名前がつきました
桃子は不思議そうにするが、聖霊獣をダンジョンに連れて行く訳に行かない以上、部屋に置くかバッグに仕舞っておくしかない。
だから亜美奈はそうした。聖霊獣と言う名称は生き物のようだが、元々はヌイグルミだ。もちろん、精霊が宿っているから生き物と言えなくはないのだか、やっぱりヌイグルミには違いない。
その証拠に バッグに入ったし、聖霊獣もバッグに入ることに抵抗は無いようだった。
「あの子、バッグに入るの?」
「入ったよ。卵も入ったんだから、入ってもおかしく無くない?」
「嫌がったりしなかった?」
「しなかったと思うけどなあ。それより、名前はまだなのかって、そっちは気になってたみたい」
「名前、難しいわよね」
「どうしても、ペットっぽくなっちゃうんだよね」
見た目も関係しているのだろう。どちらの聖霊獣も、ヌイグルミっぽいと言うか、どことなくマンガっぽい。
亜美奈の聖霊獣は、ファンシーショップのキャラクターっぽいし、桃子の聖霊獣は、少しリアル寄りながらもアニメに出て来そうな雰囲気がある。
もちろん、どちらも可愛いのだが、聖霊獣などと言う、威厳の有りそうな名称を持つ生き物には見えない。その為、思い浮かぶ名前も、ミミだのメメだのになってしまう。
「ペットってなんです?」
「何って言われても……」
アンジェに聞かれて、亜美奈と桃子は揃って首を捻る。
「飼っている動物? 動物なんだけど、凄く大切で家族みたいな?」
「他人から見たら、単に飼ってる動物なんだけど、本人にとっては特別な生き物なのよね」
「精霊獣は、違うです?」
「「違わないっ」」
そう、違わない。動物かと言われたら、首をひねりたくなるが。やっぱり大切だし、自分にとっては家族の一人だ。
けれど人間では無いし、他人の聖霊獣は『うちの子』とは違う。
例えモチモチのヌイグルミに見えてしまっても、バッグに収納出来るとしても。
「なら、ペットッぽい名前でも良いです?」
「そうよね。 ……それなら私の子は、オレンジ色だから、ミカンにしようかしら」
「可愛いかも。そうしたら、私の子はピンク色だから、桃、は居るから…… 桜? うん、サクラ餅?」
ピンク色のモコモコした、桜道明寺の方の桜餅。一度そう考えてしまえば、もう、そうとしか思えなくなる。
「気持ちは分かるけど、流石に名前が餅は可哀想」
「そ、そうだよね。じゃあ、サクラで。出ておいで、サクラ」
猿のミニポーチを開き、声を掛けるとムニュムニュッと言う感じで、サクラが現れた。
『サクラってなんですの?』
「アナタの名前。ピンク色の可愛い花の名前何だけど、どうかな?」
『お花ですの? 可愛いのは好きですの』
「なら、今日からサクラね」
『はい、ですの』
桜の木は、島に植えるつもりでいるから、花が咲いたら見せてあげよう。お弁当を作って、シートを敷いてお花見をすると、きっと楽しいだろう。
「先に料理始めてて。私は部屋に行って、ミカン連れてくるから」
近くにドアが無かったからか、桃子はバッグに手を差し入れた。お手製のドアを、取り出そうというのだ。
『ワザワザ行かなくても、私が呼んで上げるですの』
「呼ぶって、どうやって?」
『桃子、ココに居るですの』
「ええ、居るけど?」
『聖女と聖霊獣は、何時も一緒なの』
それが呪文なのだろうか。桃子の隣に小さな穴が空き、オレンジ色の、猿のヌイグルミが飛び出して来た。
『到着だよ~っ!!』
クルンと空中で回転してから、体操選手の様に着地する。
『仲良しさん同士の聖霊獣は、どんなに遠くに居ても、お話が出来るですの』
一瞬、メッセージボードはいらないんじゃ、と思ったが、この子達を介して話すのは、とても疲れそうだ。やはり文字だけで有っても、直接話した方が良いと思い直す。
「私達、これから食事の支度をするんだけど、聖霊獣は、何を食べるの?」
ヌイグルミなのに、食事が必要なの?
などと聞いたら、また拗ねるだろうか?
けれどヌイグルミには違いないし、食べたとしたら、その食べた物は何処に行ってしまうのだろうか?
『食べなくても平気。でも、美味しいのは好きよ』
「そうなんだ?」
『そうなんよ』
『そうなんですの』
歯は有るのかな、とか、口の奥には異次元と繋がる通路でも、隠し持っていたりして、とか。色々考えてしまう、チョット考えすぎな亜美奈だった。
つづく




