↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/100

まあ、こうなるよね

「それで亜美奈は、何をしてるの?」


 ラフェル達と別れて城に戻ると、亜美奈は直ぐに工房へと向かった。三ツ葉に行く用が出来た為、ついでに納品する品物を用意するためだ。

 そう言うと猿は、納得したように頷いた。亜美奈達持ち主の知識を共有してるというのは、どうやら本当らしい。生まれたてなのに、納品だの三ツ葉だのと言った言葉を、説明無しに理解出来たのがそう思えた理由だ。


「納品したら図書館に行って、名前の本を見ようと思ってるんだよね」


 いきなり名前を付けようと思っても、直ぐに思い付くものじゃない。その証拠に桃子は帰って来てからずっと、食堂でノートを前に唸り続けている。

 委員長をするだけあって、桃子は真面目な性格だから、良い名前を付けようと頑張っているのだろう。

 もちろん亜美奈もそのつもりだが、思い付かない物は仕方ない。


「名前って、そんなに大事な物なの?」

「凄く大事だよ」

「聖霊獣でも判るでしょ?」

「分からないよ。 って言うか、聖霊獣って言うのは全体を差す名称であって、個人を指す言葉じゃ無いよね。今ここには、アナタ一人しかいないけど、食堂に行けば桃子がいて、桃子の聖霊獣もいるよ。みんな揃っている時、名前が無いと片方だけ呼ぶ事は出来ないでしょ?」

「それって、亜美奈は桃子の聖霊獣を呼ぶし、桃子は私を呼ぶ事が有るって事?」


 聖霊獣の常識では、持ち主以外とは交流しないのかも知れない。けれど一緒に暮らして行く以上、みんなで仲良くしていきたいのだ。


「そうだよ。一緒に暮らす家族だからね」

「家族……? 家族なの」


 どうやら聖霊獣は、亜美奈の知識の中から、家族という単語とそれに対する意味や感情を、探し当てたようだった。

 ホンノリ嬉しそうな笑顔を浮かべ、何度も頷いている。


「どんな名前にするの?」

「呼びやすくて、可愛い名前かな」


 『神の手』はこれからも増えるだろうから、被らないよう日本の名前はやめた方が良い。それでいて、ペットっぽく無いのが良い。

 とすると、外国風の名前になる。アンジェの仲間と、被らないと良いがさすがにそこまで気にする事は無いか。

 あれこれ考えていると、手が止まる。一先ず作る方に集中しよう。亜美奈は作業着やジャケット、何日も掛けて移動するグループの為の、テント等も作り上げた。







「分かってた。うん、こうなるって、分かってた」


 準備が出来た亜美奈は、未だ名前を決めかねていた桃子を誘い、三ツ葉学園にやって来た。

 商店街に行って納品していると、偶然にも真鈴と会えて。当然、心菜を呼ぶからお茶しようとなる。

 その時、聖霊獣を見られていれば。


「凄い、可愛いっ」

「何この子、ぬいぐるみなのに喋ってる」

「名前は?」

「私も欲しいっ」

「私もっ。何か作るのに、必要な物って有るの?」

特別な物?」

「あ~、え~と、うん、その、ね……」


 困っていると、人は増えて行く。欲しいと誰かが言い出せば、我も我もとそれも増える。気付けば『神の手』のほとんどに、囲まれていた。

 もちろん亜美奈にも、その気持ちは良く分かる。ぬいぐるみは可愛い。ぬいぐるみと言うだけで、可愛いと思える。

 もちろん人には好みというものが有るから、可愛いと言い切れないぬいぐるみも偶に有る。けれど大抵のぬいぐるみは可愛いし、更に、その可愛いぬいぐるみが喋るとなったら、それはもう、可愛いなんて言葉では言い表せる物じゃない。

 けれど、気持ちが分かるのと作って上げられるのは別だ。

 なにしろこのぬいぐるみは、人を選ぶ。簡単に上げると言ってしまった後で、ぬいぐるみに拒否されたから諦めて、とは言え無いのだ。

 選ばれた人しか持つことは出来ない。また選ぶのは亜美奈では無く人形自身であり、その決定は絶対なのだ。そう説明するが、みな諦められない様で無言で亜美奈を見つめて来る。


「作るのは六個なの」


 そんなに見られても、と亜美奈が困っていると、猿が突然言い出した。


「この中で、聖霊獣との縁が有るのは六人なの。だから、作るのは六個なの」

「たったの六人?」

「縁だから、仕方が無いの」

「私もそれで、泣いたです」


 縁だから仕方ない。簡単に納得出来る物じゃないが、諦めてしまうことも出来ないのだ。未だに諦めの付かないアンジェの言葉は、とても物悲しく胸に迫る。

 自分は既に持っている為、何と言って良いか判らなくて目を伏せる。

 と、一つの案を重い付いた。名案とまでは言えないが、悪手では無いだろう。


「ぬいぐるみに選ばれなかった人には、変身出来る杖を上げる」


 あれは別に、亜美奈で無いと作れない分けじゃ無いから、レシピでも良いが、アンジェの杖に付与したようなドレスを付けて上げたら、きっと喜んでくれるだろう。

 実は、魔法少女アニメのような衣装を付与した杖も、密かに作って有るのだが、余りに趣味に走り過ぎたデザインなので、誰にも見せた事は無い。


「面白そうだから~、それで~良いよ~」


 心菜が言ってくれたおかげで、何となくだが纏まった。


「じゃあ、五日後に、みんなの家のサーキット前に集合ね」







                 つづく     

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。