まあ、こうなるよね
「それで亜美奈は、何をしてるの?」
ラフェル達と別れて城に戻ると、亜美奈は直ぐに工房へと向かった。三ツ葉に行く用が出来た為、ついでに納品する品物を用意するためだ。
そう言うと猿は、納得したように頷いた。亜美奈達持ち主の知識を共有してるというのは、どうやら本当らしい。生まれたてなのに、納品だの三ツ葉だのと言った言葉を、説明無しに理解出来たのがそう思えた理由だ。
「納品したら図書館に行って、名前の本を見ようと思ってるんだよね」
いきなり名前を付けようと思っても、直ぐに思い付くものじゃない。その証拠に桃子は帰って来てからずっと、食堂でノートを前に唸り続けている。
委員長をするだけあって、桃子は真面目な性格だから、良い名前を付けようと頑張っているのだろう。
もちろん亜美奈もそのつもりだが、思い付かない物は仕方ない。
「名前って、そんなに大事な物なの?」
「凄く大事だよ」
「聖霊獣でも判るでしょ?」
「分からないよ。 って言うか、聖霊獣って言うのは全体を差す名称であって、個人を指す言葉じゃ無いよね。今ここには、アナタ一人しかいないけど、食堂に行けば桃子がいて、桃子の聖霊獣もいるよ。みんな揃っている時、名前が無いと片方だけ呼ぶ事は出来ないでしょ?」
「それって、亜美奈は桃子の聖霊獣を呼ぶし、桃子は私を呼ぶ事が有るって事?」
聖霊獣の常識では、持ち主以外とは交流しないのかも知れない。けれど一緒に暮らして行く以上、みんなで仲良くしていきたいのだ。
「そうだよ。一緒に暮らす家族だからね」
「家族……? 家族なの」
どうやら聖霊獣は、亜美奈の知識の中から、家族という単語とそれに対する意味や感情を、探し当てたようだった。
ホンノリ嬉しそうな笑顔を浮かべ、何度も頷いている。
「どんな名前にするの?」
「呼びやすくて、可愛い名前かな」
『神の手』はこれからも増えるだろうから、被らないよう日本の名前はやめた方が良い。それでいて、ペットっぽく無いのが良い。
とすると、外国風の名前になる。アンジェの仲間と、被らないと良いがさすがにそこまで気にする事は無いか。
あれこれ考えていると、手が止まる。一先ず作る方に集中しよう。亜美奈は作業着やジャケット、何日も掛けて移動するグループの為の、テント等も作り上げた。
「分かってた。うん、こうなるって、分かってた」
準備が出来た亜美奈は、未だ名前を決めかねていた桃子を誘い、三ツ葉学園にやって来た。
商店街に行って納品していると、偶然にも真鈴と会えて。当然、心菜を呼ぶからお茶しようとなる。
その時、聖霊獣を見られていれば。
「凄い、可愛いっ」
「何この子、ぬいぐるみなのに喋ってる」
「名前は?」
「私も欲しいっ」
「私もっ。何か作るのに、必要な物って有るの?」
特別な物?」
「あ~、え~と、うん、その、ね……」
困っていると、人は増えて行く。欲しいと誰かが言い出せば、我も我もとそれも増える。気付けば『神の手』のほとんどに、囲まれていた。
もちろん亜美奈にも、その気持ちは良く分かる。ぬいぐるみは可愛い。ぬいぐるみと言うだけで、可愛いと思える。
もちろん人には好みというものが有るから、可愛いと言い切れないぬいぐるみも偶に有る。けれど大抵のぬいぐるみは可愛いし、更に、その可愛いぬいぐるみが喋るとなったら、それはもう、可愛いなんて言葉では言い表せる物じゃない。
けれど、気持ちが分かるのと作って上げられるのは別だ。
なにしろこのぬいぐるみは、人を選ぶ。簡単に上げると言ってしまった後で、ぬいぐるみに拒否されたから諦めて、とは言え無いのだ。
選ばれた人しか持つことは出来ない。また選ぶのは亜美奈では無く人形自身であり、その決定は絶対なのだ。そう説明するが、みな諦められない様で無言で亜美奈を見つめて来る。
「作るのは六個なの」
そんなに見られても、と亜美奈が困っていると、猿が突然言い出した。
「この中で、聖霊獣との縁が有るのは六人なの。だから、作るのは六個なの」
「たったの六人?」
「縁だから、仕方が無いの」
「私もそれで、泣いたです」
縁だから仕方ない。簡単に納得出来る物じゃないが、諦めてしまうことも出来ないのだ。未だに諦めの付かないアンジェの言葉は、とても物悲しく胸に迫る。
自分は既に持っている為、何と言って良いか判らなくて目を伏せる。
と、一つの案を重い付いた。名案とまでは言えないが、悪手では無いだろう。
「ぬいぐるみに選ばれなかった人には、変身出来る杖を上げる」
あれは別に、亜美奈で無いと作れない分けじゃ無いから、レシピでも良いが、アンジェの杖に付与したようなドレスを付けて上げたら、きっと喜んでくれるだろう。
実は、魔法少女アニメのような衣装を付与した杖も、密かに作って有るのだが、余りに趣味に走り過ぎたデザインなので、誰にも見せた事は無い。
「面白そうだから~、それで~良いよ~」
心菜が言ってくれたおかげで、何となくだが纏まった。
「じゃあ、五日後に、みんなの家のサーキット前に集合ね」
つづく




