シナリオ12 給仕
「………………というのが、智龍様なのです」
「お、おぉ‼智龍様は素晴らしい方なんですね!」
「知ってはおりましたが、やはり智龍様は素晴らしい方ですね。そして、あなたもなかなかに語りがうまい。思わず私まで聞き入ってしまいましたよ。ホホホッ!」
終わったころには、護衛である爺まで聞き入っていた。
2人に十分智龍ちゃんお偉大さは理解させたし、これはかなり良いことだと思うぞ。智龍ちゃんの信者の卵のような存在が貴族の子息に現れたわけだからな。
将来はさぞ素晴らしい智龍ちゃん信者になってくれるはずだ。
なんて、語り終わって満足していると、
「フルール様。当主様がお呼びです」
「あっ。分かりました!」
兵士が1人やってきて、フルールに呼ばれていることを告げる。
「では、僕はここでいったん失礼しますね!ば、ばいばい」
少し恥ずかしそうに手を振るフルール。
それに俺を含めた村の子供たちが手を振り返し、フルールは笑みを深めて去っていった。1日で帰るとも思えないし、またすぐに会うことになるだろうな。
「さて、どうしようか。お貴族様が来てるなら、村の手伝いとかをした方が良いかもしれないけど」
「おっ。そうなのか?じゃあお前たち行くぞ!みんなを助けてご褒美をもらうぞぉぉぉ!!!!」
「「「「おおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」
手伝い、という単語にレオが激しく反応。すぐに取り巻きたちを連れて走っていってしまった。ご褒美目的な現金な奴である。
当然そうなると俺はそこにポツンと置き去りにされるわけで、
「……俺も、少し手伝うか」
いつも村で使っている爽やかな物から素のテンションの下がった声で独り言をつぶやく。
村で周りから好かれるように自分を演じているのだが、なかなか疲れるものがある。俺が初めてシナリオの報酬以外でスキルを手に入れたのも実は『演技』だったりするんだよな。
ただ、やはりこの村という小さなコミュニティの中で人から好かれるのは重要なのだ。この村で村八分が起きることはないが、助けてもらえる回数が少なくなればこの村の中でも生きていくことはできないんだ。
「田舎には田舎の問題がある、と」
俺は求めていたスローライフは少し違うななんて思いながら、足を進めた。
その後侯爵歓迎用の諸々の準備を手伝いサブシナリオを達成なんかしつつ、ついに歓迎本番が始まる。
「あっ。ヴェン。子供たちを見るのに協力してくれないか?」
「ああ。はい。分かりました」
俺は大人たちが侯爵やその配下の相手をしている間、子供たちが騒いだり邪魔をしたりしないようにする。
あんまり騒いで問題を起こしてもまずいから、大事な仕事だな。
俺たちも宴会自体には参加できるから、騒ぎそうな子供には落ち着けさせる要因の子供を近くに配置しつつ食べにくい料理を優先的に回して会話をさせたり立ち上がらせたりしないようにする。
お腹もすいているだろうし、食べ物に集中するはずだ。それが食べにくければ食べにくいほど集中してくれるだろう。もし万が一何かあったとしても周囲の子がしばらくは時間を稼いでくれる。
そうしてどうにか子供たちの管理をしていたのだが、
「おぉい!ヴェン!わりぃんだけど給仕やってくれねぇか!」
「給仕ですか!?………分かりました!すぐに行きます!!」
本当は子供たちの世話を続けたかったのだが、さすがに俺が呼ばれたのだから断らない方が良い。何かが発生しているのだと思う。
ということですぐに走っていき、
「はい。呼ばれてきましたけど、何をすればいいのでしょうか?」
「おう。この料理を……フルール様だったか?あの人に持っていってほしいんだ」
「ああ。なるほど。了解しました」
子供に給仕するのは同じ子供にやらせた方が相手も緊張しない。そういう判断だと思われる。
あまりそういった気遣いは不要だと個人的には思うのだが、村の善意だし止める必要もないだろう。ということで、
「こちら、前菜になります」
俺たち子ども組はもうかなり食べてるのにこっちは前菜すら食べてなかったのかよ!と思いつつフルールの前に皿を出す。
俺のような2歳児が他の村人たちと同様に、というかそれ以上に奇麗な作法で皿を出したため、「おぉ!」という驚きの声が周囲から聞こえる。侯爵も驚いているようだった、
ただ、
「あ、ありがとうございます」
フルールは少し困ったような表情を浮かべていた。笑顔も自然なものではなく、どこか固く無理矢理なようにも見える。
あまり俺に好印象を抱いていないのかもしれないな。あんなに智龍ちゃんの素晴らしさを分かち合った仲間だというのに。
とは思うものの。
「すみません。少し相談が」
「ん?なんだ?」
嫌われているのをこの場で改善をすることは難しい。ということで少し俺は給仕を終えて下がると村人と相談。
それにより、
《サブシナリオ『満足させてやんよ』が発生しました》
「あ、あああ、あのっ!ス、スススス、しゅーぷでございましゅっ‼」
緊張でガッチガチな声と共に差し出される、激しく波打っているスープ。緊張で体が震えているようだ。
顔を青くしながらも差し出す子は、俺ではない別の子だ。子供たちの中でもしっかりしている子に行ってもらった。
俺とは違って立場が上の相手に慣れていないため、見ていてかわいそうになってくるほどの緊張具合だ。
が、子供のそういったものはかわいらしく見えるものだからな。俺の時とは違い、周囲からの視線は暖かい。
「あ、ありがとうございます。そんなに緊張しなくても、大丈夫、ですよ?怖いことはしませんから」




