けしますがよろしいでしょうか?」
「え?え、ええ。間違ってない、です?」
首をかしげるが、それは自分が高貴な身分であるということを疑っているわけではなく。
単純に近くにいるのであろう護衛に確認をしているような言い方だった。周囲の気配から考えるに、それで間違っていないようである。
このまま話を進めよう。
《メインシナリオ『神と人と権利と』が発生しました》




