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シナリオ30 マッチポンプ

 俺以外、男爵の行方は誰も知らない。だが男爵が男爵でなくなれば、もうその存在に誰も用はなくなるし興味もなくなる。


 1年ほど男爵の姿が見えなければ、


 「え?僕が、男爵になるの?」


 「その通りです。お父様の行方が分からない現状、男爵家が役目を果たすにはそうするしかいのです」


 俺は例の男爵の子供に、お前の父親が見つかんないからお前が代わりに仕事しろ、と伝える。

 かなり子供に言うには無茶苦茶なことだが、そういう世の中であるので仕方がないだろう。貴族とはつらいもんだ(他人事)

 で、俺がそれは伝えたわけだが、当然に男爵となる子供を支えるために俺がこの村を出るということはなく、


 「閣下」


 「うむ。随分と奇麗に丸め込んだことだ。そのものは侯爵家で有効に活用させてもらうとしよう。この村への報酬は期待してもらって構わない………智龍様への謝礼も含めて、な」


 後は侯爵に丸投げだ。


《メインシナリオ『入り乱れる思惑』を達成しました》

《シナリオ達成ボーナスが与えられます》


 侯爵は侯爵で男爵という大きな手駒が1つ増えるわけだし、喜んでその役を引き受けてくれた。というかそっちの方がメリットが大きすぎたから、こちらに報酬ももらえるらしい。

 そうして恐れていた事態も起きなかったうえに成果も得られてほくほく顔の侯爵だが。そこそこの頻度でこの村に顔を見せに来ていた。というか、それ以外の貴族たちもかなりこの村には来ていたのだ。

 どうやら、


 「実は年々作物の収穫量が国全体で減少してきていてな。この村の生産能力を国としても活用できるのは非常にありがたいのだよ。陛下たちも興味を示されていてな」


 ということらしい。

 智龍ちゃんの力のおかげでかなり質の高い作物が安定して収穫できるし、作ろうと思えば外へ大量に輸出できるくらいの量も作れる。

 そんなこの村の力は国にとってありがたいものなのだそうだ。

 ただそこで少し定期的な交易の話が出てきた時にも考えた税の話が気になってくるのだが、


 「さすがに全額免除はできぬが、ほとんどの作物は智龍様の制作がかかわっているということで、税の8割は免除となる予定だ」


 「本当ですか!すべての税が8割免除なのであれば非常にこちらとしてもありがたいお話ですね」


 「うむ。そうであろう?」


 俺は外面では騙されたふりをしているが、実はこの侯爵が言う8割になるというのは作物を生産するのにかかる税のことだったりする。そのためほかの人頭税やら輸出の税やらは別途かかってくるのだ。

 が、それならばそれで構わないので、


 「ふむふむ。なるほど。そういう目的でいくのか………」


 村長には解決策やら逆にこちらから仕掛けるための作戦なんかも仕込んでおいた。これで何かあってもこの村の方が優位に立って動けることだろう。


《サブシナリオ『田舎だからって舐めるなら』が発生しました》


 そして、そんな風にこの村が注目される大きな理由となっている原因である偉大な智龍ちゃんなのだが、


 「よし。ヴェン。何か妾がすごい活躍できそうなことを考えるのじゃ。しかも、すごく憧れられて好かれるもので」


 そんなことを言ってきた。急な無茶ぶりである。そんな方法があるなら多くの者が行っているはずなのだ。それだけで好感度爆上がりなんて簡単には無理な話である。

 だがそれでも俺は智龍ちゃんへの愛を持って、すぐに考えをひねり出す。


 「………かしこまりました。では数十年待っていただけますでしょうか?世界を火の海に包み込んで、数多の英雄でも滅ぼしきれぬほどの力を持った怪物を作り出して見せますので」


 「いや待て!?そうじゃないのじゃ!どうしたらそんな自前で災害を引き起こして世界を滅ぼしかけてから妾が助けるとかいうマッチポンプに行きつくのじゃ!?というか、いくら妾が強くても数多の英雄が勝てない怪物にまでは勝てないのじゃが!?」


 「そうなのですか?申し訳ありません。智龍さんがどの程度強いのかは存じ上げていないものでして………ではこうしましょう。世界を滅ぼしかけるのもダメなのであれば、人間より知能の高い怪物を作って人間含めた様々な種類を家畜として扱わせます。そこを智龍様に救っていただければ」


 「いや、それ絶対妾まで家畜に成り下がるやつじゃろ!ダメじゃダメじゃ!!妾が求めてあるのはそんな物じゃないんじゃ!」


 智龍ちゃんが激しく首を振る。

 俺が急いで考えた『人類全滅防いで英雄計画!』と『人類の家畜化防いで英雄計画!』は両方却下されてしまった。せっかく頑張ったというのに残念だな。

 なんてことを思いながら智龍ちゃんをじっと眺めていると、


 「実はな。妾が国に認められるのには少し功績や人気が足りないということで、国のためになることをしてほしいと貴族たちから言われたのじゃ」


 「なるほど。そういうことでしたか」


 に無茶ぶりをしてきたのも俺の案が却下されたのも当然な理由だった。

 ………じゃなかったら俺の計画が否定されるわけないもんな(マッチポンプ計画気に入っていた愚か者)。


 「では、功績として民衆からも国からも分かりやすいものを打ち立てたいということですね?」


 「その通りじゃ」


 人から智龍ちゃんが認められる手段は、そこまで少なくはない。

 ただ、たいがいそのどれもが時間のかかるものでありすぐに人気を得る方法はそこまで多くはない。となるとここで俺が思いつくのは、少し古い記憶が呼び起こされるものであり、


 「智龍様がどの程度お強いのかは分かりませんが、力をお持ちなのでしたら武力を示すのが1番でしょう」


 「ふむ。では?」


 「盗賊退治、のお時間にございます」

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